【8】任命
〜 パツィフィスト本部 〜
ジュリー「ただいま〜」
ロウ「おかえり〜」
アマネ「ふふふ」
しょうもないやりとりにアマネが笑う。
スクルド「んじゃ、作戦詳細報告にいってくる」
ジュリー「お先〜。あー疲れたー」
ロウ「先に風呂入ってるなー」
アマネ「あっ、ジュリーちゃん!お風呂終わったらまたおしゃべりしよーよ!」
ジュリー「いいねー!じゃあこないだは私の部屋だったから、今日はアマネちゃんの部屋に行ってもいい?」
アマネ「えっ!?私のコレクション見るっ!?見ちゃうっ!?」
ジュリー「それじゃ、後でくるねー!」
本部帰還し、各々が散らばる。
スクルドはサポーターのラマと共に、そのままの足で司令部のフロアへと向かう。
ラマ「おそらく・・・昇進かと」
スクルド「だといいけどな」
ラマ「スクルドさんの分隊は、これまで大きなミスもなく堅実に作戦をこなしてこられました。
訓練過程だって、他のヴェンダーの3分の2の期間でクリアしていますし、ユヴェンの守護壁も汎用的です。
優秀なヴェンダー、と評価されているのは確実でしょう。
現に第5分隊長に任命されているじゃないですか」
スクルド「サポーターは媚び諂う任務もあんのか?」
ラマ「その腐った性根さえなんとかなれば、もっと多くの方から評価されるのに。
もったいない」
はぁ、とため息を吐きながら、やれやれという表情で語るラマ。
スクルド「ほっとけ」
そのまま歩みを進めていると、スーツ姿の男が立っていた。
男は、こちらに気付き振り向くと、ニコッと笑いかけてきた。
ラーヘル「お!お疲れ。スクルドくん、ラマくん」
ラマ「お疲れ様です。ラーヘルさん」
ラーヘル「待っていたよ。ささっ、中へ。
副司令が呼んでるよ」
〜
コンコンッ
ラーヘル「副司令!スクルドくんとラマさんが到着しました」
副司令「いいぞ、入れろ」
木製の分厚く大きな扉を開いた。
副司令「やあ、久しぶりだな。早速だが本題に入る。かけてくれ」
スクルド「今日は随分とせっかちだな、ナルーシャ」
ナルーシャ「馬鹿者。今この場では”副司令”だ」
スクルド「失礼いたしました、副司令」
ナルーシャは、持っていたペンを額に当てながら、表情を歪ませる。
パツィフィスト副司令、ナルーシャ・ブラウニル。
齢は30になったか、なっていないか。詳しくは本人にも聞けない。
腰まで伸びた金髪、誇りがこもった目つき、女性らしい体つき。
副司令という立場に合った厳かなオーラを放つ、勇しさと美しさを持つ女性だ。
パツィフィストの中でもナンバー2の地位である彼女だが、何故かスクルドとは対等であるかのように接する。
ナルーシャ「ああもう!やっぱり気持ち悪いな!もういい。さっさとかけろ」
ラマ「あのー、ラーヘルさん。私はこの場にいてよろしいのでしょうか?」
ラーヘル「あぁ、むしろいてくれ。これから話す内容は、ラマくんにも関係があるんだ。一緒にくるように言ったのもそのためだよ」
カチャン。
マネージャーらしき女性が紅茶を4つ、テーブルに置く。
ラマ・スクルド「どうも」
女性はニッコリして振り返り、ワゴンを押す。
腰ほど長さの赤いポニーテールを揺らしながら、一礼をして部屋を去る。
ナルーシャ「さて、単刀直入に言うが・・・
新しいプロジェクトの発足メンバーとして現地に赴いてもらう。
プロジェクト名は”シールゥリ”計画。
