「第8話」加速する風評被害
「さて、後輩君?どうする?」
「どうするとは?」
「あの話を晴花さんにしても大丈夫か、よ。」
「あー…どうなんでしょう?普通ならそんな話しても信じないと思うんですけど。」
「え!?二人してなんの話してるんですか!」
「あなたにとても大事な話をしても大丈夫かどうかよ。」
「私結構口は堅いほうですよ?」
「いや、はるはるこれはそんな話じゃないんだ。これは「後輩くんの性癖の話よ」部長何言ってくれてやがりますか!?」
「だから後輩君は年下好きだから晴花さんも気を付けたほうがいいわよってことよ。」
「大体あってるけどそういう話じゃないでしょう!?」
「先輩…ちょっと近くに来ないでくださいね?」
「はるはるも露骨に距離とるんじゃないよ!」
「さて、後輩君少しうるさいわよ。本題に入りましょう。」
「誰のせいですか…。」
「先輩…早く本題に入ってください。」
「はるはる、お前もか…。わかりました。はるはるちょっとこれ読んでみて?」
「ええ、と…?なんですかこれは、先輩の妄想小説かなにかですか?」
「妄想がついてなければ完璧だったよ!?頑張って書いたんだよ、これでも……。」
「あら、後輩くんいつの間に取ってきたのかしら?確か忘れてきたって言ってなかったかしら?」
「え、あー教室に忘れていることはわかってたので玄関で聞いて回った後で教室に寄って取って来たんですよ。」
「ふーん?まあいいわ。晴花さんどうかしら?」
「めっちゃつまんないですねこれ!!なんて言うか流行りに乗っかろうとしてガワだけ真似てるクソ小説みたいです!あ、でも小鳥遊くんと御園さん2人でどっか行っちゃうっていうのはさすがに無理がありませんか?」
「え?」
「晴花さん、今なんて言ったかしら?」
「え、クソ小説って言っちゃダメだったんですか!?逆鱗ですか!?」
「それは当然の感想だから構わないわ。その後よ。」
「え、2人で遠くに行っちゃうのは無理があるなって。」
「おかしいわね…そんな文章なかったはずだけど。後輩くん、何か心当たりはある?」
「もしかしたら…勝手に次の日の行動が書き足されていってるんですかね…。だとしたら大変ですよ!もしこの文で世界が終わるなんて書かれたらその通りになってしまうかもしれません!」
「後輩君が書き足したわけじゃないのかしら?」
「違いますよ!いくら別れて行動していたとはいえ文章を書く余裕なんてなかったはですって。」
「え?つまりどういうことですか先輩?」
「はるはるの読んだ文章の後半は部長は読んでない。つまり、文章が勝手に書き加え得られているってこと。」
「え!?勝手に先輩の妄想が書き足されていってるんですか!?」
「違うよ!?なんで僕の妄想ってことになってるんだい!?」
「後輩くん、うるさいわよ。今はどうするかを考えるべきじゃないかしら?」
「え、僕が悪いんですか?」
「先輩……。」
「はるはるが原因だからね!?さも勝手に叫んでるみたいなら雰囲気にしないでくれるかな!?」
「さて、とりあえずその原稿破って燃やしてみる?」
「いきなり話が暴力的ですよ部長。それにこれでも頑張って書いたものですからそんな乱暴に扱わないでくださいよ。」
「それにしても晴花さん。あなたやけに素直に受け入れるわね?このままだと後輩君の妄想で動かされるかもしれないのに。」
「・・・・先輩最低です。」
「なんで僕なんだよ!しかも妄想じゃないって言ってるじゃないか!?部長もこれ以上はるはるを使って僕で遊ぶのやめませんか!?」
「まあこんなとこにしておきましょ。さて、現状わかっていることは後輩君のくs・・・妄想小説が勝手に書き加えられていくこと。そしておおむね後輩君の妄想小説の通りに現実が進んでいること。また、一年生以外は妄想小説に登場していないことくらいかしら?」
「そうですね・・・、勝手に書き加えられていくお陰で明日の世界が存在することは保証されました。あとはどれだけ現実が小説通りに進んでいるかですかね?僕らもいつ小説に登場させられるかわからないので行動は早い方がいいかもしれませんね。」
「先輩のくs・・・妄想小説ってオチは考えてあるんですか?」
「二人してクソと言いかけてから妄想なんて言いなおさなくていいんだからね!?あと、オチは一応考えてはあったよ。」
「へえ?後輩君にしては珍しいわね。どういうオチなのかしら?」
「最後はこのままだと悪霊になってしまうヒロインのお姉さんを何とかしようと、主人公とヒロインで成仏させようとするんですけどなかなか上手くいかなくていろんな場所を巡るんです。そのうち、主人公と仲良くなったヒロインをみてお姉さんが成仏するみたいな感じです。」
「息継ぎせずにここまでの長文を話すなんて先輩…きもいですね。」
「セクハラかしら?」
「可及的速やかに僕の味方をください!!」
「私たちのことを敵だなんてひどいわね。それはそれとしてオチはありふれてはいるけれど悪くないわね。」
「そうですか?このオチだとキャラクターの個性が薄くなってませんか?私だったらバッドエンド気味になってもいいと思うんですけど。」
「晴花さんの言うことはもっともなのだけれど最初から薄いのだからどうしようもないわ。」
「酷評…でも部長が褒めてくれるのは素直に嬉しいです。」
「飴と鞭くらい心得ているもの。さて、オチが主人公とヒロインで完結しているようだし私たちが何か行動を起こさなくても勝手に終わるんじゃないかしら。」
「実はですね…オチはあるんですけど、途中いろいろハプニングが起こる予定なんです。でもその内容まで考えていなかったので僕でもどんなことが起こるのか分かんないんです。」
「先輩から妄想力取ったら何が残るんですか?」
「何も残らず風になって私たちをどうこうするつもりね。」
「変な風評被害!!妄想力禁止ワードにしますよ!!」
「さて、もうそろそろ下校時刻になるわけだし続きは明日にしましょうかね。」
「え、あと下校時刻まで一時間くらいありますよね?」
「晴花さん。我が部は個人個人の活動のことも考えてこの時間に帰るのよ。家での作業の方が効率がいいって人もいるからね。」
「はーなるほどです。」
「だまされたらダメだよはるはる。今の部長が即興で考えた言い訳だから。部長は今この時間に帰ろうと思ってこの建前を作ったんだから。」
「嘘は言ってないわよ。大事なところが偶然抜けていただけだから。」
「ほんとにこの部活大丈夫か不安になってきました…。」
「不安とは未知ゆえに感じるものよ。この部活のことを知っていけばそのうち慣れるわ。じゃあ、また明日。」
「はい。また明日です部長。はるはるも明日の放課後また来てね。」
「バックレたいです先輩。」
「そしたら多分部長が直々に引っ張りに来ると思うよ…僕もそうだったし。」
「うっ、頑張って明日も来ます…。さようならです先輩。」
「うん、また明日。」
幽霊の方程式 歩致 @azidaka-ha
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