死んだ世界の妄想(遺書として)

夜W星

2021.3.19

 物事がうまくいかないときは往々にして嫌になるものだし、そういう時に口癖のように死を熱望するのも納得がいくが、死すらうまくいかないときに死を口にするのは憚られる。だいたい人間のような脆い存在が死を容易に享受できないなど呆れたものだし、それこそ道端の蟻を踏み潰すぐらいには簡単に死が訪れていいというものだ。

 物事に依存すれば依存するほど自らを壊し、それを失えば殊更崩壊していく。しかも失うことを良しとする。保全は考えない。硝子は脆く、内外との間を隔てる唯一の存在として立ち塞がっている。弁慶のようにはいかず、弓どころか投石で壊れるにもかかわらず。脆いものは必ず包まれるとは限らず、むしろいくらでも壊れるようにされることもあった。ならば脆いものは滅びるより他ない。


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 およそひと月ぶりに、野良猫を探しに行った昨日に続いて今日も行った。昨日は一匹たりと見つからずに終わったので、どうにも諦めがつかずに行ってしまった。チャリで往復1時間半くらいかかるのだから、毎日行くのはきついのですが。仕方がないですね。

 一月前なら2年前に出会った白猫(っぽいの)がいたのですが、本日はどこにもおらず、およそ行った時間なら日向ぼっこして暖かいところで丸まっているはずなのですが、一月で亡くなったのではないかともおもってしまう。野良猫というのはそういうものですから。

 ところで。これは「遺書」の名目で書き始めましたが、実際遺書として適しているわけではありません。おそらく。死ぬまでの記録なのでしょうね、遺書というよりは。どうせもう数年もしたらさっさと死んでしまうとおもいますから。


 そういえば、死ぬ時に一番死にづらいのは死を止める人の存在です。というひとからそれ相応のを得られるとは限らない。むしろ得られないことの方が多いのですから。要するに、というだけの話。まー、そんなこと欲するほうがいけないのですが、じゃあいなくなってもいいじゃないというのはあまりに飛躍しているかどうか。

 けどさぁ。いつでも死ぬことは諦めちゃいません。まぁ死は選べるからね、一番美しい死に方できるときは、死にたくなくても死ぬ。それが狂ってるとは言わせまい。狂人はお前のほうだ。


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 死んだ次の日には、そこにぽっかりと深い穴が空いていた。命が潰えても抜け殻は残る。どこまで粉々になっても、暗黒は続くばかりだ。それはあまりに埋められない。昔誰かが孤独で穴を埋めようとしたが、暗黒はただそれを飲み尽くすばかりであった。

 その穴は長らく発見されないことになったが、誰かがそれを見つけた。その話題はどこか小さな国で広まり、少し遠くから訪れたひとはそれを見て嗤った。きっとそれは正しい。


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 ところで、あまりに調子が良かったここ3日の反動がかなり辛い。いずれ治るだろうし、治ってしまってもいいやと感じているが、もういいや。

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