第3話
さて、そんなことがありつつもお互い話しているときなこが…
「そう言えばお兄ちゃんの名前ってなんて言うんだにゃ?」
「え?」
「名前にゃ、名前」
「名前は黒瀬優希だよ。優しいに希望の希で優希」
「優希…うん!とってもいい名前にゃ!」
「ありがとう、きなこ」
「にゃはは…撫でてくれも良いんだにゃ?」
そう言い頭を突き出してきたので俺は優しく撫でた。
「にゃふ…とっても気持ちいいにゃ〜♪」
そう言いしっぽを揺らしながら喜んでいるきなこ。その姿は甘えている犬の様だった。
ブー!ブー!ブー!
いきなりスマホが鳴り出したので確認すると…
「ヤバい…完全に遅刻の時間だ!」
時刻は8時50分。
出社は9時まで。今から向かっても絶対間に合わない。
「にゃ?優希はどこかに行くのかにゃ?」
そう、きなこは首傾げながら聞いてくるので…
「あぁ。会社に行かないと行けないんだが…完全に遅刻コースなんだよ…。あぁ、やっちまった」
そう言い項垂れていると…
「ふっふっふ…にゃーにお任せにゃ!優希は早く着替えるにゃ!猫又特急便の出番なのにゃ!」
「猫又特急便…?分かった。取り敢えず急いで着替えるよ」
「にゃ!こっちも準備しとくにゃ!」
そうして俺は急いでスーツを着て歯を磨いて…そんなことをしているうちに時刻は8時55分になった。
「きなこ、準備出来たぞ?」
「にゃ!こっちもOKなのにゃ!ちなみに優希の会社はどこにゃ?」
「あぁ、ここなんだが…」
俺は地図で場所を教えた。
「にゃ!それじゃあ軽く目を瞑るにゃ。にゃーがいいって言うまで絶対目を開けちゃダメなのにゃ」
「わ、分かった。こうか?」
俺はぎゅっと目を瞑った。
するときなこは俺と手を繋ぎ…歩き始めた。
すると何か冷たい風が全身に当たる感覚を感じた。しかし、それは一瞬で…
「にゃ、もう目を開けていいのにゃ」
そう言われ俺が目を開けると…
「…ここは、俺の会社の屋上?」
そう、俺の家から約1時間はかかる距離なのに一瞬で来てしまった。
「にゃはは!早く行くのにゃ!遅刻しちゃうにゃ」
と、きなこは笑顔でそう言ってきた。
「お、おう、ありがとなきなこ。行ってきます」
「行ってらっしゃいにゃ。帰りも迎えに来るからいつ来ればいいのにゃ?」
「本当か!?助かる!18時にここで良いか?」
「にゃ!了解!」
そして俺はきなこと別れ急いで自分のデスクに向かったのだった。
そしてその日の仕事を終わらせ時刻は18時となった。
俺は荷物をまとめきなこが待つ屋上に向かおうと思ったのだが…同期の真也が話しかけてきた。
「おっす、お疲れ優希」
「おぉ、真也か。お疲れ」
「なぁなぁ、今日飲みに行かね?」
「あ〜…今日はパスかな。ちょっと用事があるんだ」
「用事…?まさか女か?」
「い、いや〜…そんな事は無いぞ?」
「…怪しいな」
そう言いジト目で見てくる真也。
しかし本当の事を言えないので…
「ほんとなんでもないから!ちょっとした用事だから!」
と、言ったが…
「なんでそんなに慌ててんだよ…ま、いいさ。優希にも春が来たって事で」
真也は変な感じで捉えたらしく1人納得していた。
「はぁ…ま、今度飲みに行くか。誘ってくれてありがとな、真也」
「おう、頑張れよ!じゃあな〜」
そう言い真也は去っていった。
「さて、屋上行かないとな」
俺はそう呟き屋上に向かった。
「にゃんにゃんにゃ〜ん♪」
俺が屋上に着くと機嫌よく鼻歌を歌い尻尾をゆらゆらと揺らしているきなこの姿があった。
「きなこ、お待たせ」
俺がそう声をかけるときなこはこちらを振り向き…
「にゃ、お疲れ様にゃ優希。早速帰るかにゃ?」
「あぁ。頼む」
「にゃ。じゃあ目を瞑るにゃ」
「分かった」
そして今朝と同じような感覚を味わい俺は家に着いた。
「ありがとうきなこ。今日は助かったよ」
「にゃはは〜感謝するのにゃ〜」
そう言いきなこは頭を出してきたので俺は優しく撫でた。
「にゃ〜…優希は撫でるのが上手なのにゃ」
そう言い口元を綻ばせているきなこを見つつ俺たちは家の中に入った。
「ただいま」
「おかえりなのにゃ。そしてにゃーもただいまなのにゃ」
「おかえり…って、そう言えばきなこはいつ帰るんだ?」
「にゃ?にゃーの家はここなのにゃ」
「へ?」
「だから、にゃーのきなこの家はここなのにゃ」
「ここって…俺の家か?」
「にゃ」
そう言いきなこは頷いた。
「えっと…」
流石にひとつ屋根の下に男女が住むのは童貞にはキツすぎる。
なので何とかしようと思ったのだが…
「…実はにゃ、今朝も言ったけどお父さんと喧嘩しちゃって家出してきたのにゃ。だから帰る場所がもうここしか無いし、にゃーは優希と一緒に居たいのにゃ…ダメかにゃ?」
そう言い懇願するような目を向けるきなこ。
「ぐっ…でも…」
「それににゃーは優希より歳上だから人間達の言う法律的にも大丈夫なのにゃ。と、言ってもにゃーは妖だから人間の法律は適用されないのにゃ」
と、きなこが力説してくるので…
「…はぁ、分かったよ。取り敢えず少し休憩したら買い物に行こうか」
「やったにゃ〜!…買い物?」
「そうだよ。この家に予備の布団なんて無いからな。買わないと」
俺がそう言うときなこは首を傾げながら…
「それなら要らないのにゃ。だって…」
ボフン!と音とともに白い煙が出たと思ったら…
『にゃ〜!』
と、足元に小さな…あの時の黒猫が居た。
「…マジか」
そしてまたボフン!と音と煙が出たと思ったら
「にゃはは!どうかにゃ?寝る時あの姿になれば布団なんて要らないのにゃ〜」
と、きなこが言ってきた。
「…そ、そうだな」
そして俺ときなこは今日から同棲?する事になったのだった。
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