第2話 千春の過去

 宅配便で送られた大量のダンボールの箱。

 中身はラノベや映画批評誌やマンガや新書などの本の類である。

 さらにゲーム機なども各種揃っている。

 これらは全て若菜の荷物である。

 荷物が届き、住む部屋も決まった。

 若菜は千春と相部屋になるため、千春の部屋を琴子と共に片づけて若菜のスペースを空けいたのである。

 片づけをしていると、一冊の雑誌が本棚の上からポロっと落ちてたまたまページが開く。

 そのページには『伝説のレディース! 数々の逸話!!』と大書され、サラシに特攻服姿の気合いの入った女が写っていた。

「これって」

「もしかして」

「千春さん!?」

「めっちゃオモロイ! 令那にも見せよう!」

「ダメです! 人には触れちゃいけない過去があるんです」

 若菜が琴子を引き留めようとしていると、雑誌が手から離れ、部屋の前を通りがかった千春の足元に転がった。

「あぁー、この雑誌」

「ゴメンなさい。あたし、千春さんの知られざる過去を・・・・・・! でもたまたまなんです! たまたま落ちてきてこのページが開いちゃって」

「おいおい、随分懷かしいもの見つけたな。この雑誌前から探してたんだぜ」

「千春、前からヤンキーだとは思ってたけど、まさかマジもんだったとは・・・・・・」

「まぁ、若気の至りって奴だな。地元の湘南で毎日仲間とバイクで走ってたらいつの間にか伝説扱いされたんだ」

「わーい、その話聞きたいぞー」

「そうだなー。ケンカもたくさんしたし、警察のお世話にもなってたけど、毎日が刺激的だったなー」

「け、警察のお世話にまで!?」

 若菜は驚愕した。

「おう、守山っていう少年課の人と仲良しだったんだぜ。あの人がいなかったら大学進学とか考えなかったし、アクション俳優なんかも目指さなかったかもなー」

 千春は部屋のベッドの上であぐらをかいて語り始めた。

 神奈川のレディースを四〇〇人ほど束ねていたこと。

 暴力団の事務所に単身で殴り込みをしたこと。

 パトカーの大群に追われながらバイクで日本最北端まで突っ走ったこと。

 みんなでパトカーをひっくり返したこと。

 工事途中で途切れている道路で命がけのチキンレースをしたこと。

 数々の力強いエピソードに話を聞いてた若菜と琴子の二人はお腹いっぱいになっていった。

「逮捕もされたこともあったけど、なんやかんやで今は大学進学して俳優志望になったんだぜ」

「なんやかんやありすぎだぞー」

「それでその守山さんという人は親身になって千春さんを更生させたんですね」

「まあなー、今思えば守山がどうしようもない俺を変えてくれたんだなーって、少しウザったいところもあったけど、本当に自分がやりたかったことも見つけられたし、あの人には感謝しているぜ」

 若菜は千春の話を聞き、過去にいろんなあやまちや冒険があった中で本当に自分がやりたかったことを見つ出し、夢へと向かって走り出してる千春が輝いて見えたのである。

 自分も早く自分の本当にやりたいことを見つけなければと思い、手始めに小説の執筆をしてみることにした。ゆっくりだけど自分のペースで何かに向かっていくのであった。

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ユリハウス 大部屋創介 @obeyasosuke

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