第4話

いつまでも玄関に居られないので俺ときなこはリビングの方に来た。


「…なぁ、きなこ」


「にゃ?」


「なんか、色々と増えているんだが…」


そう、基本俺の部屋はシンプルなのだ。

ポスターとか本とかそういうものは置かないのに帰ってきてあらビックリ…女の子の部屋に来たのではないかと思う程俺の部屋は変わっていた。


「にゃはは…家からこっそり持ってきたのにゃ。大変だったにゃ〜」


と、カラカラと笑っているきなこを見て思う。


少しは相談してくれよ…と。


「なんか自分の家なのに知らない人の家に来たみたいだな」


と、俺が言うと


「優希は物が無さすぎなのにゃ。テレビとソファーとテーブルしかないとかあまりに殺風景過ぎるのにゃ〜…」


「うるせぇやい。しょうがないだろ趣味とか無いんだしさ。物も何買えばいいか分かんないんだし…」


「にゃは!これからは2人で部屋を作って行こうにゃ!そうと決まれば優希がお休みの日にお出かけするのにゃ!」


と、俺の予定を勝手に決め始めるきなこ


「なんかこれから大変そうだなぁ…」


「それぐらいがちょうどいいのにゃ。人間は命が長くても100年…あまりに短いのにゃ。だから、今生きている時間を楽しまにゃいと死ぬ時絶対後悔するのにゃ」


と、きなこは真面目な顔で言ってきた。


「確かにそうだが…」


「そ、れ、に!にゃーは今すっごく楽しいのにゃ。大好きな優希と一緒に暮らせる…だからいつか優希にも同じ気持ちになって欲しいからどんどんアピールするのにゃ!」


「え?今なんて…」


今サラッときなこは言ったが大好きって言わなかったか?


「にゃふふ♡覚悟するのにゃ…優希!」


そう言うきなこの目は獲物を見つけた時の猫の様な眼差しを向け妖艶に微笑むのだった。


そしてそのあとは2人でご飯を食べた。

誰かと一緒にこうして晩御飯を食べるのは久しぶりで…いつもの味気ないカップラーメンがすごく美味しく感じられたのは気の所為だろうか…。


ちなみにきなこが食べたのは…


「にゃ〜…この猫缶はあんまり美味しくないのにゃ〜。チョ〜ル!チョ〜ルが食べたいのにゃ!」


「流石にチョ〜ルはこの家には無いな…今度買いに行こうか」


「にゃ!本当かにゃ!?優希は優しいのにゃ〜」


そう言いきなこは俺に抱きつき頬ずりをしてきた。


「ちょ!きなこ近い!近いから!」


「にゃふふ…他のメスに盗られないようにマーキングなのにゃ〜♡」


そう言いさらにスリスリしてくるきなこ。


「ほ、他のメスって…」


「にゃはは!なんか、優希は不思議な匂いがするのにゃ。この匂いに釣られてくる女は絶対居るのにゃ!だからにゃーは負けないのにゃ〜!」


「どこにやる気出してるんだよ…全く。それに不思議な匂いって…」


そしてしばらく俺はきなこに好き勝手されながらご飯を食べるのであった。


そのあとのんびり2人でテレビを見ていて俺は気になっていたことをきなこに質問してみた。


「なぁ、きなこ」


「にゃ?」


「今朝と帰りのアレ、なんだったんだ?一瞬で移動してたやつ」


「あ〜…霊道通過の事かにゃ?」


「霊道通過?」


「にゃ、その名の通り霊道を使って移動する方法にゃ。妖界じゃ結構使われている方法で一瞬で移動したい場所に移動できるのにゃ」


「マジか…それは凄いな」


「にゃはは。けど、それを出来る妖はかなり限られているのにゃ。ちなみににゃーは完璧に移動出来るから結構儲かっているのにゃ」


「儲かるって妖にも通貨があるんだな」


「それはもちろんにゃ。ちなみに通貨は人間達のお金にゃ」


「え?」


「妖には実はこっそりと人間界で住んでいる者たちがかなり居るにゃ。人間に化けたりにゃーみたいに猫になれたり。人間達が気づいてないだけにゃ〜」


と、あっさり言うきなこ。


「そんなあっさり言ってるけど俺にとっては衝撃的事実なんだけど…?」


「にゃふふ…もっと驚かせると優希が働いている会社にも居るのにゃ」


「…まじ?」


「マジにゃ」


「ちなみにどんなの?」


「うーん…直接会ってみないと分からないのにゃ。人間に化けると妖力が感じ難くなるからにゃ〜…」


「そういうものなのか」


「そういうものなのにゃ」


そしてお互いポツポツと話しているうちに時間は過ぎ21時になった為俺は風呂に入ろうと思い…


「ちょっと風呂入ってくるけど、きなこはお湯に浸かりたいか?」


と、きなこに聞いた。


「にゃ…お風呂かにゃ」


「やっぱり猫又でも水は苦手なのか?」


「にゃ〜…基本にゃー達は汗をかかないし体も妖力を使えば綺麗にできるのにゃけど…優希に汚いって思われたくないから入るのにゃ!」


「お、おぅ…じゃあ風呂沸かしてくる」


「行ってらっしゃいにゃ〜」


そう言い俺は風呂場に来た。

そして俺は風呂を洗いながら呟く。


「あんなにストレートに思いをぶつけられるのはなんか…恥ずかしいな」


俺だって男だ。きなこ見たいに可愛い女の子にあんなに積極的にされたらドキドキしてしまう。そこに人間だろうが妖だろうが関係ないのだ。


「はぁ…これからどうなるんだろ」


急遽決まったきなことの同棲生活、そして人間の街に普通に暮らしている妖達。


これだけでも頭が混乱しそうだ。


それに…


「きなこ…離れなさい」


「にゃふふ♡嫌だにゃ〜♪」


俺はこれからどうなるのか…考えると頭が痛くなってきたので思考放棄し目の前のお風呂を洗うことに専念したのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

捨てられていた子猫を拾って育てたら彼女になりました 青の空 @ShimonZu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