読者と仲間
土蛇 尚
少年はカク
少年は小説を書いていた。書き続けた。そして少年は青年になった。
青年の小説を読む人はいない。誰にも見せていないからだ。
カクだけ。ヨムひとはいない。
青年は書くのを少し休んだ。1週間休み、1ヶ月休み、少し書こうとして、1年休み、10年休み、20年休み、青年は中年になった。男は小説を書くのをやめた。男が小説を書くきっかけとなった作品は30年かけて完結した。
男は老人になった。
本棚と小さな机と昔飼っていた猫のキャットタワー。それがその男の全て。
老人は机に1枚のメモを残してその生涯を終えた。
「作品の著作権を放棄します。好きにして下さい。」記名
男には弟がいた。その弟の孫がメモを手にした。
その少年はカクヨムに男の小説を投稿した。
『60年前に書かれた小説です。読んで下さい。許可はとれてます。』
小説は絶賛された。少年は自分でも書き始めた。
少年には読者と仲間いる。あの少年にも仲間と読者ができた。
読者と仲間 土蛇 尚 @tutihebi_nao
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