シーン5 変わったこと
あれから二週間が過ぎた。
ママとパパはアパートの火災で亡くなった。火元はキッチン付近だということがわかったが、火災の原因は未だに分からず終いだ。弟を折檻と称して家を追い出した後の直後であった為、弟は運よく難を逃れた。
私は事情を聴きに来た生活課の警官にスマートフォンを渡し、ウリをやっていた事を白状した。スマートフォンの中には私を買った男たちの連絡先があることを告げた。お陰で私は警察署に行くことになる。
だが、私も鬼じゃない。上客だった男たちの連絡先や通話記録は全て消した。彼らから貰ったものは多いが、返すつもりはない。彼らだって、ひと時の甘い夢を見れたのだ。お互いにWIN-WINだ。
頼れる親戚もいないので弟は施設に行くらしい。一方の私は罪には問われないけど、調書やなんやらで拘束されてしまうようだ。そうなると、鑑別所に行くのかもしれない。
もしかしたら、もう弟と会うことは出来ないかもしれない。そして私はどこにいくのだろうか? それもすらも見当がつかない。
ポケットにはあの砂時計がある。あれからまた砂が落ちたけど、まだ砂はたくさん残っている。
心の中で問う。
ナズ。どこかで見ているかな?
私は頑張るよ。あの砂時計はもう、使わないようにしたいけど……。
警察署へ向かう車の後部座席で瞼を閉じる。もうあの夢は見れないけど、景色は頭の中でずっと残っている。
くるみ色のテーブル。漂うコーヒーの匂い。天井で回転する羽付きの電灯。
でも一つだけ変わったことがある。
窓の外の雨が、止んでいるのだ。
不幸の対価~セイカツ~ 兎ワンコ @usag_oneko
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