「第6話」幻のフルーツオレ。中身はドラゴンフルーツ、カカオ、ライチ、ドリアン、スターフルーツ。

「さて、ここが我が小説部よ。どうかしら?」


「おわー、すごい沢山資料が置いてあるんですねー!これ全部小説部のものですか!?あと狭いです!」


「それは確か卒業生の色んなデータだったはずよ。小説部はその棚の1番右下よ。あと、狭いは余計よ。」


「うーんと、あ、え?このA4用紙1枚だけなんですか?」


「本当は後輩くんの駄作を含めればA4用紙1枚と原稿用紙3枚くらいね。」


「……ちなみに先輩の作品はないんですか?」


「ないわ。私が書いてしまうと読者が皆1行目から涙が溢れかえるせいで、干からびるかそれ以上読めなくなるかの2択を迫られてしまうの。そんな悲しいこと私にはできないわッ…。」


「無表情でそこまで自信満々なセリフを述べないで下さいよ。普通に怖いです…。」


「私は本当のことしか言わないのよ。そうする限り相手が嘘をつくとすぐわかるから。」


「またまた冗談を……そうだ!入部届けください!書かないと社会的に殺されそうなので…。」


「いい心構えだわ。はいこれ、ここに名前と部活名を書いてちょうだい。小説部は火曜と木曜の週2日の活動よ。だいたい活動日に書いたものを完成してなくてもいいから持ち寄って各自の感想を伝えるの。なにか質問あるかしら?」


「はい!まず一気に言われたせいで最初の方しか頭に入んなかったです!とりあえず名前と部活名は書きました!」


「…………とりあえず入部届けは書いたようだから許すことにするわ。あと、同じ説明はしたくないから後輩くんが帰ってくるまでお茶してましょうか。」


「はい!ありがとうございます!あれ、でもこんな資料室みたいな部屋で飲食とか大丈夫なんですか?」


「まぁ、確かにこの部屋は飲食禁止ということになっているわ。でもね、ここに飲食○って書いてあるポスターがあるわ。つまりこれがある限りはいいのよ。」


「それ見るからに自作のポスターですよね!?本当に大丈夫なんですか!?不安になってきたんですけど!!」


「あのね、晴花さん…バレなきゃ犯罪じゃないのよ。」


「何名言っぽく言ってるんですか!言ってること完全にダメな人の言葉じゃないですか!」


「まあまあそんなことより飲み物買ってくるけど?」


「適当に流された!ていうかもしかして奢ってくれるんですか!」


「もちろんよ。私は後輩には優しいのよ。それで何がいいかしら?おしるこ?コンポタ?それともグラタンがいいかしらね?」


「なんでそんなゲテモノ系しか選択肢にないんんですか!?ていうかグラタンなんてあるんですか!?ちょっと気になっちゃうじゃないですか!?」


「まあ、私の中ではグラタンはクリームスープなんだけどね。」


「さすがに無理やりすぎませんか……?」


「言ったでしょう?私は嘘はつかないって。」


「そんな無理やりなこと言ってドヤ顔しないでくださいよ!!」


「それで?何がいいかしら?」


「え、まさかの選択肢あれだけなんですか?もう結構暖かくなって来てるのにわざわざ冬真っ盛りに飲むようなあったかーいの飲み物飲まなくちゃいけないんですか!?」


「人に自分の価値観を押し付けてはいけないわ。たとえ今が暑くても寒くても飲みたい人はいるのよ。」


「そうですね!!ごもっともです!それでは先輩に買いに行かせるのは申し訳無いので私が買いに行きますよ。」


「そ、じゃあ一緒に行きましょうか。生徒玄関の隣の自販機もいいのだけど、4階の特別教室棟の一番奥にも一台あるのよ。あそこの商品面白いからオススメよ。」


「そんなとこに自販機あるんですか?ていうか業者の人は大変じゃないんですか?」


「実はいつどこの業者が入れ替えに来ているのか誰も知らないのよ。流石に校長くらいなら知ってるとは思うけど、前に教師に聞いてみたら何も知らないようだったわ。」


「そんな謎自販機なにが売られているんですか?」


「フルーツオレよ。ただし、中身は不明のね。」


「不明って?普通パッケージにある程度書いてあったり裏の製品表示に書いてあるものじゃないんですか?」


「それがね…製品表示には各種フルーツとだけ書いてあってパッケージには空のミキサーが書いてあるとかいうふざけた商品らしいのよ。」


「らしい?飲んだことないんですか先輩?」


「そんな怪しいもの飲めると思う?」


「つ、突っ込んだ方がいいんですか…?」


「なぜ?別にボケてないわよ?」


「いやだって先輩めちゃくちゃ自然に私のこと実験台にしようとしましたよね!?」


「そ、そんなことないわ…………よ?」


「あ、明らかに動揺してる!?さっきまであんな平然と軽口を叩いていたのに!?」


「はあ…さっさと行くわよ。」


「なんか落胆された!?理不尽!!」


「あなたのそういうノリのいいところ私は好きよ。」


「え、急に優しくしてくるじゃないですか……怖いです。」


「ふふふ…人って目隠しされた状態でつねったりして強い痛みを与えられた後に水をスポイトなんかで痛みを与えた位置から少しずつ流していくと脳が勝手に血が流れていると錯覚してショック死するそうよ。そうすると外傷が全くない死体の出来上がり!試したみないかしら?」


「いきなり能面みたいに無表情になったと思ったら笑顔で死体とか言ってきましたよこの先輩!!飴と鞭の鞭が強すぎませんか!?」


「冗談よ。でもその代わりあなたにはフルーツオレを飲んでもらうわ。」


「やっぱ罰ゲームみたいな扱いなんですねそのフルーツオレ………。」


「SAN値チェック入らないといいわね。」


「え゛…あ、ちょっと待ってくださいよ!置いていかないでくださいー!」

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