具体的には、東南の島国シンザポーラ国に飛び、連合国からの侵略の際は防衛に専念しつつ、戦後に備えて独立国を作り上げる準備をサポートしてもらう」
ラマ「わっ、我々で国を一つ、独立させろということでしょうか!?」
ナルーシャ「まあ聞け。
今現在、ドイルは東南の島国さえも必要となっているのだ。
フランチェやパーランド、その他欧州小国はすでに手中にあるが、いまだに爆撃を続けているイグリスが降伏しない。
そんな中、今から半年前、ヤマトがアミリカ領土である太平洋の島に大規模の奇襲を仕掛けた。
つまり、ヤマトがアミリカに宣戦布告したのだ。
これにより、協定を結んでいたドイルとイタルナ、スペリンもアミリカに宣戦布告。
可能なら、アミリカにはもう少しこの戦争を傍観していただきたかったよ・・・。
さらに同時期、ドイルは侵略したパーランドと陸続きになっていたソブリトに奇襲。
これによって、今世界は、
ドイル
イタルナ
スペリン
ヤマト
イグリス
ソブリト
アミリカ
という歴史上類を見ない世界大戦にまで発展している」
ラマ「アミリカへの宣戦布告は本当に・・・早すぎましたよね」
ラーヘル「本当だよ。相手がイグリスとソブリトだけなら、十分に勝機があった・・・。
我々は、世界の覇者を戦場に呼んでしまった。あまりにも早く、銃を握らせてしまったんだ・・・。
戦場は、もう・・・」
ナルーシャ「欧州という枠には留まらない、この世界全体、だな。
こうなってくるとヤマトとの連携が取りづらい。
となると、ヤマトとの中継地点となる場所が必要となる。
その中継地点として特に重要な位置にあるのが、今回我々が行く”シンザポーラ”とスイズ運河がある”エジピト”だ。
シンザポーラはヤマトが掲げる大東亜共栄圏を実現するために絶対に必要な国だ。
そして、ヤマトは在中していた8万人のイグリス兵を打ち倒し、見事シンザポーラを陥落。
スイズ運河が通行できない以上、ヤフリカ大陸の外周をすすむ遠回りにこそなるが、シンザポーラが手に入った今は、とりあえず貿易がやりやすい」
ラマ「なるほど、ヤマト国からすれば西南に位置する島。
ドイルからすれば、南部のヤフリカ大陸から西の大海を出たすぐの位置。
シンザポーラは確かに重要拠点となりますね」
ナルーシャ「そして、シンザポーラの価値は戦時中だけではない。
今後、海運の中継地点という役割を果たしていくシンザポーラは、傀儡国(かいらいこく)としてではなく、自国で豊かに成長していく独立国であってもらったほうが、都合がいいのだ。
海運において非常に重要な位置にあるシンザポーラは、どんな国でも欲しがる。
故に、裏から資金や武器を送り、独立を促す勢力が現れる可能性は高い。
現に、遠く離れたイグリスはシンザポーラを植民地として確保していた。
とはいえ、独立は最終的な目標だ。
今回我々が真っ先に達成したいのは、ドイルとヤマトの二国の海路を安定させる中継地点をこの戦争に利用できるようにすることだが、戦後のことも考えて、交渉を進めていきたいのだ」
ラマ「だから、すでにヤマトが確保したシンザポーラにわざわざ乗り込むのですね・・・」
ナルーシャ「あぁ。戦時下とはいえ、最初から独立を前提とした国交を始めておきたいのだ。
もちろん、この戦争が終わるまでは、ヤマトとドイルの貿易地点として利用はさせていただくがな」
ラーヘル「このシールゥリ計画に携わるのはヤマト国、ドイル国、シンザポーラ国。
