ある男の復活の日々
タカナシ
不毛の大地、囚われの男。
もう、ここに閉じ込められて何日になるだろう。
深い縦穴に閉じ込められてからどれくらいの月日が経っただろうか。
オレは天から微かに見える光を眺める。
ここでの生活はどこからか出される僅かな食糧を糧になんとか日々を生き抜いている状態だ。
オレもかつてはこの上で日の光に照らされ、黒々としていた。遊び回っていた頃には小麦色で、未来のことなんてこれっぽっちも気にしていなかった。
「良い時代だったな。いや、それを取り戻すんだ!」
かつての栄光を思い出し、気合を入れる。
「さて、今日も挑戦してみますか」
オレは食事をぱくっと一口で食べ終えると、物足りなさを感じながら穴の壁に手を掛ける。
昔に比べ随分と貧弱になってしまったが、そんなことは言い訳に出来ない。
「よいしょっ!!」
わずかなとっかかりに手を、足を。
なんとか壁を登って行くが……。
「ぐっ、うぅぅ。ダメだっ!!」
半分くらい登った所で力尽き、そのまま下へと落ちていく。
「もっと食事があれば、頑張れそうなんだが……、いや、この状況で食糧が提供されるだけでも良しとしなくちゃだな」
かれこれ、すでに10回は挑戦しているが、一向に登れる気配もなく、ただただ体力を消費するだけだった。
そんなある日、変化が訪れた。
それは食糧がいままでよりも多めに現れたのだ!
「いったい、これは?」
罠かと勘ぐりつつも口へと運ぶ。
特に問題はなさそうであった。
純粋に増えた食糧に喜びつつ、オレは11回目の挑戦を行う。
まだ全盛期にはほど遠いボディだし、たった1日栄養が多く摂れた程度では変わりは無かったがそれでも希望が見えた分、心なしか落ちたときのダメージは少なかった。
それから何日か多くの食糧が現れた。
オレの挑戦が20回目を迎えると、豊富な栄養のおかげか、いつの間にかオレはかつての姿を取り戻していた。
「これなら行けるか?」
20回目の挑戦、腕には今までにない程、力が入りガシガシと登って行けた。
しかし、あと少しというところで手が滑り、下まで真っ逆さまに落ちた。
「ぐはっ!!」
落下の痛みで、悲痛としか表現できないうめき声をあげる。
「くっ、無理なのか、オレじゃあ。もう地上には出れないのか……」
オレは苦悩していると、そのとき、天上から、
「悩まないで。きっとあなたなら生き残れるはず」
キレイな女性の声が響き渡る。
「誰だ? この声は……、まさかカミ様か?」
誰かなんてどうでもいいが、その声にはげまされたのは事実で、オレは次の食糧がくるまでじっと耐えた。
そして、食糧を受け取ると一気に食べ体に力をいれる。
「うぉおおおおっ!! 今度こそ! 今度こそ外へ出て見せる!!」
オレの願いは通じ、見事に頭頂を果たす。
そこから、久々に見た太陽、体に触れる風になつかしさを覚える。
しかし、周囲は不毛の地でオレ以外何も見当たらない。
「そうか、そういう事だったのか……。だが、オレは出て来れたんだ。ここから復活していけばいい!! 皆だって復活できるはずだ! オレが最初のいっぽなだけだっ!!」
そう21回目に
皆だって生えてこれるはずなんだ!!
ある男の復活の日々 タカナシ @takanashi30
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