詳しく聞くから金をくれ

 私は伊蔵の話を詳しく聞いてあげたわ。

 要約するとこんな感じ。

 運河伊蔵と裏切麗子は付き合ってた。麗子死んだ、以上。

 えっ? 説明不足だろって? 物書き目指すならそこはちゃんと書けですって? 一理あるわね……。でもお腹一杯で脳が動いて無いのよね。さっきからバンバン眠れの信号が届いてるから、正直に言うと、間もすっ飛ばして結末だけ語ろうかなんて考えてるわ。


「もう一度言います。起きてシッカリと聞いて下さい!」


 あら? 眠たいんじゃなくて寝てたみたいね、うっかり。喜びなさい、あなた達の好きなドジっ子がプラスされたわよ。


「私と麗子は二ヶ月前まで付き合っていました。それが突然別れを切り出され、有無を言わせず縁を切られました……。家も引っ越していて電話も解約された状態だと、現代人は会いたい人にも会えないんですね……。そんな折、共通の知人から『麗子が事故で亡くなった』と聞きました。私はまだ未練があったので、死に目にも会えなかったことが哀しく辛くて……」


「はいはい。不幸自慢ならあたし以外に言った方が良いわよ」


 中学二年生にしてホームレス。両親は無く頼る親戚も居ない。不幸の優良物件とは私のことよ。それにしてもコイツ、何ジロジロ私のこと見てるのよ。そりゃあたしは美人だけど、黒のセーラー服はボロボロだし、身体だってお風呂に入ってないから汚れてる。一つしかない靴からは足の親指が出ちゃってるし、靴下何てちんかたんよ。分かるちんかたん? 左右で違うって意味よ。でもちゃんとオシャレだってしてるの。黒髪ツインテール、最高でしょ?


「……申し訳ありません」

「なに謝ってるのよ。あたしのこと上から下まで見てから謝ったわね。鞄を見つける前に、あの世への行き道見つけてあげましょうか?」

「まだ大丈夫です! その、僅かばかり不こ……不満な状態が続きまして! だから麗子が生きてるのが信じられないし、ましてや私の会社の鞄を持ってるなんて……。なにがなんだかです」


 そうか、この人騙されてるんだわ。その共通の知人ってのも怪しいわね。


「それで伊蔵はどうしたいの? 麗子の居場所なら一万円。鞄だけ引き寄せたいなら二万円。遠隔で麗子に怪我を負わせたいなら百万くらいかかるわよ。程度によって上下するけどね。箪笥の角に小指を打つける程度なら四千円、骨を一本折るなら十万円。流石に殺しはしたく無いけど、二、三ヶ月入院させたいなら三百万くらいちょうだい」


 私のおすすめは三ヶ月の入院コースよ、言わないけどね。


「……会いたいです。あって説明を聞きたい、何か事情があるなら助けてあげたいです!」


 ほっほう、おバカちゃんね。世の中のこと何も分かって無いんだわ。事情なんてあるわけないじゃ無い。見た目通り御し易い性格ね。


「鞄の中身ってなんなの? ただの書類じゃないんでしょ?」

「……はい。会社の命運を左右する、新商品の機密書類です」

「えっ? あんたの会社ってパーチクりんなの? なんで新人にそんな書類持たせるのよ!?」

「えっ? 新人ではありませんよ。まぁ毎年入ってきた新入社員に同期だと間違われますが」

「伊蔵って何歳なの?」

「もうすぐ三十代に突入します」


 みっ、見えない……。童顔なんてレベルじゃないわ。じゃ、結構貯金とかもありそうね。


「それにしても、機密書類持たせるほど仕事出来そうには見えないけど……」

「はい、よく言われます。ですが私が開発する商品はどれも何故かヒットするんですよね。今回の商品『かばうさぎのカバギン』も私が描きましました」


 カバギン……、何それ良さげじゃない。そう伊蔵は見た目と違ってやり手なのね。


「でもあなたが開発したんなら、もう一回描いたら良いんじゃないの?」

「それがダメなんです。前にも何度か修正して描き直したことがあるんですが、それは全く売れなくて……。思い付いて描いた一回目のラフ画だけが、何故か運良くヒットするから不思議です」

「そっか。じゃ、裏切麗子の居場所が知りたいのね?」

「はい。それと……、不安なので一緒について来てもらっても良いですか?」


 チャリーン。


「良いわよ。だけど確認しないといけないことが二つ。伊蔵さんの貯金額はおいくらマンエンかしら?」

「なんで急にさん付け何ですか? それって言わないと駄目ですか?」

「勿論よ。額によって打てる魔法が変わってくるからね」


 裏切麗子とは何があるか分からない。備えあれば憂いなし。改め、蓄えあれば嬉しいなよ。


「……四桁はあります」


 チャリチャリーーーーン!

 何よハズレかと思ったら久しぶりの大口案件じゃない! 四桁ってことは最低でも一千万円……、私が九百五十万使っても問題ない額。

 

「分かりました、その依頼お受けいたします。伊蔵様のご希望は、貯金の続く限り叶えてみせます」

「気持ち悪いなぁ! 急に口調変えないで下さいよ!」

「オッケー、変えないわ」

「さっきから切り替え早いですね!」

「それともう一つ。話長いから、別料金で『ストック飯』三つ頂きます。おばちゃんクララスペシャルストックスリー!」


 慣れたおばちゃんが「あいよー」と返事を返してくれる。私のこと理解してくれてて助かるわ、ほんとに。



♦︎♦︎♦︎


 ホウインボウさん、素敵な星ありがとう。私に貢ぐ志、今後も忘れないでね。

 A O I さん、karemoさん、夏目シロさん、楷口凛さん、ハートありがとう。でも努力が足りないわ、星付けたりコメントしたりを待ってるのあたしは。今後に期待ね!


 この後私は、運河伊蔵と共に裏切麗子の元へと行くわ。果たして裏切麗子は伊蔵を裏切っているのか、手に汗握る展開ね。


 今回はホウインボウさんの星に動かされて語ったけど、続きはまだ未定よ。とまとの脳と身体は九割がた掌握したわ。アイツしょうもない物語書こうと抵抗していたけど、それも私の手にかかればチョチョイのチョイよ。


『続きを読みたいなら星かハート』基本だから忘れないでね!




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ホームレス魔法少女クララ とまと @tomatomone

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