そしてパツィフィストからは、ここにいる4名と一部ヴェンダー・サポーターだな」
ナルーシャ「察しのとおり、今回の話は非常に重要度が高い。
現在、ドイルVSソブリト戦での勝利が最重要であることに変わりはない。
だが、イタルナとスペリンがアミリカ、イグリスに上陸侵攻されている今、枢軸国の中で侵攻されていない大国と言えるのはドイル一国。パツィフィスト戦力を足したとて、欧州に蔓延(はびこ)る連合諸国を相手にするのは、物量の面一つとっても厳しい。
ただでさえ、ドイルは四面楚歌に近い戦況だ。
イタルナに優秀なヴェンダー達を派遣こそしているが、これ以上の支援に割く余裕はない。
だからこそ、東で快進撃を繰り広げるヤマトを支援して、アミリカを西海岸から脅かしてもらう。
西に兵力を割かせ、アミリカ兵の欧州への応援が著しく減れば、欧州戦線を切り抜けられる。
また、世界一の技術力を持つドイルは、ヤマト国に技術提供して一刻も早く強力な兵器を自国生産できるようになってもらう必要があると考えている。
海軍主要のヤマトと、陸軍主要のドイル。それぞれの強みを活かしつつ、ソブリトとアミリカという超大国2カ国を挟撃できる位置。
ドイルから見れば、スペリンやイタルナより、ヤマトを支援した方がメリットが大きいのだ」
ラマ「だからヤマトとの海路の中継地点が必要、と」
ナルーシャ「そうだ。
シールゥリ計画は、パツィフィストが携わっている計画の中で、TOP3に入るくらいには優先度の高い計画だ。
だからこそ、副司令である私がわざわざ現場に出向く。
私にもしものことがあった際の後任も、すでに決まっている。
それと、スクルド。
さっきからダンマリを決めているが、ちゃんと理解しているのだろうな?」
スクルド「ソブリトと戦う東部戦線、上陸されたイタルナの南部戦線、同じく上陸されたスペリンの南西部戦線を抱え、さらに北に位置するイグリスからの爆撃や上陸作戦を警戒するドイル。
欧州だけで手一杯と思われるこの状況で、ヤマトとの貿易を優先。
シンザポーラ、エジピトの順に自由に航行できるようにし、最短で安全な海路を確保。
これが実現すれば、ドイルとヤマトはそれぞれが不足した資源と技術、兵器を共有し、最終的に大国アミリカとソブリトを挟み撃ちにできる。
・・・ここまではまぁ、わかるが、シンザポーラを傀儡国とせずに、独立させることを現時点から確定させる必要性が分からねぇ」
ナルーシャ「独立にこだわることについては、ヤマトの”ある人物”が絡んでくる。その辺りは、別日にしっかり話す時間をとっているから安心しろ。
それに、我々が行うのは、シールゥリ計画がスムーズに動くように影から支援することだ。
我々が表舞台に立って、えい!えい!おぉ〜!!!なんてマネはありえない」
急に可愛さを意識したような声で掛け声をするナルーシャ。
スクルド・ラマ・ラーヘル「・・・・・・」
ラマ(はっ!副司令だって副司令である前に女性だ、女の子だ。急にハイトーンの声を出したくなることだってあるんだ!ははは、ははははは・・・。
この一件は何としても口破らないようにしないと・・・)
ラーヘル(威厳があるから年上のように思っていたが、よく考えたら今年41の私より10歳以上年下なんだよな・・・。
いやでもキッツ!)
スクルド「キッツ」
全員「・・・・・・」
ナルーシャ「・・・コホンッ!
