第4話  第一夜

 村長の家にお世話になった翌日、朝から山に入った。


 犠牲者は、夜だけでなく、朝も昼も関係なく襲われていた。


 山は、それぼど険しくもなく、なだらかな坂が続く。ところどころに、腰程度の草丈しかない開けた場所が、出てくる。

 警戒しつつ、進む。その日の内に、犠牲者の襲われたらしい場所を、三カ所まわる事が出来た。


 山間のこの村は、日が沈み始めると、投網が広がるように、闇が染み込む。

 

 桐の宮高駒きりのみやたかこまと、村長、月宮姫菜つきみやひめなは、囲炉裏を囲んでいた。


 食事は、すでに済ませており、坊主は、外に出て、火を焚き、経を唱えていた。


「あれで、猫又は、退治出来るのでしょうか?」


 村長は、心細げに尋ねた。


「分かりません。仏教というものは、まだ、新しい。どういうものなのか、判断するには、日が浅すぎます」


 高駒も頷く。


「坊主が、退治してくれるなら、それに超したことはない。しかし、今は、駄目だった場合の事を考えるべきだろう」


 月宮姫菜は、村長に、尋ねた。


「他の犠牲者も、比較的開けた場所で、襲われたのですか?」


「そうです。全て開けた場所でした」


「槍は、使えそうです」


「そうだな。不意をつかれなければ何とかなりそうだ。猫又は、大きな身体をしているようだ」


「その様ですね。出来れば、猫又を狭いところに追い詰め、私たちは、広い場所から攻撃したいものです」


 月宮の言うことは、もっともだが、そんなに上手くいかないだろう。高駒は、口を閉ざした。


 坊主が、唱える経が、部屋の中まで聞こえる。大量の薪が、空を焼き、坊主の肌まで焼いているようだと、二階で見守る望が、報告に来た。


「火が、ある限り、猫又は、警戒して出て来ないだろう。今夜は、大丈夫だろう」


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