実はモンスターでした

向日葵椎

独白

 私はある小説を小説投稿サイトにて公開した。

 ジャンルはノンフィクション。それは私が人間ではないことについての独白から始まる。ノンフィクションとは実話のことである。実話が現実離れした内容の場合、読者から、あるいは小説を書く仲間たちからどのような反応があるのだろうか、という疑問があったが、それはいずれ明らかになるだろう。

 そして公開からすぐに読者からコメントが来た。


『面白いホラーコメディですね!』


 違う! ホラーじゃない! あとコメディでもない!……いや、ちょっとだけ笑える部分はあったかもしれない。私は「私のようなモンスターが異世界ファンタジー作品でモンスターを書いたときにありがちなこと」についても触れていた。そこでは「モンスターのセリフが無駄に長くなりがち」「モンスターが無駄に哀愁を出しがち」「モンスターが無駄にリアル」などのあるあるを挙げ、その理由について解説した。ざっくり言うと、私がモンスターだからその辺りにはこだわりがあるせいだ。ただその辺りで客観的にならないと作品の面白さやバランスが危うくなってしまうから気を付けないとね、テヘッ☆、というモンスター級のユーモアを炸裂させていた。

 仲間からもコメントが来る。


『ジャンル間違えてへん?』


 ノンフィクションだよ! 合ってるよ! どうやら実話だと思われていないらしい。うーん、おかしいな。このコメントをくれた仲間の〈深紅の緑茶〉とのエピソードも多少はボヤかしてはいたものの登場していたはずだ。それは「私のようなモンスターが異世界ファンタジーを読むときはモンスター側に感情移入してしまいがち」のところで触れている。好きな異世界ファンタジー小説は「モンスターがただの敵として終わらない」もので、それを書く仲間――〈深紅の緑茶〉のことだ――に「今回のモンスターも最高だった!」と、展開や主人公の活躍をスルーした内容のコメントを送ってしまう、というエピソードがあるのだ。そのことについて〈深紅の緑茶〉と話し合ったことはないけれど、たまに「私のモンスター」についてもコメントをくれるので、もしかしたらこだわりのある部分なのかもしれない。実は〈深紅の緑茶〉もモンスター仲間だったりして?


 ――あ、「いいね」がついてる。

 ジャンル間違いの指摘だけかと思ったけれど、〈深紅の緑茶〉から「いいね」があったので、一通り読んでくれたらしい。〈深紅の緑茶〉だけじゃない。さっきのホラーコメディだとコメントをくれた読者からも「いいね」があった。実話だと信じてはもらえていないようだけど、面白くはあったようだ。不思議なことに、そのほかの読者も「私がモンスターであること」を問題視していない。低評価だとしても、それは面白くないとか合わないとかいう理由で、私がモンスターだからではない。実のところもうちょっと「な、なんだって!? モンスターが小説を書いていたのか!」みたいな衝撃を期待してた部分はあるけれど、それはテイストとか技量の問題かもしれない。だけど意外なところでうれしい気づきもあったし、それはもういい。


 モンスターとして思う。書くことが自由であるように、誰が書くのも自由だ。モンスターであればモンスターなりのこだわりを持って書くと、それを見ていてくれる人もいる。それは相手もモンスターなのかもしれないけれど、私も読者も仲間たちも、つまり人もモンスターも、書く人も読む人も、それよりもっと大事なことを知っているように思えてやまない。

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