進撃チームと援軍チーム
亜未田さん、幕画ふぃんさん。
二人の作家に加え、ビッグスリーがチームに入ったことが大きかった。
僕たちは快進撃を繰り広げた。進むべき道はちありやさんと綺嬋さんが示してくれた。
「第一制御室は破られたが制御室は後四つある! 第二から第五までの内どれか一つを死守できれば基地の最低限の機能は維持できる!」
「基地の内部はランダムで道が変わるけれど、こっちには私とちありやがいるわね!」
「基地最深部、エネルギーコア付近。緊急脱出ポット乗り込み口の前。そこに第五制御室がある!」
「基地を守るためにはエネルギーコアも守る必要があるわよ!」
「必然的にエネルギーコアの近くにある第五制御室を押さえることになる。これからそこへ向かう! アンジェラ!」
〈最短ルートを表示します……。あっ、これってもしかして!〉
「どうした? アンジェラ!」
〈第五制御室へ向かうまでのルートが組み上がりました! 偶然ですが、順路に第二から第四制御室に接近する箇所が複数!〉
基地内にうようよいる『模倣型エディター』を片っ端から片付けながら、のえるさんが叫ぶ。
「じゃあ、道すがらそれぞれの制御室を押さえていけば勝てる見込みがあるんですね!」
「『イビルスター』のメンバーがいるシェルターは?」
ちありやさんの問いにアンジェラがスマートに応じる。
〈第五制御室までの道のりの途中に通信スポットがあります! そこから連絡を取れるかと!〉
「なるほど、抜かりない」
〈ですが、ひとつ残念なお報せも……〉
「何だ? アンジェラ」
〈基地外部にも『エディター』の存在を確認しています。おそらくですが、飛行能力のある作品を書いた作家の
「基地の内部と外部、双方を押さえながら第五制御室へ向かう必要があるわね?」
デザートイーグルの発砲を続けながら、綺嬋さん。
「これはちょっと本気を出す必要があるわね! 業務を終わらせるわよ!」
いきなり、綺嬋さんが構える銃を変えた。ゲームのようにパッと背中に手を回し取り出してきたのは……長い銃身、かつ連射できる弾倉を持ち、複数のパーツを装着できるレールを備えた……アサルトライフル?
「
「この人、ことあるごとに退勤、残業ネタを挟むの?」
加藤さんが『殴り聖女』で『エディター』を討伐しながら叫ぶ。
「
一応、男の子代表として僕が答える。
「
「ジョークの解説ほど寒いものはないわよ!」
などと叫びながら、綺嬋さんが薬莢をばら撒き、掃射する。
「火力で押すわね! この銃も私の手足わよ!」
「何だかんだ、道具を自分の手足のように使えるって汎用性が高くて強いよな……」
眼鏡のつるを撫でながら、飯田さん。
「僕ももっと使いやすい作品書けばよかったか」
「好きなもの書くのが一番だろう」
日諸さんがちありやロボで敵を殲滅しながら、スピーカー越しにつぶやく。
「創作は楽しんだもの勝ちだ」
「一番近い制御室まで後どれくらい?」
すずめさんの質問にアンジェラが答える。
〈今の速度で近づければ十分ほどで到着します!〉
のえるさんが応じる。
「よし、このまま『エディター』どもを狩りながらとにかく前へ……!」
「……一点、気になることがある」
四本あるちありやロボの腕の内、二本を使って戦いながら、ちありやさん。
「さっきの『エディター』だ。亜未田さんと幕画ふぃんさんとやらが戦闘していた、ミミズを操る作家の
「あいつが、何か?」
不可視の刃で敵を切り裂きながら、亜未田さんが訊ねる。
「第一制御室が敵の手に落ちる場面。金髪の女が殺した作家の中に、『ミミズに食われていた作家』がいたと思うのだが……」
その言葉にぴくりと、綺嬋さんが反応する。
「まさか……でもそうとしか考えられないわね?」
「ああ。さっき亜未田さんたちを圧倒していた
「どういうことだ?」飯田さんの問いに、日諸さんがスピーカー越しに返す。
「俺たちは先回りされてるってことか?」
「いや、まだ分からん。亜未田さんと幕画ふぃんさんとやらに、あの
「教えるも何もない」
幕画ふぃんさんが漆黒の剣を振るいながら答える。
「遺跡群で、あの妙なビームを浴びて気絶したらさっきの部屋にいた。どこかで戦っているような音が聞こえたから、一旦大人しくして状況を見ようと思ったら、女が来た」
「女ってのは……」
金髪? と飯田さんが訊ねると、幕画ふぃんさんは頷いた。
