第7話  健康と、長生きと、大切なもの

「まあ、伝えられている話は、ここまでということになっている。その後、ご先祖の姫菜様が、無事帰ってきたらしい。それから何年か何十年か後、敷地に、何かを埋め、その上に社を建てたようだ。それが、あの場所だよ」


 神主さんは、猫の社を指差し、そう言った。


「これは、文献には、残されていない。ただ私の家で、代々伝えられているだけの話だ。ご先祖の姫菜様は、戸尾鐘村から、子猫を一匹連れ帰って、それは、大事に育てたそうだ。あの場所には、一生涯楽しく暮らした後、老いて死んだその猫が、埋められているそうだ。その子猫は、猫又が焼かれた後、灰の中から、見つかったと伝えられている」


 では、この子猫は、焼かれた猫又が再生したものだったのか。子猫の時から幸せに暮らすと、猫又にならないということなのか。


「そういう理由わけだから、猫又にするより、君の猫が、少しでも楽しいと思えるように、愛情をたくさん注げば良いと思うよ。ここでは、君の大切な子猫の長寿と健康を願えばいいのではないか」


 神主さんのご先祖の話は、水面に浮かんだ花びらが、海に下ると美しい魚になると言っているような話だが、それからは、マホロの健康と、長寿だけを願うようになった。


 小さな神社には、もちろん以前と変わらず、毎日通っている。


 以前と変わった事と言えば、マホロを可愛がってくれる人が、増えた事だ。


 その人は、あの神社で、巫女のアルバイトをしていた。神主さんの親戚だという事だ。


 毎日通って来る僕を最初は、怪しいと思ったらしいが、事情を聞き、話しかけてくれるようになった。


 マホロは、尾をピンと上げ、彼女を歓迎する。


 僕に出来たもうひとつの大切な存在は、彼女のご先祖様と同じく、姫菜という。




 

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そういうわけで、僕はマホロを猫又にすることを…。 @ramia294

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