ただでさえ他の任務にヴェンダーが割かれている。
シールゥリ計画は大胆な戦闘が起こる可能性も他と比べて低い分、少数精鋭で取り組むことになるだろう。
そこで、得体も底も知れない頭脳と、陸海空どれをとっても利用できる汎用性の高いユヴェンを持つお前に、白羽の矢が立ったというわけだ」
スクルド「これまで以上に、人を犬畜生みたいに働かせるための理由としては、随分と弱いな?」
ラマ(はわわ・・・副司令にタメ口&でかい態度とるのは司令とあなただけですよ、スクルドさん・・・)
ナルーシャ「まぁ、最後まできけ。ラーヘル、例のを」
ラーヘル「はい!」
軍人上がりであることがすぐにわかるような、ハキハキとした返事だ。
ラーヘル「これは、今回のシールゥリ計画に携わってもらうメンバーの候補をまとめた資料だ。
彼ら彼女らが今回共に計画を進める仲間となる者だが、選出するにあたって、スクルド君の意見も聞きたいのさ。
なんせ、副司令と私に次いで責任のある役職についてもらうからね」
そう言って10枚近いプロファイルを渡された。
早速中に目を通す。
〜
ジュリー・ホーラルン
17
第5分隊所属
実戦歴1年
VN2
ロウ・ナイルドーズ
19
第5分隊所属
実戦歴1年
VN2
ウィール・バグラス
20
第6分隊→第9分隊所属
実戦歴2年
VN3
アマネ・コノエ
17
第6分隊→第5分隊所属
実戦歴2年
VN3
・・・
〜
表記されている”VN”とは、ヴェンダーナンバーの略であり、ヴェンダーが持つユヴェンの利便性・成長具合・作戦遂行能力を考慮して、ランク付けされている。
VNは数値が高ければ高いほどそのヴェンダーはユヴェンを活用し任務をうまく遂行しているということだ。
ちなみに、スクルドはVN3である。
スクルド「おい、10名中3名は現分隊のメンツだぞ」
ナルーシャ「寂しくないだろう?」
スクルド「本当にシールゥリ計画の成功を目的とした候補出しなんだろうな?」
ナルーシャ「あぁ、もちろんだ。ま、君の人選が必ず反映されるわけではないから気軽に選んでくれ」
渡されたプロファイルをパラパラと捲(めく)り、いくつかのページに折り目を付ける。
スクルド「・・・・・・・ラーヘル、こいつらで頼む」
ラーヘル「分かった。この5人でいいんだね?」
スクルド「あぁ、頼むよ」
ラーヘル「それでは、サポーターも同様に選んでくれ。ラマくん」
ラマ「えっ!?私がですか?」
ナルーシャ「君はサポーターの中でも状況判断能力と行動力に長けている。
スクルドと共に行動することが多いのは、スクルドの思考についていける数少ない人材の1人が君だからだ、ラマ・ボーガス」
ラマ「そ、そんな。恐縮です」
ラーヘル「だから、君をサポーター隊の隊長として任命する。よって人選の意見も今ここで聞かせてほしい」
そういって、ラーヘルは先ほどと同様にプロファイルを渡す。
ラマ「分かりました。まだまだ若輩者の青二才ではありますが、ご期待にお応えできるよう、全力をもって作戦の達成に励みます!」
ナルーシャ「うむ、大いに期待しているぞ」
ラマがプロファイルに目を通している時、コンコンとノックされる。
ポニーテールのマネージャー「失礼します。紅茶のおかわりはいかがですか?」
ラーヘル「私と彼の分を頼む」
ポニーテールのマネージャー「かしこまりました」
ラマ「ありがとうございます」
ナルーシャ「ああ!そうだ!喜べ。
お前とロウ、ジュリーのVNをあげることが一昨日決まったぞ」
ラマ「おおお!スクルドさん、良かったですね!」
ナルーシャ「スクルドは晴れてVN4の仲間入りだな。これからの活躍についても期待している。よろしく頼むぞ」
ナルーシャはそう言って銀の十字が入った小さな箱を渡した。
軍でいうところ勲章だ。
スクルド「・・・ありがとよ、ナルーシャ」
ナルーシャ「と、こちらからの用件は以上だ。あとで作戦報告書を提出するように」
〜 アマネの自室 〜
アマネ「ん〜〜〜っ!」
大きく伸びをして、ベッドにダイブする。
アマネ(・・・畳に敷いたお布団も恋しいけど、やっぱりベッドの方が私は好きかな)
布団を巻きこみながら、ゴロゴロと転がる。
コンコン
アマネ「は、はーい!」
ノックの音に反射して立ち上がり、小走りでドアに駆け寄る。
ジュリー「やっほ!アマネちゃん!」
アマネ「待ってたよー!ジュリーちゃん!」
訪問してきたジュリーを自室に招く。
ジュリー「お邪魔しま〜すって、いつ見ても凄いわね・・・」
アマネ「まだ全然足りないから、見せるのちょっと恥ずかしいんだけどね・・・」
アマネの部屋には、四方全ての壁に武器が飾ってあった。
棚の上には、軍艦の模型、兵器の取り扱いが記された本などが綺麗に整頓されて並んでいる。
ジュリー「ほんと、武器大好きなんだね〜」
アマネ「ふふん!私より好きな人には、未だかつて会ったことないよっ!」
ジュリー「そりゃいないよ・・・これだけあって、まだ足りないっていうくらいなんだし・・・」
アマネ「お?気になる!?いいよ今日はたくさん紹介しちゃおっ!
