尊み草子

ヒトデマン

とうときしもの

 とうときしもの


 芽吹く草木。春に咲く桜。稚児がはいはいから立ち上がれるようになる様。産まれたばかりの子牛を舐める母牛。親鳥が巣の我が子にせっせと餌を運ぶ姿。尊し。



 眠りこける猫の子。はしゃぐ犬達。列をなして進んでいく天竺鼠。ちゅんちゅんと声を鳴らして飛び跳ねる雀の姿。異種族同士の仲睦まじい様。いと尊し。



 幼きころより連れ添い、友達以上恋人未満のかっぷる。つんでれ少女が素直になる様。無表情なあの子が不意に見せた笑顔。尊し。



 らいばる同士の二人が強敵を相手に背中を預け合いながら戦う様。主人公がらいばるの必殺技を借りる様。一人で物事を解決しようとする者に、


「汝、なんでもかんでも一人で抱え込みけり。なほ我らを頼るべし」


 と仲間が助けに来る様。主人公が強大な敵に倒れかけた時、主人公を助けたかつての敵が


「な勘違いたまひそ。汝を倒すはこの我なり」


 と手を貸す様。いといと尊し。



 ろぼっと物で主人公とひろいんが同じこっくぴっとに乗り込む様。機体に搭載されたえゝあいが、


「斯くては我々が勝つ確率は零割なり」

「されど、汝と我が力を合わせるならば?」

「……二厘なり」

「足る!」


 と掛け合う様。尊み深し。



 おたくに優しいぎゃるがおたくに


「いみじ?おたく殿もこの動絵巻好きなるなり。うちと同じぞ」


 と理解してくれる様。ぎゃるがおたくの家でその動絵巻のきゃらに仮装してくれて


「ふーん、おたく殿かくいうが好きなりけり。助平」


 と、にやつきながら言ってくれる様。尊み秀吉。



 動絵巻の一くうる目の序曲を終劇の際に流す。最終話は主人公の名台詞を題名にする。最終話の序曲には効果音を付ける。重要なえぴそーどの時には特殊な終曲を流す。などは熱く尊し。



 恋愛もので幼馴染ひろいんがめいんひろいんと主人公の仲を見て黙って引き下がる様。哀しくも尊し。

 しかし幼馴染は負けひろいんなどと呼ばれている中で、前評判を覆し幼馴染が主人公と結ばれるのもまた尊し。



 尊いもの。少年とお姉さんの恋物語。子供だと思っていた少年の勇気に、お姉さんが心動かされたるはよし。少年の目の前にお姉さんの胸が位置する体格差はいとおかし。



 尊いもの。女子高生の百合。片方が自分の気持ちに気づかず、相手が他の女子と仲良くしているところに胸がずきずきさせる様は万病に効く。


「何ぞ、かの子が他の子ともろともにありしとき、胸が痛くならむ」



 尊いもの。男性二人のばでぃもの。えりーとの新人と叩き上げのべてらんがいがみ合いながらも事件解決に向かって進んでいく様は尊みの鎌足。


「事件現場で煙草はやめたまへ」

「やかましい、吸へる方が頭の回転良くなるぞ」



 尊いもの。家族の絆。長兄、姉が妹や弟のために粉骨砕身する姿は心を揺さぶられるものなり。


「我長男なれば念ぜられき。次男ならば念ぜられざりき」

「どけ!我はお兄ぞ!」

「なほお姉になりしぞ!」



 この世には様々な尊きものあり。それらがもっともっと増えること。そしてそれら全てを平和に愛でられる世の中になることを願うばかりなり。

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