物語の登場人物たちがSNS炎上マーケティングを語る

アーカーシャチャンネル

これが全ての始まりなのか? それとも……

 SNS炎上は社会問題となり、諸外国の様々な事件などよりも日本では大きく取り上げられていた。

その取り上げ方は、まるで高度な情報戦と言わんばかりの物で、テレビ局も一部の局以外はSNS炎上を取り上げるレベルだろう。

炎上に無関係なジャンルでも炎上することもあり、ここまでくると他人事ではない。

極めつけていえばSNS炎上が問題になっているのは日本国内に限った話ではないのだが……諸外国よりは取り上げている。

些細なことでさえSNSで炎上させることが裏バイトとして存在したり、もしくはフィクションの題材でSNS炎上を扱う作品が出てきたのもそういう傾向があるのだろう。

それでもフィクション内でいえばSNS炎上は異世界ファンタジーには遠く及ばない。むしろ、現代を題材にしていることが多いSNS炎上をWEB小説投稿者も扱わないのが原因か?

商業ベースで行われているジャンルをWEB小説作者がやっても、そこまで『バズ』らないという理由で異世界ファンタジーに流れているかは定かではない。

 こうした印象は、あくまでも個人差である。誰もがSNS炎上を日本だけが大きく取り上げることに歓迎ムードではない。

政治家の不適切発言がSNS上で大喜利化するようなことも、日常茶飯事なのに……。



 短編コンテストに作品を応募し続けている作者の一人は、アイディアを集めるためにSNSを巡回する。

今回のテーマが『私と読者と仲間たち』という事もあってか、苦戦しているのだろう。

(難しいテーマだ……)

 ノートパソコンの前で文字を入力しつつも、テーマが少し難しい事もあって先に進まないのだ。

SNS炎上が問題視されている中で、テーマに外れすぎた作品を書けば瞬間的に炎上する。

大体が「テーマに外れている」や「『バズ』り目的で悪目立ちしようとしている」などという非難の意見だろう。

しかし、炎上を一種の洗礼や当たり前な事で処理する人が多く、炎上マーケティングが当たり前に行われている現実もあった。

その中で、彼はある逆転の発想でテーマをこなすことにする。



 彼の発表した短編、私を作者とするのは他の作品とも同じだが、読者に関しては何と物語作品の登場人物を読者にしたものだった。

その内容は、SNS炎上に関して物語作品の人物たちが意見をするというもの。炎上マーケティングだけでなく、様々なメッセージを込めた。

【炎上マーケティングは得も損もない、炎上したという履歴だけが残るに過ぎないものだ】

【利益優先で炎上マーケティングを重なうようなブラックIP企業に、コンテンツを任せられない。自前で生み出して一次創作とする方が早い】

【しかし、読者も悪意を持って炎上させては自分にブーメランとして跳ね返るのは事実だろう】

【推しを優先し、それ以外を排除するような動きは許せないし、そうしたヘイト二次創作も受け入れられない】

【何かメッセージを伝えたければ、他の作者や他社コンテンツのキャラを使うのではなく自身の作った一次創作のキャラで訴えるべき】

 様々なメッセージを込める中で、彼は誰がどのメッセージを投げかけたのかは設定しなかった。

その理由は、これによって炎上してしまってはどうしようもないというのが一つ、これはフィクションでありノンフィクション及びエッセイではないというのが一つ。

それ以外にも実はもう一つあった。このコンテストには文字数があり、それをオーバーしてのメッセージを送るのはレギュレーション違反になってしまうからだ。

 物語世界の登場人物を読者としても、仲間たちはどうするか……答えは簡単である。

物語の登場人物を自分のWEB小説の登場人物、つまりはセルフパロディやスターシステムにしようという事だ。



 その後、発表された作品は『バズ』ることはなかった。厳密には悪意を持って炎上させるような『バズ』がなかったという事である。

微妙に小さな『バズ』であればいくつかあったのだが……WEB作者の目に、その情報は間違いなく届いているだろう。

その一方で、そうした小さな出来事がSNSの炎上マーケティングに大きな警鐘を鳴らすことになったのかは……定かではない。

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