まずスクルドさんも愛用しているワルサーP38!
9mmのパラベラム弾を8発装填できて、このサイズっ!
小柄な私が持ってもあんまり違和感ないのっ!軍人さんが持ったら、ちょっと頼りなさそうに見えちゃうねっ!
でもね?この拳銃が凄いのは」
ジュリー「あっ、さっき売店でお菓子買ってきたよー!一緒に食べよっ?」
アマネ「むー・・・ジュリーちゃんも、少しは知っておいて損はないのに〜」
ジュリー「それはそうだけど・・・訓練の時に勉強した知識もあるし、アマネちゃん1時間くらいは話し続けちゃうじゃない」
アマネ「あの時はすいませんでしたっー!」
ジュリー「あ、最長は2時間50分だったっけ。まぁ、好きな物を語りたくなっちゃう気持ちは分かるけど・・・」
アマネ「すぐにお茶、準備するね!」
ジュリー「うん!」
アマネ「さささっ!こちら粗茶ですが・・・」
ジュリー「ほほぉ、これはこれは。かたじけのうござる」
アマネ「ふふっ、ヤマトにいても滅多に聞かないよ、そんな言葉」
ジュリー「えっ!?ヤマトってこういう言葉を使うサムライって人たちがいるんでしょ?みんな変な頭して、刀持って歩いているって」
アマネ「大昔の話だよ・・・。フランチェってレイピア持って戦争してるでしょ?って言ってるのと一緒」
ジュリー「むむっ、それは面目ない・・・」
アマネ「えっと、その情報は、どこから・・・?」
ジュリー「ウィールが教えてくれたんだけど・・・も、もしかして何か間違ってる?」
アマネ「かたじけない、面目ないは使い方合ってるよ。
でもサムライは歩いてない。多分調子にのった勢いで、本当かどうかわからないことまで教えたんだろうね・・・」
ジュリー「あいつっ!今度会った時覚えてなさいよっ!」
アマネ「ウィールはいっつも何か余計なんだよね〜。私、いっつもおちょくられるし」
ジュリー「あいつとロウの二人は、年上と認めたくないわね!」
アマネ「あれ?ロウさんも?」
ジュリー「運動のことなら相談できるけど、座学はひどいものよ。あと女の子の扱いを全く心得ていないっ!」
アマネ「あー、まぁ、確かに」
ジュリー「ウィールよりかは何倍もマシだからいいけどね〜。でも年上って感じはしないわ」
アマネ「それでいうと、スクルドさんは運動も座学も、女の子の扱いも全部できてるってこと?」
ジュリー「あ、あいつは例外よ・・・。私が小さい時から一緒だし・・・その、もしお兄ちゃんがいたら、こんな感じかなぁって」
アマネ「うーん。私はともかく、ジュリーちゃんがスクルドさんをお兄ちゃんって言うのは、なんかちょっと違和感あるけどね〜」
ジュリー「えっ!?いや、えっと、その・・・あぁ!でもあいつずっと本の虫で、運動は人並み程度よっ!それに、扱いだって普段は雑だしっ!!!」
アマネ「普段は?」
ジュリー「アマネちゃん達が私たちを助けに来てくれた時、私一人だけ先に合流できたじゃない?あの時、あいつは私だけでも逃げろって、自分より私のことを優先してくれたり・・・たり・・・」
アマネ(女の子の扱いの話じゃないよね、これ)