「私たちの姿を見てから慎ましく笑うと、瓶を取り出して液体を垂らした。その液体がさっきのミミズ作家になった」
亜未田さんがアクロバットからの着地を決めながら、淡々と続く。
「実は、あの女が敵だってことに気づいたのは液体が作家になるのを見た頃になってのことで、最初は作家の誰かかと思った」
「まぁ、確かに『寄生型』と『暴走型』と違って、人の形をした『エディター』ではありましたし……」
と、僕が相槌を打つとすずめさんが返してきた。
「人型じゃないアカウントの作家もいるよ。見た目だけで相手を判断しちゃいけない」
でもとにかく、とすずめさんが状況を整理する。
「先回りされてるっぽいのね?」
「ああ。こっちの行く先に『エディター』を据えている」
ちありやさんが頷くと綺嬋さんが続いてきた。
「もしかしたら今相手してる軍勢も敵が配置したものかもしれないってことわね?」
「ブレーンがいくつあるのか知らないが、もしかしたら敵の手下による配置の可能性もあるな、この数」
のえるさんが剣と魔法で敵を倒しながら頷く。すると唐突に、ちありやロボがサイレンのような音を立てた。
すぐにアンジェラの声が続いた。
〈警告。敵が基地外部より侵入を試みています〉
目の前の敵を片しながらちありやさんが怒鳴り返す。
「どんな奴だ?」
〈特定不能です。ここからだと距離が遠くて……! 基地外部のカメラも使用不可能ですし……〉
「とにかく空を飛んでる敵なんだな?」
〈それは間違いなさそうです!〉
するとちありやさんが一瞬考え込むように黙ってから、続けた。
「よし。私から作戦を提案する」
「どんな?」敵をぶん殴りながら、加藤さん。
「二手に分かれよう」
ちありやさんの低くて渋みのある声が鼓膜をくすぐる。
「まず、助っ人を呼ぶ」
するとちありやロボの頭部の一部分が点滅した。通信しているのだろうか。
「その助っ人に外からの敵を始末させる。私たちの内の何人かが、その助っ人の援護に出よう。ついでにシェルターに立ち寄って援軍を引き連れてきて欲しい」
そして残りのチームが……と、ちありやさんが前方を示す。
「敵を殲滅しながら第五制御室へ向かう。途中にある通信スポットでシェルターと連絡する。そこで状況を確認し合ってから、共に基地深部へ。金髪女の手に落ちる前に基地を奪還する!」
「二手に分かれるってことだよね? はい! 私から提案!」加藤さん、挙手。
「『ノラ』ビッグスリーは分かれた方がいいと思う! ある程度分散して対応させた方がいい! 私、その気になれば『椅子』で防御も攻撃もできるから……!」
のえるさんが頷く。
「よし、じゃあ加藤さんは単騎、俺とすずめさんがペアで!」
「第五制御室への進撃チームに太朗くん、入って!」
すずめさんが指示を飛ばす。
「そのチームが一番敵と遭遇する率が高いはず!
「連絡できる作家はそれぞれのチームにいた方がいい。通信スポットに辿り着く前にも情報のやり取りはあった方がいいだろう?」飯田さんがすずめさんに返す。
「進撃チームは僕がいるとして、援軍チームは?」
「必然、すずめさんかちありやさんか、ですよね」
「ちありやは基地内部のルートを把握できるから進撃チームにいた方がいいわよ!」
「じゃあちありやさんが進撃チームのリーダーで、飯田さんが通信係。飯田さんと通信できるメンバー、となるとやっぱりすずめさんですか? のえるさんもすずめさんとセットになるので、すずめさんとのえるさんは援軍チームになるわけですね。加藤さんは進撃チーム」
僕は話をまとめながら、訊ねる。
「僕はどっちに?」
「じゃあ、物書きボーイは……」
「物書きくんは援軍チームに来て!」
飯田さんの言葉を待たず、すずめさん。
「進撃チームと違って目的が漠然としている援軍チームは想定外の事態が多い! 『ペン』で柔軟な対応ができる君がいた方がいい」
「じゃあ、何となく決まりましたね?」
そういうわけで、チーム編成。
進撃チーム。
ちありや、日諸畔、飯田太朗、加藤伊織、亜未田久志、幕画ふぃん
援軍チーム。
綺嬋、陽澄すずめ、六畳のえる、それと僕。
「そう言えば、援軍チームに入ることになる『助っ人』さんって……?」
僕が訊くと、ちありやロボが答えた。
「ちょうど通信が入った」
渋い声が続く。
「スキマ参魚が来てくれる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます