第7話 ファベーラ
食事を
クリスティナさんの運転で郊外の刑務所へ向かった。街灯の寂しい道を行くと、電線に何かがぶら下がっているのが見える。目を凝らして見れば古い靴だ。
「クスリが入荷してるよって
軽く云うクリスティナさんには特段の恐れも忌避の表情も窺えない。
だがこの辺りを普通の人間が歩くのは昼夜に拘らずお勧めしない、と彼女は云った。
その一方で、貧民街を支配する麻薬組織の
暗い路地を歩く若者三人連れ。何を見ているのか、ぐったりと道端に座り込んで目だけ光らせる男。裸足でサッカーに興じる子供たち。彼らの手足は一様に細い。
四辻を二つ過ぎるうちまた靴が現れた。月明りも乏しい夜空に、靴は吊られた晒し首のように不気味に揺れていた。
そんな貧民街を幾つか通り過ぎた末に辿り着いた刑務所。高い壁と、その上を冷たく飾る鉄条網が外界との交流を拒絶している。
夜間、刑務所に入る全ての門は
クリスティナさんは正門の前を速度を落とさず通り過ぎ、その先に並ぶ民家の一つに車を入れた。人が住んでいるとは思えない荒れ様だ。家の壁には落書き。地面にはシュラスコでもした跡らしき黒焦げた炭が転がっている。
「早く済ませてくださいね」とクリスティナさんは云った。
こんな場所に独り残されるのはそれは心細いだろう。
私は
さあ、仕事だ。
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