第12話 想定外

アート展は大盛況だった。

クラウドの絵は文字通り、飛ぶように売れ、一瞬で完売した。


それも当然である。

あれだけ華々しく、宴を開けば、次の日の各紙、各局は「女王」の顔で埋め尽くされ、さらにネットを通せば、「女王」の顔見たさに、各国のマスコミが押し寄せる。


そこにさらなるニュースが舞い込んで来た。


日本・アメリカ・ドイツの美術館がクラウドの絵を一枚ずつ購入し、作品を所蔵することとなった。それはつまり、未来永劫、のちの世までクラウドが生き続けるという意味である。


そうなれば、クラウドの人気は止まらない。


三カ月経った今でも、クラウドについての話題が紙面・画面を埋め尽くし、人気に拍車がかかり、マスコミが騒げば大衆も騒ぎ、大衆が騒げばマスコミも騒ぐ。

もはや、ニワトリが先か、卵が先かのような永遠に答えの出ない問題に発展し始め、ただでさえ話題性があったクラウドの渦が、ここへ来て、さらなる大きな渦となり、台風の目となって、全国各地、世界中で猛威を奮う。


渦の早さが過熱する。


人気を博したアート展は、急遽、開催を延長することとなり、銀座にクラウドの作品を一目見ようと長蛇の列ができる。

老若男女、老いも若きも男も女も、子供さえも作品を見ようと列を作り、ジッと待つ。ジッと待って見るのはいいが、果たして、どれだけの人がクラウドの才能に感嘆するのだろうか?決して万人受けする絵ではないし、心地の良い色使いではない。なのに、それでも人はやって来る。クラウドの絵、見たさにやって来る。

そして、そこに誕生するのは銀座の街には相応しくない、異様な光景。長蛇の列。

その光景は連日続く。連日続けば、入場者数は跳ね上がる。跳ね上がれば、またマスコミも騒ぎ出す。騒ぎ出せば、また大衆も騒ぎ出す。

この渦が収まる気配はなく、ますます大きくなる。


渦の早さが加速する。


いよいよ、クラウドの作品が全国を飛び回る。


銀座を離れ、展示用のビルがある軽井沢・神戸へと移動し、それから北の大地 札幌・函館。そのまま南下し、仙台・福島・秋田。グルりと関東一円を周り、愛知・大阪・京都へと進み、広島・山口・岡山。そして、最後は関門海峡を渡り、福岡・大分・鹿児島へと到着。

日本列島にクラウドの作品が、白いワイシャツに零したインクのようにジワジワと染み込んでいく。

連日連夜、報道すれば、クラウドの絵も見慣れて来る。もう一度、見たいと再び列に並ぶ者も出て来た。

どうやら、クラウドの絵に魅了されたのは「女王」だけではないらしい。

クラウドの持つ独特の中毒性が致死量には至らない程度の麻痺として、感性の奥を刺激する。


中毒患者が多数現れ、クラウドの渦に身を投げる。

身を投げる者が多くなればなるほど、その生き血を吸って、渦は巨大化し、さらに過熱し、加速する。


もう止めることの出来ない渦の中心で「女王」だけが、ほくそ笑む。


連日連夜、報道が続いていたのはクラウドだけではない。「女王」も然り。何せ、クラウドと言う画家は正体不明で、一切のことがわからない。わからなければ聞くしかない。この世で唯一、クラウドを知っている「女王」に。

