21回のプレゼント

添野いのち

21回分の想い

「明日から21日間、薔薇をプレゼントします。」

 突然、同棲中の彼女にそう言われた。

「え、3週間も?花枯れるよ?」

 俺は思わず聞き返す。

「毎日新しいの買うから問題なし。」

「そんだけ薔薇買い続ける金、一体どこから出てきたんだ?」

「仕事で貯めただけだけど?」

 俺だったら薔薇のためにお金貯めようとは思わない。でも、3週間もそれをし続けるのには、何か意味があるのだろう。

「まあ、3週間後を楽しみにしてるよ。」

 俺がそう言うと、彼女はニコッと笑って、

「うん、楽しみにしてて!」

 と言い残し、俺の部屋から出て行った。


 1日目は1本。

 2日目は2本。

 3日目は3本。

 4日目は4本。


 ・・・1日1本ずつ増やしていくつもりなのだろうか。そうだとしたら231本になる。

 ・・・え?231本?マジで?

 俺はすぐに大量の花瓶を通販で注文した。


 5日目は5本。

 6日目は6本。

 7日目は7本。

 8日目は8本。


 うん、やっぱり1日1本ずつ増やしていくんだろうな。注文した花瓶も全部届いたし、これで問題はないだろう。


 9日目は9本。

 10日目は10本。

 11日目は11本。

 12日目は12本。


 順調、順調。そう思っていた俺は、13日目に予想を裏切られることとなった。

 13日目。その日はなんと、13本ではなく21本だった。

「ちょっと、薔薇の本数間違えてない?」

 俺は彼女に聞いてみた。

「え?1、2、3、・・・、21。合ってるよ?」

「・・・てっきり今日は13本だと思ってた・・・。」

「1日1本ずつ増やしてくなんてそんなことしないよ。本数が増えたのには、もっと深いわけがあるから、ちゃーんと考えてね。」

 そう言われてしまった。とは言え、まだ規則性はわからないのでもう少し様子を見ることにした。


 13日目は21本。

 14日目は24本。

 15日目は50本。

 16日目は99本。


 ちょっと待て、急に増えすぎだ!でも・・・21本、24本、50本、99本。絶対何か意味がある。それは分かった。だがどんな意味かは全く分からなかった。

「とりあえず花瓶だけ買っておくか・・・。」

 俺の給料は花瓶に消えた。


 17日目は100本。

 18日目は101本。

 19日目は108本。

 20日目は365本。


 花瓶を買っても買っても、薔薇が収まりきらない。

 そんなことはどうでも良いとして、本数の意味って・・・。

「108本って・・・あっ!」

 俺は急いでネットで調べた。俺の予想は確信へと変わった。

「明日は花瓶がもっともっと必要だな。」

 俺は店を周り、大きな花瓶を数十個確保した。一月分の給料が余裕で吹っ飛んだ。でもそれ以上に、嬉しかった。


 そしていよいよ21日目。

 21回目の薔薇のプレゼントをしに、彼女は部屋へ入ってきた。

「問題です。今日プレゼントする薔薇は何本でしょうか?」

 彼女が聞いた。俺は1つ深呼吸をした後、はっきりと答えた。


「999本。」


「大正解!」


 薔薇は本数によって花言葉が変わる花だ。

 1本なら「一目惚れ」。

 2本なら「この世界は2人だけ」。

 3本なら「愛しています」。

 4本なら「死ぬまで気持ちは変わりません」。

 5本なら「あなたに出会えたことの心からの喜び」。

 6本なら「あなたに夢中」。

 7本なら「密かな愛」。

 8本なら「あなたの思いやり、励ましに感謝します」。

 9本なら「いつも一緒にいて下さい」。

 10本なら「あなたは全てが完璧」。

 11本なら「最愛」。

 12本なら「私と付き合って下さい」。

 21本なら「あなただけに尽くします」。

 24本なら「1日中思っています」。

 50本なら「恒久」。

 99本なら「永遠の愛」。

 100本なら「100%の愛」。

 101本なら「これ以上ないほど愛しています」。

 108本なら「結婚して下さい」。

 365本なら「あなたが毎日恋しい」。

 999本なら「何度生まれ変わってもあなたを愛する」。

 ちなみに13本は「永遠の友情」で恋とは全く関係がなくなる。これで13日目で急に21本になったことも説明がつく。


 彼女は廊下から、999本の薔薇を運んできた。

「ちょっ、もう俺の部屋薔薇で埋め尽くされてるのにまだ入れるか⁈せめて答えてからにして、薔薇に隠された想いに!」

 そう言うと彼女は頬を赤らめた。

「・・・うん、分かった。答えを、教えて。」

 俺は21回の彼女からの告白に、薔薇1945本分の想いに、「はい」と答えた。

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21回のプレゼント 添野いのち @mokkun-t

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