俺が見た悪夢の話

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俺が見た悪夢の話

目の前には鉄階段がある。ビルの外にある非常階段のような階段だ。鉄階段を登ると"FRONT"と店名の刻まれた木の扉があった。そこはBARのようで、扉の隣にあるOPENのネオンサインの看板が怪しげに光っていた。

扉を開けるとバーテンダーが1人立っていた。客は誰もいない。




見ない顔だ、初めてのお客さんかな?




そんなことを言われる。流れるようにバーテンダーは黒い小さな小袋を俺の前に差し出してきた。パッケージにはBADDREAMという白い文字と禍々しいドクロが描かれている。




あなたは見たところ疲れている、それを使ってみなさい。10秒もしないうちに身体はリラックスしていくから




多分違法なドラッグだった。実際、小袋を開けると色のついたラムネのような錠剤が4つ入っている。バーテンダーは説明を続けた。




リラックス効果によりどんどん眠くなっていく。それは今まで経験したことのない快感になるだろう。しかしこのドラッグは使用後、必ず酷い悪夢を見ることになるんだ。それが名前の由来なんだよ。




そんなことを言われて使うやつがいるのかなどと思う反面、どのくらいの快感なのか、そしてどんな悪夢を見ることになるのか気になっていた。

俺はバーテンダーのいるカウンターから離れ、店内のソファに腰掛けた。そこで水色の錠剤を1粒飲み込んだ。その時の感覚は現実で起きたことのように鮮明に覚えている。



鼻から吸った息が脳のシワ1本1本にスッーと入り込んでいく感覚だ。頭が軽くなったというか、空っぽになっていくという表現が正しいだろう。そして俺はそのまま眠ってしまった。



気がつくと店の中にいたはずがいつの間にか外にいた。もう一度中に入ろうとするが鍵が掛かっているのかびくともしない。OPENのネオンサインも消えていた。




帰ろう…。




そんなこと思いながら歩いた俺はある違和感に気づいた。




何だこれ…?




俺の履いている靴の裏にびっしりと画鋲が針が床の方に向いてくっついていた。まるでスパイクのようだった。

疑問に思いながら階段に向かうと、俺はギョッとした。階段1段1段が布のようなものがグルグル巻かれた肉塊でできている。

1段ごとに布の柄、そして肉塊についている目や鼻、口の位置も違うのである。目の前にある理解し難いソレはグチョグチョとうごめいていた。

そしてなぜか布1枚1枚に見覚えがあった。少し気味悪かったが画鋲のついた靴で踏んでみた。大量の血が流れ、




あああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!




耳を塞ぎたくなるようなうめき声を上げた。そこで俺は鳥肌が全身に立った。


































これ、母さんの声だ…。



そう。俺がドラッグの作用で見た悪夢は階段の1段1段が家族や友人で出来ていて、そこを画鋲のついた靴で踏んでいくというものだった。

妹、伯母、親友、片思いのクラスメイト、、、。まさにこれ以上ない地獄のような悪夢だった。

耐えきれなくなった俺は階段の手すりを乗り越えそこから飛び降りた。フワッとした感覚が背中全体に感じた。俺はどんどん遠くなっていく肉塊の階段を見ながら落ちていった。そして地面に叩きつけられる寸前に目が覚めた。








あれからあのBARやドラッグの夢は見ていない。もう絶対にあの夢は見たくないが、生涯あと3回は見る事になるんだろうと覚悟している。







だって錠剤はあと3つ残っているから。




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