34章 星屑のリフレイン
133話 みんなには内緒のお誘い
「花菜ちゃん、お迎えの車来たよ」
「はーい」
結花先生の声に呼ばれて、待機していた図書室から玄関に向かう。
「あらー、また花菜ちゃんの浴衣姿見られた。本当に二人が着る物を合わせて揃うと姉妹みたいね」
「今日の私は結花先生の着せかえ人形役です」
先生たちが待っている玄関で、私は忘れ物がないか確かめながら答える。
「それにしちゃ、着替えるのも早かったじゃない?」
「のんびりしていたら着崩れしちゃうからですよ」
「まぁまぁ。せっかくのお誘いなんだから、楽しんできてね。
茜音先生に見送られて、門の外に停められていた車に乗り込む。
「やっぱり、女性陣が浴衣で揃うと違いますね」
「そんなのを教室で言ったら問題発言になっちゃうけどな」
陽人先生と啓太さんは、私たちの家で着替えて、車をこちらに持ってきてくれたんだ。
「車に乗るから、帯をきっちり締めてないの。むこうで調整するから。安全運転で頼むわよ?」
時計はまだお昼を少しすぎた頃。四人で向かうのは横須賀だって。
「結花先生、本当に私たちも一緒でいいんですか?」
「うん。私が言い出したんだし。菜都実さんも花菜ちゃんに会いたいって言ってくれたから、ぜひ四人でって話になってね」
あの大騒ぎだった花火大会が終わって、幸い啓太さんに異常も見られずに安心した頃、結花先生から「他の子たちには内緒ね」と、今日の計画を打ち明けられた。
天候の関係で延期になってしまった横須賀の水上花火大会に私たち二人も招待したいって。
その日は休日だから、みんなお仕事もお休み。
今日は朝からお天気も味方してくれて、無事に実行されると情報も入って、それからは結花先生にこの間の浴衣を着付けてもらい今に至る。
「菜都実さんって、茜音先生のお友達でしたっけ?」
「そう。茜音先生も菜都実さんも私を助けてくれた大切な人たち。本当にいい人よ。私も保証しちゃう」
「そうなんですね」
「ねぇ花菜ちゃん。一つお願いしてもいい?」
「なんでしょう?」
「今日、この時間だけでいいわ。私のことを先生ではなくて、結花って呼び捨ててくれないかしら?」
「えっ?」
さすがに突然の呼び捨ては失礼すぎる……。歳が離れているというより、これだけの恩人を同級生と同じとはいかないよ……。
「……呼び捨てではあまりにも不自然なので、『結花さん』でもいいですか?」
「ありがとう、花菜ちゃん……」
顔ではいつもどおりに微笑んでくれた結花さん。
でも、普段よりどこか緊張しているように感じてしまったのは、私の思い過ごしなのかと気になっていた……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます