第6話  決戦

 翌朝、引き裂かれた、血まみれの坊主の袈裟は、僅かにその形を残していた。


「失敗だった。いつの間にか聞こえなくなった事に気付かなかったな。坊主の経が、通じなかったということは、やはり虎かな」


 高駒は、槍の刃を研ぎ始めた。鋭く研がれた槍の刃は、怪異のものでなく、虎であれば、確かに毛皮くらいなら切り裂けるかもしれない。


 その夜、再び、それは、現れた。

 坊主を喰って、味を占めたのだろう。


 たったひとりで槍を手に、その巨躯に立ち向かう高駒の勇気に、姫菜は、感心した。


 しかし…。


「お嬢様。尾が二またに分かれています」


 望の言う通り、虎ではなかったようだ。怪異だったようだ。


 槍が通じるのか?


 しかし、高駒との打ち合わせでは、槍の一撃を浴びせてからということになっている。


 その時、高駒は、動いた。


 たしかに当代随一の使い手の名にふさわしく、見たこともない素早い踏み込みだった。


 槍は、猫又の足を貫き、ダメージを与えた。


「今だ!」


 高駒が、叫び、槍を捨て跳び下がった。


 既に、姫菜が、つがえていた矢に、望が、火をつけた。同時に五本の矢が、正確に怪異の周囲に積み上げた薪を射る。


 周囲を炎に囲まれた、猫又は驚き、動きを止める。その瞬間、さらに火矢の追い撃ちが、猫又の足元の薪を射る。


 火に焼かれ苦しむ猫又を太刀を抜き、離れたところから、見守る高駒。




 

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