第5話  第二夜

 翌日は、高駒と姫菜、望と、農夫、村長の五人だけで、犠牲の出た現場を巡った。

 一晩中、頑張っていた坊主は、倒れ込むように眠り、起きそうもなかった。


 どの場所も開けていて、見通しが、効き、新しい現場からは、足跡まで、見つかった。


 足跡は、姫菜の手のひら二つぶんより、遥かに大きく、その巨体が、想像出来た。


「これは、虎ですね」


 足跡を調べていた、姫菜が立ち上がり言った。


「海を渡ったお隣の国には、結構な数の虎がいるそうです。大人の男二人分ほどもの大きさがあり、熊をも襲い喰らうそうです」


「妖怪、もののけの類いでは、ないのだな」


「分かりません。この国での目撃例は、ありません。この国では、猫又と考えた方が、正しいのかもしれません。怪異の類い以外では、虎だと考えられるだけです」


「両方の可能性を考えて対処するしかないな。で、それぞれどう対処すれば良い?」


「どうでしょう?猫又であれば、怪異です。槍が通じる存在かどうか。虎であれば、熊の爪すら通さない毛皮にその槍を突きたてる事が、出来るか。私には、分かりません」


 その夜、坊主は、再び、経を唱えていた。たくさんの薪が、今宵も空を焦がす。


 もちろん今夜も囲炉裏のそばで、集まっていた。しかし、昼間の疲れで、全員がウトウトしてしまった僅かの間に、経を唱える声は、消えていた。


 

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