21回目の結婚記念日
三枝 優
21年目の結婚記念日
ある国のある街に青年と女の人がいました。
ふたりは子供のときから仲良しでした。
一緒に幼稚園に通って。
一緒に小学校に通って。
一緒に中学校に通って。
一緒に高校に通って。
一緒に大学には通えなかったけど、いつも一緒にいました。
そして青年と女の人は、愛し合い結婚しました。
青年はあまりにうれしくて言いました。
「僕は君と結婚できて、とても幸せだよ。
この幸せを忘れないように、毎年結婚記念日のお祝いをしよう!」
女の人も言いました。
「私も、今日はとっても幸せなの。
いいわね、毎年お祝いしましょう!」
そうして、ふたりは毎年結婚記念日をお祝いすることにしました。
1年目は紙婚式でした。
ふたりは、お互いに愛の言葉を書いた手紙を書いて読みあいました。
2年目は綿婚式でした。
ふたりは、おそろいのパジャマを買ってお祝いしました。
3年目は革婚式でした
ふたりはおさいふを買って贈りあい、お祝いしました。
4年目は花婚式でした。
ふたりは、花束と花びんを買っておうちに飾りました。
5年目は木婚式でした。
ふたりは、おそろいのおはしを買ってお祝いしました。
6年目は鉄婚式でした。
ふたりは、おそろいのキーホルダーを買ってお祝いしました。
7年目は銅婚式でした。
ふたりは、おそろいの銅のカップを買ってお祝いしました。
8年目はゴム婚式だそうでした。
ふたりは、おそろいの長靴を買いました。
雨の日、ひさしぶりに一緒に水たまりにバッシャっと入って笑いあいました。
9年目は陶器婚式でした。
ふたりは、おそろいのお茶碗を買ってお祝いしました。
10年目は錫(すず)婚式でした。
ふたりは、おそろいのすずの食器を買いました。
11年目は鋼鉄(こうてつ)婚式でした。
ふたりは悩んだ末に、鉄製の傘立てを買いました。
かわいい、ねこのあしあとが付いた傘立てでした。
12年目は絹婚式でした。
ふたりは、ネクタイとストールを贈りあいました。
お互いに、にあっていると言ってほめあいました。
13年目はレース婚式でした。
おそろいの、レースのついたハンカチを買ってお祝いしました。
14年目は象牙婚式でした。
でも、どこでも象牙は買えませんでした。
仕方がないので、白い石のついたおそろいのブレスレットを贈りあいました。
15年目は水晶婚式でした。
お互いに、水晶でできたちいさな置物を贈りあいました。
おしごとをしている机にかざって、毎日眺めました。
16年目は黄玉(トパーズ)婚式でした。
小さなトパーズのついたネックレスを買いました。
でも、とても高かったので、奥さんの分だけ買うことにしたのです。
「来年はあなたのプレゼントを買いましょう」
奥さんはそう言いました。
17年目は紫玉(アメジスト)婚式でした。
小さなアメジストのついた、ネクタイピンを買いました。
今年は旦那さんの分だけです。
「ありがとう、とてもうれしいよ」
旦那さんは、そういいました。
18年目は石榴(ガーネット)婚式でした。
ふたりは、小さなガーネットがついたおそろいのネックレスを買ってお祝いしました。
19年目は風信子(ひやしんす)婚式でした。
ふたりは、ヒヤシンスの花の球根を買って庭に植えました。
それから、毎年春になるときれいなヒヤシンスが咲きました。
20年目は磁器婚式でした。
ふたりは、おそろいの白いティーカップを買ってお祝いしました。
21年目は・・・
21年目の結婚式の記念日には名前がなかったのです。
旦那さんは、結婚記念日に言いました。
「結婚してくれてありがとう。毎日幸せだよ」
奥さんも言いました。
「結婚してくれてありがとう。毎日幸せだわ」
21年目の結婚記念日は、お互いに変わらぬ愛の言葉を贈りあってお祝いしました。
おしまい
21回目の結婚記念日 三枝 優 @7487sakuya
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