21回目のプロポーズ

シュタ・カリーナ

第1話


「好きです! 俺と付き合ってください!」

「ごめんなさい」


 俺はとある一人の女子に告白をする。しかし再び断られる。これで21回目だ。


「いい加減諦めて」

「それは断る」

「はぁ、じゃあね」


 彼女は呆れたようにため息を吐き、この場を後にする。

 彼女は日野朱音さん。学年一の美少女で知られており、成績優秀でテストでは毎回学年のトップ、運動神経も抜群で女子バスケ部で一年生にしてレギュラー入りをする程。そんな彼女は皆んなから好かれている。しかしそれは彼女の面しか見ていないのだろう。

 俺は知っている彼女の本当の姿を。彼女は真面目で努力家で時々おっちょこちょいな所があることを。

 成績を維持するために放課後図書室に残って勉強したり、家では毎日自習をするようにしている。そんな努力をしている彼女が好きだ。

 頭も良くて運動もできるから何でも出来そうって思われてるけど実は料理が苦手なところとか、掃除が苦手で彼女の自室は脱ぎ捨てられた服が放られていたり、家では意外とだらしなかったりする所がある。そんな彼女が好きだ。


 俺の顔はブサイクではない。イケメンかと言われると答えづらいがまあまあ顔は整っている方なのではないだろうか。成績は上位の方に入っているし、男子バスケ部でそれなりには活躍している。忙しい母親と料理の出来ない父親に代わって料理をしているから料理も上手い。正直俺は悪くはない男だと思う。

 それなのにどうして……。


「どうして断るんだ!」

「……」


 彼女は歩みを止める。


「俺はお前が好きだ! 努力家な所もおっちょこちょいな所も全部好きだ!」


 今までの告白で言ってきた想いをまた叫ぶ。


「それなのにどうして断るんだ。嫌いなら嫌いと言ってくれ」


 彼女はただ静かに立っている。よく見ると体がプルプルと震えている。しつこいから怒らせてしまったのだろうか。もう俺は彼女を諦めた方がいいのだろうか。

 そんな時、彼女はゆっくりとこちらに振り向いて叫ぶ。


「何でってそんなの…………私はあなたのでいたいのよ!」

「……」

「あなたの彼女になりたいわけじゃない、あなたの妹になりたかったの! だから私のお母さんとあなたのお父さんが出会うようにしたし、そこから結婚まで持っていくようにしたの!」

「お前、そんなことしてたのか……」


 まさかの衝撃発言に驚く。


「だから私にあなたをお兄ちゃんと呼ばせて!」


 俺は初めて彼女の想いを知る。俺は彼女と兄妹になって彼氏彼女の仲にならないようになることを避けるために彼女が俺を「お兄ちゃん」と呼ぶことを禁止させていた。

 だけど彼女は兄弟になることを望んでいたなんて。


「じゃあ兄妹兼カップルっていうのはどうだ? それならお兄ちゃんって呼んでもいいし」

「あなたはそれでもいいの?」

「ああ、俺はお前と付き合えればそれでも……」

「そう、ならよろしくね、お兄ちゃんっ」


 彼女は俺の胸に飛び込んでくる。


 こうして21回目の告白にしてようやく俺は彼女と(兄妹兼だが)カップルになることができたのだった。

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21回目のプロポーズ シュタ・カリーナ @ShutaCarina

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