第6話 ポルキロ

 ブラジルと日本とは時差十二時間。きれいに夜昼が逆転している。時差呆けで苦しい頭を休めるために、夕方までホテルで休ませてもらった。ぐっすり寝た後ロビーに降りると、迎えに来てくれたクリスティナさんと夕食へ。仕事前の腹拵えだ。

 とは云え昼食を食べ過ぎたので、軽くでい。その希望に沿って案内してくれたのは、「ポルキロ」。なんでも取り放題、重量単位で課金される仕組みのレストランだ。


 まずはサラダ。レタス、ルッコラ、トマトにチーズ、オニオン、白アスパラ、生ハムと目につくものを入れていくとたちまち皿が一杯になる。隣は海老と茸のリゾットに、ビーフストロガノフ。寿司コーナーにはサーモンにマグロ、それによく分からない白身魚が並んでいるが、この辺りは今回はスルー。それより、見たことのない妙な巻き寿司を片端から取っていく。

 奥のシュラスココーナーは凄まじい行列だったので、後ろ髪を強く引かれながらもパス。代わりに、チーズの乗ったミラネーゼ(洋風豚カツ)と、酢豚。

 見事に無国籍料理だ。


「軽く?」

 クリスティナさんが呆れた顔をするが、許してほしい。旅の食事は一期一会。つい過ごしまう。

 秤の上にトレイを載せると金額が示される。クリスティナさんの倍ほどの金額が表れた。


 この後仕事があるのでアルコールは避け、注文した飲料はガラナ。

 アマゾンに自生していた植物ガラナの種子からとったエキスは、先住民が薬用・滋養強壮に愛用していたものだ。それを炭酸飲料に転用して、今や世界中で飲まれているが、なかでも発祥の地ブラジルではコーラに並ぶ人気飲料となっている。

 味は表現し難い。コーラに近いか。独特の苦みを甘味料で押さえつけたような味。



 さて、問題の巻き寿司である。

 まずは一個目。サーモンの横に、白っぽい何か……クリームチーズだ。これは有りなのか。

 チーズと海苔と醤油の組み合わせはいい。其処にサーモンを足すのは……微妙だが、脂がチーズとご飯の仲を取り持つのは悪くない気がする。私は有りだと思った。

 次に、手に取らずにいられなかったのは、どう見ても苺と、恐らくチョコレートだ。ビターチョコであることを祈る……が、恐れていた通りに甘い。有りか無しかは他の人の判断に任せよう。

 続いてマグロに白い何か……やはりクリームチーズだ。

 次、白と赤。白は勿論クリームチーズ。赤は、マグロではないなと思って口にすれば、甘い。グァバですよ、それ。とクリスティナさん。

 最後、白い……クリームチーズと、黄色いのはマンゴーだ。


 畏るべし、ブラジルの巻き寿司。


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