そのため、毎日のように皆、“この世の中心”に列をなし、順番を待つ。


「女王」詣でが始まる。


株価も上がり、会社の知名度は急上昇。利益も過去最高を生み出し、「女王」の上に金の雨が降る。

クラウドの素晴らしい宣伝効果は、権力ちからだけではなく、腐るほど金を持つ者に有り余るほどの富をもたらしてくれた。


「女王」の描いた通り。


「女王」が思い描いた時点で成功は決まっていた。こうなることはわかっていた。

「女王」は現実になることしか描かない。現実にならないことは描かない。描いたところで意味がない。時間の無駄である。


今日も「女王」はフラッシュの中にいる。


取材はすべて受ける。

受けるために思い描いたのだ。


「女王」は機嫌がいい。


毎日、朝から晩までフラッシュのシャワーを浴び、ビクビクしながら畏まり、怯える記者たちのを見ていると、悪趣味な悦が脳内を走り回り、耽美な感覚に酔いしれる。


「女王」はとても機嫌がいい。


しかし、スケジュールを管理する遠藤たちはたまったものじゃない。

引っ切り無しにかかって来るオファーの電話を受けながら通常の業務もこなして行く。「女王」は躰一つあれば問題ないだろうが、遠藤はいくら体があっても足りない。ギリギリの綱渡り。目まぐるしい怒涛の日々を支障なく回しているのは、二十年付き添った遠藤からできること。


今日も遠藤は機嫌が悪い。


新しい頭痛の種ができたからだ。


機嫌のいい「女王」に男性記者が尋ねる。


「近頃、世間では、クラウドという人物はこの世に存在しておらず、五十嵐社長が作り上げた架空の人物ではないのか?という噂が出ていますが。」


「写楽みたいに?」


「女王」はシャッターの音を浴びながら気持ちよさそうに聞き返す。


「えぇ。社長が世間をあっと言わせるために仕組んだのではないか。と専らの噂です。」


話しに乗って来た「女王」を見て、記者は最近、聞かれる噂話をエサに「女王」を釣ろうと試みる。


、その噂が本当だとしたら…。あなたはどう思うのかしら?」


絹のように黒くて長い綺麗な髪をかき上げ、「女王」は憂いので男性記者を見つめる。


喰い付いた感触を記者は感じた。


「それは驚きですよ!まさか、この世に存在しない画家に世界が振り回されているなんて!これは美術界はじまって以来の出来事です!大スクープです!」


エサを撒くために、ことさら大袈裟に言っているのか。それとも「女王」のなまめかしいにやられてしまったのか。記者は興奮気味に前のめりになり話す。


男性記者は気付いてないが、釣られているのは記者の方だ。


「女王」の前にポンとエサを撒き、喰い付くのを待っていたが、いつの間にか、その撒いたエサに記者自身が喰い付き釣られてしまう。

記者は気付いていなくても、傍から見ている遠藤にはハッキリとわかる。

これで何匹目だろうか。

毎回、飽きることなく同じ質問をしては記者が釣られ、そして、釣られたことに気付かない記者たち。デジャヴだ。学習能力がないのかと思うほどデジャヴだ。


「そうだとしたら、とてもオモシロイことね。いつか、真相を明らかにして、本でも書こうかしら。その時は、あなたの出版社にお願いしようかしら。」


「はい!是非!」


記者は勘違いしている。


グイグイ引っ張ているように感じているが、グイグイ引っ張られているだけだ。

「女王」の方に引っ張られている。「女王」に弄ばれている。


「やっぱり、そうなんですか?」


真実に辿り着こうと記者が一気に「女王」に詰め寄る。


「そうだったらオモシロわね。」


「女王」は屈託のない笑顔で、引っ張られて来た記者を突き放す。


それを後ろで聞いていた遠藤が項垂れる。


「女王」は、これを聞かれる度、繰り返す。毎度、毎度、繰り返す。

釣られるフリをしては釣り。釣っては放すを繰り返す。

「女王」は戯れのつもりで言っているのかもしれないが、記者たちはそうじゃない。自分たちが釣られていることに気が付いてないのだから、「女王」から意味深な発言を引き出せたと喜ぶ。

