第14話 2日目⑤

小学校3年生の時に交通事故で両親を亡くした。

そこからは祖父母に預けられ学校に通っていた。あの時の俺は塞ぎ込み1人でいることを好んでいた。学校に行っても先生やクラスメイトが話しかけても何も頭に入ってこなかった。

世界で1番不幸なのは俺だ。とでも言いたいかのような顔をしていたんだろう。そのうち俺に声をかける人もほとんどいなくなっていった。

ただ1人を除いて。

毎日毎日話しかけてくる。どれだけ冷たくしようがどれだけ無視しようがうざいぐらい構ってくる奴がいた。


ある日、俺のことが気に入らなかった上級生数人に公園に呼び出された。


「おい、お前生意気なんだよ。あんま調子乗ってんじゃねーよ」


上級生の1人が胸倉を掴んでくる。

人数も多いし身体の大きさも違う。子供の俺でも勝てないことはわかる。


「...」


睨みつけることしかできない。

そして、相手が殴りかかろうとした時、


「ちょっと待ったー!」


声の方向を見る。ジャングルジムの上に仁王立ちする子供がいる。


「弱いものいじめする奴はこの俺が許さん!トウッ!」


そう言って、ジャングルジムから飛び降りる。綺麗に着地を決めるが、


「いっったー!うっ、うっっ、うぇーーん」


泣き声に釣られ、視線が公園に集まってくる。


「チッ、なんだよあいつ。みんな逃げるぞ」


そう言って上級生たちはその場を去った。


「お、おい。大丈夫か?」


「へっへへ、さ、さくせんどおり!」


鼻水と涙でぐちゃぐちゃになった顔で笑ってドヤ顔をしてくる。


「大丈夫ならいいや。じゃあな」


その場を去ろうとする。変な奴と関わるのはやめとこう。


「ちょ、ちょっと待ってよっ!足痛くて帰れない。家まで送って」


「はぁ?なんで俺が?」


「だってさっき助けてあげたでしょ?」


えっへーん。と言わんばかりのドヤ顔。たまたま泣いたおかげで助かっただけだ。それに


「助けてなんて言ってないだろ」


「ううん。学校の時からずっと泣きそうな顔してた」


「学校の時?お前同じ学校なのか?それにそんな顔してない」


「え、覚えてないの?毎日話しかけてるのに!俺晴人っていうんだ。佐藤晴人!よろしく!翼くん」


満面の笑みの晴人。

そうだ。学校でいつもうざいぐらい声掛けてくる奴がいた。それがこいつだったのか。


「はぁー、さっさと帰るぞ」


肩を貸して家まで送る2人は誰が見ても友達にしか見えなかった。


それからも毎日のように話しかけてくる晴人といつの間にか一緒にいるのが当たり前のようになっていた。

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3日で終わる世界 山鳥王里 @13kuro

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