第25話 戦いはこれからだ!

 「…キ、キキキキス!?」


 「ああ、キスだ!」


 「あわわわわ…矢崎君はいつも亜里沙を驚かせましゅ…!」


 俺の提案を聞いた水瀬さんの『リア充タイマー』の数値が上昇する。あっという間に『24』となった。


 「ま、まあ水瀬さんが嫌じゃなかったらだけど」


 ここに来て俺も恥ずかしくなってくる。


 そりゃ当然だ。


 でも、水瀬さんを救えるチャンスはこの1回だけ。だから引き下がるわけにはいかない。 


 「…1つ聞いてもいいですか?」


 「なんでも聞いてくれ」


 あわあわしていた水瀬さんが呼吸を落ち着かせ、俺に問いかけてくる。


 「亜里沙とキスするのは…」


 投げかけられるのは、少し予想とは違う言葉。




 「呪いを解くためですか?それとも、亜里沙のことが…好きだからですか?」


 答えは、1つしかない。




 「君のことが…好きだからだよ」


 その言葉を聞いた水瀬さんは微笑んだ。顔を真っ赤にしてるけど、もうあわあわとはしていない。


 「やっぱり、矢崎君には敵いませんね」

 

 しばらくの間、俺と水瀬さんは見つめあった。『リア充タイマー』が『60』となり、『70』となり、さらに増えていっても、構いやしない。




 「亜里沙も、矢崎君のことが好きです。大好き」


 初めて水瀬さんの本当の姿を知った時と同じ、柔らかい感触。




 学校の屋上で身を寄せ合い、俺と水瀬さんはキスをした。



 ****


  

 『リア充タイマー』に変化が見られた。


 数値が『100』を突破したにも関わらず、まだ増えていく。


 200、300、400。


 やがて『999』に達すると、『リア充タイマー』が音声を発する。


 「ジッケン、シュウリョウ」


 『リア充タイマー』は水瀬さんの頭上から離れていった。みるみる空中へと飛んでいきー、




 そして、爆発。


 水瀬さんを苦しめていた呪いはなくなり、解放された。


 同じタイミングで、俺と水瀬さんは互いの唇を離す。心臓がドキドキとしてるけど、悪くない感覚だ。


 むしろ、とても幸せで心地よい。


 ぼーっとした表情を浮かべている水瀬さんも、同じ気持ちだろう。

 しばらく見つめあっていたが、やがて彼女がゆっくを口を開いた。


 「…どうして、キスで呪いが解けると思ったんですか?」


 「簡単なことさ」


 『リア充タイマー』が去っていった空は、とても青かった。肩を寄せ合い、彼女とそれを眺める。


 「ラブコメのヒロインにかけられた呪いなら、水瀬さんがヒロインを卒業すれば解ける。つまり、誰かと恋愛を成就させること」


 「初めのように、ただ偶然キスをするだけじゃダメだったんですね」


 「ああ。役目を終えた『リア充タイマー』は、文字通り爆発したってわけだ。でも…」


 「でも…?」


 「呪いをかけた神様的存在が現れないのが意外だったな。現れたら君の代わりにとっちめてやったのに」


 「ふふふ…いいんですよ。もう、亜里沙は怒ってません」

 

 水瀬さんがこちらに寄りかかり、顔を寄せてくる。


 「そのかわり、矢崎くんに出会えましたから」


 信頼の表情を寄せながら、軽くウィンクした。

 可愛い。


 「水瀬さん…その…」


 「はい。いいですよ…」


 水瀬さんが瞳をゆっくりと閉じる。

 魅惑的な唇が目の前にあることに気づき、改めてドギマギした。


 俺は、再び水瀬さんとキスをしようとしてー、




 「矢崎くん!」

 「倫太郎!」


 乱入者に邪魔された。



 ****



 「どわあああああ!?」


 「赤月さんと桃倉さん!?あわわわ…」


 完全な恋人モードに入っていた俺たちは慌てて距離を取る。 


 「おっと、お楽しみ中だったか。すまない倫太郎」


 「…ちょっと羨ましいなー」


 「どうしたんだ2人とも!協力してくれるのはありがたいけど、結果を報告するまでは待つって…」


 「それなんだが…」


 「あたしらも…」


 2人は困ったような表情を浮かべて、頭上を指さす。


 そこにはー、




 ハート型のタイマーが浮かんでいた。


 「義人と桃蔵さんに『リア充タイマー』が!?」


 「いや。なんか別の条件があるっぽい。あたしさっき告白されたけど何も変わらなかったし」


 「うん。なんか別っぽいよ倫太郎。僕もさっき女友達に遊びに誘われたけど何もなかった」


 「一難去ってまた一難かよ!!!てかお前らリア充かよ!!!」


 その時、LIMEに新たな着信が来た。

 

 見てみるとー、




 ーお兄ちゃん?なんか変なタイマーが頭上に浮かんでるっぽいー。


 妹の明里もであった。

 一難去って、次は三難ということらしい。



 ****



 「えーい、みんなまとめてかかってこい!俺が呪いを解いてやる!」


 「「よろしくお願いします!」」

 

 どうやら、俺はもうしばらく頑張らないといけないらしい。

 でも、もちろん協力するつもりだ。


 2人とも、俺の大切な友達だし。


 「水臭いですよ、矢崎くん。亜里沙も一緒に手伝わせてください」


 「いいの?」


 「ええ。亜里沙と一緒なら、きっとみんなの呪いを解くことができます」


 「…そうだね。きっとそうだ!」


 水瀬さんと手を繋ぎ、俺は義人と桃倉さんの下へと向かう。




 俺が真のリア充になるための戦いは、これからだ!





 あとがき


 最後まで読んでいただきありがとうございます!


 表紙と挿絵を追加した完全版を小説×イラスト投稿サイトたいあっぷにて公開しておりますので、よかったらそちらものぞいてみてください。


 水瀬さんはリア充ポイント100で爆発する!?

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水瀬さんはリア充ポイント100で爆発する!? ゴールドユウスカイ @sundav0210

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