「女王」にとっては、この単なる噂もいい宣伝材料でしかなく、最大限利用しているだけ。

しかし、釣られたことに気付いない魚たちは放流されると根拠のない噂話に尾ひれ背びれが生え、紙面やテレビの中を悠々と泳ぎ出す。

その尾ひれ背びれを見て、自分も釣ってみたいと、一度、取材を終えた記者たちが、再び取材をさせてくれとオファーして来る。


「女王」詣でが続く。


これではキリがない。キリがないが「女王」のご命令、拒否はできない。できないので、仕方なく取材のオファーを受諾する。すると、やっぱり、記者たちは気づかれないまま釣られ、尾ひれ背びれを付けて噂話の中を泳ぎ回る。


「女王」は楽しそうにエサを撒く。

エサを撒けば魚たちが大量に押し寄せる。大量に押し寄せてはエサを食べ、尾ひれはひれがグングン育ち、あっという間に大魚と成長し、その成長を見て、「女王」は大変、喜び、機嫌がいい。


しかし、その噂話の池で遠藤だけが溺れ、必死にもがいている。


遠藤が溺れそうになるほどの頭痛の種。

種を蒔いた人物は、もう誰だかわかっている。


あの“女”。  “志田いずみ”だ。


五日前、またsuper womanのサイトから発生する。


“クラウドは実在しない?” 

“すべては五十嵐美樹の策略か?”


刺激的な見出しが、ネットの画面で躍っていた。


取材拒否をしていることへの意趣返しか?

確かにクラウドの正体は誰にも掴めていない。謎のままだ。そのミステリアスなキャラクターに色々、噂話が付いてしまうのも、ある意味仕方のないところではあるが、これは明らかな誤報。嘘である。

そのことを「女王」がちゃんと否定し、訂正すれば済む話なのだが、「女王」がするわけもなく、遠藤が何度言っても聞くわけもなく、志田が点けた種火に記者が燃料を投下し、最後に「女王」がその火に油を注ぐ。

鎮火するどころか噂話はさらに過熱し、炎上する。そして、その火は日に日に大きくなり、今では立派な大火事だ。


“どうすればいいのか?”


遠藤は火だるまになりながら思案中。もがいている。


その横にスッと田中が近づき「気にしない方がいいんじゃないですか?」溺れて、もがいている遠藤に田中がそっと救いの手を出す。


「根も葉もない噂は、そのうち消えますよ。そこまで、あの記者を気にすることはないと思いますけど。」


その顔は遠藤よりも困っている顔だった。

田中には取り越し苦労のように思えた。ただの噂話にそこまで気を使うことがわからなかった。実際、この忙しさは遠藤でなければ仕切れない。その遠藤が一人の記者に気を取られ、仕事や体調に支障をきたすことの方が心配だった。


「そうなんだけどね…。」


遠藤は何か煮え切れないものを感じていた。

それは“秘書としての勘”とも言うべきか。何だか落ち着かない胸騒ぎを覚えていた。


そんな遠藤に田中はブレーキをかける。


「来週からは大事なパリ視察が待っています。室長はそちらに集中して頂かなくては困ります。」


「そうね…。それと、田中さん一人に社長任せるのも…大丈夫?」


遠藤の顔に新たな不安が現れる。


このクラウドブームは遠藤にとって想定外。大誤算だった。

まさか三カ月後の予定まで影響を及ぼすとは、さすがの遠藤も予期できなかった。

だが、海外視察は以前から決まっていたこと。今更、予定変更はできない。大きな新規事業立ち上げのための大事な視察。

“社運をかけている”と言っても過言ではない。

ただでさえ「女王」の面倒を田中一人に任せるのも不安だというのに。そこへ来て、志田の要らぬ情報が加わり、遠藤の予定をさらに狂わせる。


「大丈夫ではないですけど…。大丈夫です。たった二週間ですから。」


田中はこれ以上、遠藤に心配かけまいと気丈に振舞う。

その姿はとても弱々しく、そして、頼もしくも見えた。田中はこれから秘書として一人前になろうとガンバっている。心配かけまいと踏ん張っている。手塩にかけて育ててきたひよっこが今、大きく羽ばたこうとしていた。


「そうね。」


独り立ちしようとしいている田中に、今度は遠藤が心配かけまいと振舞った。


「それに取材も今週まで。来週からは通常の業務に戻れるようにしてあるから。」


遠藤には抜かりはなかった。

この忙しさを遠藤のいない期間も続ければ、荷が重すぎて、きっと田中は倒れるだろう。大きく羽ばたこうとしている田中にかけていい負担ではない。


遠藤はそう考え、取材を一旦、今週までと区切った。


遠藤の親心。


「はい。ありがとうございます。」


田中は可愛らしい笑顔で答えた。


「あっ、それと、江口様から連絡はありましたか?」


これも遠藤の影響だろうか。田中も江口の存在が気になっていた。

遠藤は、またも困った顔をして、横に首を振る。


もう一つ、頭痛の種を思い出す。


これはある意味、志田よりも質の悪い頭痛の種。怒りを伴う頭痛。

遠藤とはトコトン相性が悪い。何もかも合わない。

志田は力を使って抑えることはできる。言わば、遠藤の手のひらの中。だが、江口という男はその外、想定外のところにいる。

いまだに居場所がわからない。連絡も取れない。

別れ間際、“契約する”と言っていたのに、そのあとは、なしの礫。音沙汰なし。クラウドの絵を銀座に渡しに行った日以来、姿を見せず、お金も受け取りに来ない。

取り分も相当で、誰もが真っ先に取りに来るというのに、一体、どうしたというのか。

それに、これだけクラウドの話題が日本中、世界中を飛び回っているのだから何かしらの反応があっても良さそうなものだが、やっぱり何もない。この世から江口が消えてしまったのではないのかと思ってしまうほど静かだ。

何もかも相性が合わない遠藤としては、江口が、このまま静かに行方不明で音信不通でいてくれた方が精神衛生上、健康でいられる。


しかし、江口の言動からみて、安泰などできない。

どこから降って湧いてくるかわからない。神出鬼没。予測不能の男。遠藤が最も用心しなければいけない最重要注意人物。


なのに居場所がわからない。

その上、来週から海外出張。今週中に方を付けたいのに、その肝心の江口が見つからず、イヤな予感だけが遠藤の心を荒らし回る。


「私がいない間、から連絡が来たら、すぐ教えてね。夜中でも、朝でもいいから。ね。」


「あっ、はい。わかりました。」


田中は遠藤の真剣さに少し驚くが、転ばぬ先の杖。

田中では、の対応は困難と判断し、一人で決して対峙しないように念を押す。

雛鳥の田中では、まだ早い案件。相手が悪すぎる。




「そろそろ新作が出るんじゃないですか?」


釣られながら、卑しい顔して、男性記者が「女王」に尋ねた。


「ん~。それは、まだ内緒かな。」


またも、もったいぶった言い回しで記者を釣り上げる。


「出るんですか?新作の出来はどうですか?テーマは?」


まんまと記者が釣り上げられる。

勝手にスクープが取れたと勘違いして、舞い上がっている。「女王」の言葉を疑うこともせず、真に受け、一人、大はしゃぎしている哀しいピエロ。


「だから、それはまだ内緒。新作が出たら、また取材に来てちょうだい。」


「女王」も機嫌よく、もったいぶって、記者を釣って遊んでいるが、クラウドの新作などどこにもない。あるわけがない。

なぜなら、江口がすべての供給源。江口から連絡がなければ何も出来ない。

入り口には鍵が必要だ。その鍵がなければドアは開けられない。蛇口があっても水が出なければ無用の長物。意味がない。


そこまで「女王」が考えているかはわからない。

「女王」の考えていることはわからない。


江口の考えていることは、もっとわからない。


いつも悩むは遠藤ただ一人。


パリへ行く前に、一つ一つ、可能なところから禍の芽は摘んでおかなければならない。出張準備もままならない忙しさが、遠藤を矢継ぎ早に襲いかかる。




パリ視察・二日前 


秘書室 午後三時十六分


遠藤が上着を着て外出しようとしている姿を、田中は不機嫌な顔で見ていた。


「大丈夫。話をして来るだけだから。」


遠藤は諭すように田中に話す。


そんな言葉をかけられても、田中の不機嫌は直らない。どうしても遠藤の行動に納得できないでいた。


パリ視察を目前に控えたこの大事な時に、デタラメな記事を書くような、いい加減な記者にわざわざ会いに行くのが理解できなかった。

吹けば飛ぶような出版社。部数を稼ぐため、クラウド人気に便乗し、書いた根拠のない下品な話など無視をすればいいだけのこと。七十五日後にはゴミとなり記憶の端に捨てられる取るに足らない噂話。


なのに遠藤は志田を警戒心する。

田中には遠藤の過剰反応に思え、そこまで警戒する理由がわからなかった。


「もう一度、会わなければいけないのでしょうか?」


率直な意見だ。一言で言ってしまえば、“遠藤らしく”ないのだ。


「…そこまでして会う必要はないんだけれど…ね。」


上着の襟を直しながら遠藤は答えるが、田中の気持ちも痛いほどわかっていた。遠藤がどう答えても、きっと田中は納得しないだろう。


「パリに行く前にハッキリしておきたいの。」


「何をです?」


「あの噂の出所を。」


「出所も何も、ガセネタですよ。適当なことを言って、はぐらかすだけですよ。会っても時間の無駄だと思います。」


はじめて田中は遠藤に食い下がった。

上司の意見に歯向かっているのではなく、それだけ志田という女に会ってほしくはなく、遠藤を思えばこその反対であり、仕事に集中してもらうためにお願いしているのだ。


それでも志田に会いに行くと決めていた。


「確かに、かもしれないわね。」


田中の言い方に、笑みが零れた。


“時間の無駄” 

それはよく遠藤が、「女王」に使っている言葉だ。“そんなところも似てしまうのか” そう思うと、何だか、可笑さが込み上げて来た。


「でも、私がいない間、あの記者が社長や田中さんの周りをウロチョロしないように釘を刺しに行くだけだから。」


「…はい、わかりました…。」


言葉とは裏腹に、田中の顔が晴れることはなく、ただ、ボソッと小さく答えるだけだった。




午後四時五分


遠藤は駅からほど近い大きな目抜き通りを足早に歩いていた。


夕方という時間帯もあってか、楽し気に会話しながら帰宅する学生たちやエコバックに食材を入れた主婦の姿。子供を自転車の後ろに乗せ、交通量で膨れ上がった道路を急ぐように、スイスイと走って行くスーツを着た母親。


先程まで流れていた優雅な時間が霧となり消え、街並みの呼吸が一変する。傾く夕日から逃げるかのように、人々が家路へと向かい、朝とは違う忙しさが、目まぐるしい早さで進んで行く。

遠藤は、その早さに負けることなく、颯爽と歩く。


程なくして、シャレた喫茶店の前に辿り着く。

遠藤はそこで立ち止まり、外から店内の様子を窺う。

最初に目に入って来たのが、窓際の席でパソコンを覗き込みながら仕事をしている志田の姿だった。


その姿を見て、遠藤は小さく息き吐き、店内へと入る。


慌ただしく過ぎて行く外の時間とは無縁な店内。ゆったりと落ち着いた時間が流れる。


そのため、ドアの開ける音でさえもウルサく聞こえ、よく目立つ。

その音で志田が入り口に目をやる。

そこには遠藤。 遠藤も志田を見ていた。


近寄って来た店員に、遠藤は志田のテーブルを指す。

定員も理解したようで、一つお辞儀をして、その場を離れた。


遠藤は志田を見ながら静かに近づき、志田もまた遠藤を見ながら立ち上がる。




この二日後、遠藤は視察のためパリへと向かった。



































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