第三十二話「起死回生の必殺技」
ヒーロー本部地下怪人収容施設。
その窓もなく
「あなたがたは
それは一瞬の
施設の電源が落ちると同時に部屋の扉が
妹の
とうの朝霞はこうして
そろいのツナギを着た、地下収容施設の
「こんなことをして、どうなるかわかっているのですか」
「それはこっちのセリフなんだよなあ、
「
「
男は
「あんたが怪人と
「……なんのことを言っているのか理解しかねます」
「とぼけるってわけかい、こいつはいけないなあ。こうなったらもう
そう言うと男は朝霞の
「いいかあ? 俺たちは正義の
まるで正義を
「けけけっ、いまだから言うけどよお。俺たちゃアンタが現役のヒーローだったころから
「どのみちお前はもうおしまいなんだよ鮫島朝霞ァ。もちろんこの地下秘密収容施設のことを
「
「いまからハメるんだよ!」
バンッ!
という大きな音と共に、部屋の扉が勢いよく開かれた。
「ひひっ、なんだお前も
「なんなら三人同時ってのも悪くねえなあ。あのクールな朝霞補佐官がどんな声で泣き叫ぶのか見ものだぜ。なんならデスグリーンが
その“
「いいや、俺は空気が読めないらしいからな!
「はあ? なに言ってんだ?」
男の周囲に
「教えてやろう! 俺は今まさに
………………。
…………。
……。
警報が鳴り響く地下施設の廊下。
大貫はぐるぐる巻きに縛られた鮫島冴夜――サメっちに銃を突きつけた。
「この銃は特別製なんだ。怪人の頑丈な
サメっちが泣きそうな顔で林太郎を見つめる。
林太郎は
「大貫司令官、あんたは
「あっそ。んじゃとりあえず一発撃ってみよっか」
一度撃つと言えば、周囲が
使える人間でも
林太郎自身、そんな大貫の性格をよく知っていた。
「ま……待てっ!」
「おんやあ? どうしたんだい? こいつには人質としての価値なんてないみたいな
「まあ落ち着いてくださいよ大貫司令官。グラビアアイドルの撮影会に
そう思えば思うほど、声が
「悪いけど時間
大貫は銃をサメっちの頭に向けると、
「……わかった。だけどサメっちには手を出すな」
「おっけーおっけー。よしお前たち、
人質を取られ
自分のせいで
「アニキぃ……! ごめんなさいッスぅ……!」
「気にしちゃあいけない。こういうときアニキは
「ア゛ニ゛ギィ゛ィ゛ィ゛……!」
サメっちの顔はもはや涙と鼻水でぐっしゃぐしゃであった。
これで大貫との約束は
「んじゃどっちから先に死ぬ? 僕が決めていい? んーやっぱりザコからかな? さんざん苦しめられたからさあ、デスグリーンにはもっと苦しんでもらいたいんだよね僕」
大貫はそう言うと、手にした銃をサメっちに向けた。
「おい話が違うじゃねえか! 大貫いいぃっ!!!」
「あっはっは、ヒーローが怪人と
サメっちの
大貫はサメっちの
正義と呼ぶにはその殺意はあまりにも軽く、その暴力はあまりにも
「いいかいデスグリーン? 怪人を
「ちくしょうが! 大貫てめぇ! 撃ったら殺すぞ! 絶対に殺してやる!」
「おおー、怖い。怖いねえ。怖いからさっさと始末しちゃおうか」
「あああ……アニキ……アニキぃ……!」
サメっちの目から
自分はただ、最初から極悪怪人デスグリーンを苦しめるためだけに
小さな怪人は思う、なぜ自分はこんなにも弱いのだろうと。
姉に会えたからと、
あまつさえ姉ともども
三年前、姉の目の前で怪人として
自分はずっと弱いままだ。
だが。
そんな弱い自分だけにしかできない、この場を切り抜ける方法があるとしたら――。
「待ってほしいッス! ……
「……だそうだよ? 聞いてあげなよ、
「………………ッス」
サメっちは林太郎に向き直ると、
「短い間だったッスけど、サメっちアニキにいっぱい
「サメっち……」
相手に気持ちを伝えるというのは、どうしてこんなに難しいのだろうと。
「
「おいサメっち、待つんだ。アニキがいま助けてやるから……」
サメっちの
ヒーローを長く続けていれば、
それにいち
「足を
「サメっちやめろ! アニキはそんなこと
大貫やヒーロー職員もようやくサメっちがやろうとしていることを
しかしもはや彼らにはどうすることもできない。
“
――その光は、ヒーローたちの
怪人が命を散らす
「サメっちいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!」
林太郎の
「ありがとうアニキ……大好きッス!」
そう言ってニカッと笑った少女の口には、鋭い牙が並んでいた。
………………。
…………。
……。
そのとき、少女の背後で赤い炎が
「“バーニングヒートグローブ・
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