アマネ「でも頼り甲斐はあるから、年上って感じはするよね!」
ジュリー「そう!そうなのっ!」
アマネ「あー、でも頼り甲斐って話なら、ウィールもロウさんもちゃんとあると思うけどなー」
ジュリー「・・・それもそうね!」
アマネ「あ!ちょっと納得いってないでしょ?特にウィール!」
ジュリー「うっ・・・ず、図星です」
アマネ「普段のウィールは、悪戯しては誠意のない謝罪っての繰り返すお馬鹿さんだけど、ちゃんとしないといけない時はちゃんとする、メリハリがあるんだよ〜」
ジュリー「そう言われると、ちょっと分かるかも!」
アマネ「普段が酷いのは、事実だけどねっ!」
ジュリー「・・・アマネちゃんって、ウィールと出会って長いの?」
アマネ「・・・うん」
ジュリー「じゃあ私よりあいつのいいところ、たくさん知っているんだねっ!」
アマネ「・・・うん!スクルドさんのこと、私よりジュリーちゃんの方が詳しいようにねっ!」
ジュリー「っ・・・それは・・・そうだけど」
照れるジュリーの顔を見ながら、一安心する。
アマネ(恋愛っていうのはよくわかんないけど、多分ジュリーちゃんは恋しているんだろうなぁ・・・私でも分かっちゃうくらいだし。)
〜 パツィフィスト本部 副司令室 〜
スクルドとラマは去り、ラーヘルも自身の業務のために戻っていった。
ポニーテールのマネージャー「彼はまだここに来てから、3年でしたよね?」
ナルーシャ「あぁ、腐ってる性格以外は凡人より優れている部分が多い。今後の活躍には目を見張るものがあるぞ。
我々もウカウカしていられないな、イリアス」
ガララッ
シュッ
ボッ
ナルーシャは机の引き出しから葉巻を取り出し、マッチで火を付ける。
イリアス「本当ですね〜。でも、これ以上VNあげると、今より前線に出ることが多くなってしまいます。戦うのに抵抗はありませんが・・・ルーシャの元にいられる時間が減っちゃいます」
ナルーシャ「気持ちは嬉しいが、任務は任務だ」
イリアス「わかってまーすよっ!」
ナルーシャ「・・・今度のシールゥリ計画では個々の戦闘能力がある程度ないと厳しいかもしれん」
イリアス「・・・複数の損失が出ると?」
ナルーシャ「出さないように努めるのが上の役割だろう」
イリアス「はぁ・・・ルーシャは昔からいや〜な役回りばっかりですよね。ほら今だって」
ナルーシャ「うるさいうるさい!誰かが楽できるのは、誰かが苦労しているからだっ!お前みたいに昇進をサッカーボールのように扱ってキャッキャ戯れている奴にだけは、苦労云々言われたくないわ!」
イリアス「パツィフィスト代表のフォワードですよ〜!」
ナルーシャ「じゃあ私はキーパーかぁ〜?さっさとボールを止めて強制的に”球”を蹴らせないようにしたいものだ」
イリアス「いやですねぇ〜。シュートをとめたところで、ゲームセットにはなりませんよ〜!」
ナルーシャ「はぁ・・・・・紅茶おかわりぃ」
イリアス「はぁ〜い!」
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