かうんたーあたっく
黒幕横丁
かうんたーあたっく
モノには想いが宿る。そして、それは長い年月となって付喪神となる場合がある。
神となった彼らが我々にもたらすのは、幸福かそれとも……。
ピンポーンとドアチャイムの音がして私はガチャとドアチェーンのかかった扉を少し開けた。
「ちーっす。ちょっと、家の中へ入らせてくれや?」
顔に大きなバッテン傷がある、来ている服装もいかにもその筋の青年が私のことを少ししか開かない扉から私のことをガン飛ばしてくるのだ。誰だコイツは。
「いや、きっと人違いです」
私はすぐに扉を閉めようとしたが、指をガッと出され、ソレも出来ない状況へと陥る。
「人違いじゃねぇよ。とっとと入れろよ」
わー、このやんちゃなお兄さん更にガンつけてくるこわーい。正直私の足はガックガクと震えている。
「早くあけねーと警察呼ぶぞゴラァ!」
それ、こっちのセリフでは? もうこのままでは埒があかないので、渋々私はこのやんちゃなお兄さんを部屋へと招きいれることにした。
「大人しく言うとおりにしていればいいんだよ」
歩く姿もめっちゃオラついて、大股で歩く青年。家の居間へと案内して着席を促すとどっこいしょとまるでオッサンのように座る。
「それで、貴方はどなたでしょうか? 全く私には身に覚えがないのですが」
「お前の先々代のスマホだよ。画面がバキバキに割れたからって機種変に出した」
「へ? スマホ?」
確かに先々代のスマホは数年前画面が割れてしまい、液晶が見えなくなってしまったために機種変に出したけれども、それがこの青年に生まれ変わったというのはイマイチ信じることが出来ない。
「おっと、その顔は全く信じてないというやつだな? いいぜ? オレがお前のスマホだったって証拠はちゃんとあるんだから」
「証拠? 例えば?」
「お前、彼女にポエム送って『キモい』って一刀両断されたことあるだろう。今からそのポエムを言ってやる」
青年はすーっと大きく息を吸って、
「君はまるで湖畔に広がる、爽やかなエーデルワイスのように清楚で……」
「ギャー! やめてー!!!」
青年が言っている言葉に心当たりがありすぎて私は急いで彼の言葉を制止する。
「分かった、君が私のスマホだったってことは認めるから、もうこれ以上私の古傷を抉るのはやめて」
こんなことならば、機種変前にデータ消去すべきだった。私は今になってそのことを凄く後悔し始める。
「それで、その先々代のスマホがどうして人間の姿になって私のところへ来たのかい?」
「それはな、お前に復讐してやるためさ。オレをこんな目にあわせたお前に一泡ふかせるためのな!」
青年は顔のバッテン傷を指してそういった。
「私に何をするつもりなのだ」
「そんなの決まっているだろ。お前はオレの言いなりになってもらうんだよ」
青年はニヤリと私に向かって嗤った。
「さぁ、覚悟しろ。あの時のオレが味わった苦しみをお前の味わうんだ」
ギャーーーーーーー。
―― 一週間後。其処には今までの私は存在していなかった。
例の青年によって服装や呟きまでもプロデュースされ、SNSでは少しずつではあるが人気者になっていっていた。
私の総合プロデュース。コレが彼なりの復讐らしい。
「なぁ」
「なんだ?」
私の新しいスマホでゲームをしている彼が不機嫌そうに返事をする。
「コレって復讐になっているのか?」
「オレさまがお前を意のままに操っているんだ、これ以上のカウンターアタックはないだろ?」
スマホは生まれ変わっても便利を提供するという本能は変わらないらしい。
かうんたーあたっく 黒幕横丁 @kuromaku125
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