「第7話」「カカオはフルーツよ。meijiがそう言っていたもの。」

「へーこんなとこに本当に自販機あったんですね〜。って、ボタン1つだけ!?しかも値段が50円!?怪しすぎるにも程がありますよ先輩!!!」


「本当ね……しかもどんな商品なのかすらないじゃない。ただボタンとお金の投入口があるだけって以外は普通の一般的な自販機ね。」


「先輩先輩、この自販機千円札まで入れられるみたいですけどお釣り出てくるのか不安になりませんか?」


「そう、ね………仮にこの自販機を普段から使う人がいたとして、お釣り用の小銭がしっかりあったとしても出てくるのはほとんど10円になりそうね。それはそれで気になって来たわ。どう?晴花さん。」


「ちょと期待の眼差しで見るのやめてくださいよ!やりませんからね!それに先輩奢ってくれるんじゃなかったんですか!?」


「そうだったわね、思わず好奇心が暴走してしまったわ。それじゃあ試しに100円入れてみましょうか。」


「おぉーちゃんと出てきましたね!しかもお釣りは全部10円じゃないですか!期待通りです!」


「私も1つ買おうかしら。どう?パッケージに何が入ってるか書いてあるかしら?」


「えーと?内容量450ml、原材料名牛乳、ドラゴンフルーツ、カカオ、ライチ、ドリアン、スターフルーツ、ブドウ糖、着色料、保存料って書いてありますよ。表には今日のフルーツオレは元気を出したい時に飲もう!って書いてありますね…。」

「噂と違って中身もちゃんと書いてあったわね。」


「でも待ってくださいよ。カカオってフルーツなんですか!?カカオがフルーツオレに入ってるなんてことあります!?しかもなんかゲテモノばかり入れられてる気がするんですけど!?」


「何言ってるのよ。カカオはれっきとしたフルーツよ。meijiがそう言っているのを見たことあるわよ。」


「本当だ、調べたら出てきました…。知らなかったですてっきり豆とかに分類されるのかと思ってました。」


「確かにその辺の区分って難しいわよね。では思い切って飲んでみましょうか。」


「わ、分かりました。じゃあいっせーのーでで飲みましょう!いっせーのーで、ですよ!!」


「わかったわ。じゃあ、」


『いっせーのーで!』


「…………先輩一緒に飲もうって言いましたよね!?何キャップ閉めてるんですか!?」


「そういうあなただって飲んでないじゃない。まさか先輩をだまそうとするなんて…。」


「だってこれ飲もうと思っても飲めるものじゃないですし、先輩が素直にうなづいたから絶対一緒に飲まないと思ったんです!」


「あれ?部長、と一緒にいるのは三谷晴花さんであってますかね?どうしたんですかこんなところで。」


「こんにちはです!先輩。私のことは、はるはるとお呼びください!」


「…あら、後輩くんじゃない。このフルーツオレいらないかしら?間違って買ってしまったのよ。」


「あ、先輩私のもいりませんか?」


「え、なんです?二人して買い間違えたんですか?まあ、ありがたくもらいますけど。」


「そうだ、晴花さん。あなたも小説部に入ったのだから私のことは部長と呼びなさい。」


「は、はあ部長ですね。了解しました!」


「それで?部長とはるはるはどうしてこんなところにいるんです?」


「小鳥遊君を探しに教室を見に行ったら本人はいなかったけど晴花さんに会ったからよ。後輩くんは?」


「それがですね、なぜか一年生が誰かに告白したということはみんな知ってるんですけどだれがいつどこでっていう情報が一つもなかったんです結構いろんな人に聞いたんですけどね。」


「そう…ところでその、謎のフルーツオレはおいしいのかしら?」


「え?結構おいしいんですよこれ。僕毎日これ飲んでるんですけど、味が日替わりで飽きが来ないうえに安いんでおすすめですよ。」


「部長…もしかしてこのフルーツオレやばい薬でも入っているんじゃないですか?明らかにおいしくならなそうな中身ですよ?」


「いいえ、晴花さんこれは後輩くんの味覚が壊れてる可能性のほうが高いわ。」


「いやいや…言いすぎですよ。中身は今まで見たことなかったですけど味は問題なかったんですka…………まっず!!何だこれ!!?」


「よかったじゃない。あなたの味覚は少なくとも壊れてはいないことが証明されたわよ?」


「先輩よかったですね、変な薬が入ってるわけじゃなくて。でも二本目まで飲み切ってくださいね?」


「なんだろう?すっごくまずいしえぐみというか渋みというかが半端ないんだけどなぜかもう一口飲みたくなる……。」


「後輩くんもう手遅れなのね…。」


「先輩やっぱり変な薬が入って…。」


「違いますから!そんなに言うんなら2人とも飲んでみればいいんですよ!まだもう一本ありますから。ほら、どうぞ。」


「ふむ、飲んでも死ぬわけじゃなさそうね。ここは飲んでみるのも一興ね。晴花さん、回し飲みしても大丈夫かしら?」


「え、せんぱ、じゃなかった部長本気で飲むんですか?私はちょっとぶれいぶはーとが足りないので遠慮しておきます……。」


「そう。じゃあ一口。……?………!?………?不味いわね。独特の苦味と酸味が悪い意味で相乗効果を発揮しつつ鼻からエグ味と渋味が抜けていき最後に口の中に臭い匂いが残留するわ。でも確かに後輩くんの言いたいこともわかるわね。この不味さの奥に言語化できない旨み…とも違うわね体の奥から活力が湧くような感覚があるわ。」


「そんなにですか…なら私も飲んでみようかな。部長のやつ一口貰ってもいいですか?」


「ええ、どうぞ。気に入ったならそのまま飲んでもらっても構わないわよ。」


「ありがとうございます。では一口…………!!

!!。」


「あ、はるはるがフリーズした。部長珍しく長台詞でしたけどよくあの不味さに耐えられましたね。」


「別に嘘は言ってないわよ?良薬口に苦しって言うじゃない。だから感じたことををいい感じに言い換えて伝えたまでのことよ。さて、茶番も終わったことだし情報共有でもしましょうか後輩くん?」


「そうですね。といっても大した情報もないですけど、1度部室に行く感じですかね?あとはるはる大丈夫そ?」


「廊下で立ち話するのも疲れたわ。さっさと部室に行きましょう。晴花さんそんな顔を宇宙猫みたいにしてないで行くわよ。」


「……先輩、部長。亀は手足の代わりにオールをつけると100%ボートになるんですよ?50%は亀じゃないんです。…………はっ!私はなにを!?確か何かを飲んで………あっ!2人して騙しましたね!!これただただ不味いじゃないですか!?二度と飲みたくないですよ!それになんか人として踏み込んでは行けない領域に入りかけた気がします!!」


「何事も経験が大事よ。」

「何事も経験だね!」


「………私、不安でいっぱいになってきました。てか、よく耐えられましたね!?表情にも現れないとかどんだけなんですか!」


「私はほんの少ししか飲んでないもの。」


「僕は…普通に飲んだし普通に美味しさも感じましたね。」


「「……え?」」


「え?」


「………晴花さん部室へ戻りましょう。」

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