幼馴染のストーカーに呼び出されて相談された話

三枝 優

幼馴染からの相談

 その日、英治は幼馴染の美緒に呼び出された。

 住宅街の中にある喫茶店で待ち合わせることにする。

 ここならば客も少ないので、話を聞かれる心配はない。


 美緒は大学生。そろそろ21歳になっているはず。

 美緒は、黙っていればかなりかわいい。

 しかも、頭脳明晰。いわゆる天才だ。

 起業もしていて、高収入。


 だが、美緒を子供のころから知っている英治には恋愛対象として見ることはできなかった。

 そもそも・・あの性格は・・・


「英治ちゃんお待たせ~」

「待っていないけどさ、年上にちゃん付けはやめない?」

「え~?いいじゃない」

「それで、注文なんにする?」

「私、紅茶にする」

「じゃあ、俺はコーヒーにするよ・・マスター!紅茶とコーヒーね!」


「それでね、英治ちゃん。ちょっと相談に乗ってもらいたいの」

「相談って?あの大学生の彼氏のことか?」

「あの彼氏なら別れたわよ」

「もう別れたの?1か月たってないじゃん」

「だって・・ちょっと調べたら、あいつは浮気してたの。だから振ってやったわ」

「やっぱり、浮気してたんだ」

「そうなの。メッセージサービスのログや写真の履歴を半年分調べたら何人も浮気してたし、ナンパもしてたの。4股くらいしていたわ。そんな男は願い下げだわ」

「本当に調べたんだ・・・相変わらず、すごい執念だな・・」

「え~”ふつう”でしょ~。彼氏が何やってるか気になるじゃない」

「”ふつう”は彼氏の動向を24時間監視したりはしない!」

「だって、スマホを持ってたらデータ記録されるじゃない。データがあったら調べられるんだから・・・調べたくなるじゃない」

「そういうの、ストーカーって言うんだ。犯罪だって言ったろ?」

「犯罪じゃないよ?勝手にスマホを見たわけじゃないし?」


「いや、普通じゃないだろ。彼氏を監視するためだけにスマホのSNSアプリを開発して起業するなんて。しかもCMバンバン流して全国に普及されせて、自然と彼氏にインストールさせるなんて」

「え~?だって前にハッキングしたら英治ちゃんが犯罪だって言うからアプリ作ったんだよ?結構、人気があるんだよ?」

「人気があるって・・・いまや日本全国、ほとんどの人がインストールしてるアプリだろ・・・」

「英治ちゃんも入れてる?」

「そんな怖いアプリ、入れるわけないだろ」

「え~?何で入れないのかなあ・・・」

「そのアプリ、実はログが全部記録されていて美緒は毎晩チェックしているなんて・・怖すぎだろ」

「大丈夫。私以外見ないから」

「お前が見ているだけで、十分怖いわ」


「それでね、相談なんだけど・・」

「そうだったな、相談ってなんだよ」

「新しい彼氏ができたんだけど・・・彼、このアプリ入れてくれないの・・」

「もう新しい彼氏できたのかよ。うらやましいもんだね」

「あら、英治ちゃんまだ彼女いないの?」

「いたためしないわ!」

「ふう~ん。なんでかな~?」

「俺のことは良いから!それで相談ってなんだよ」


「彼氏がどうしてもSNSはやらないって言うからね・・・スマホの半導体メーカーを買収しようって思うの」

「ちょっとまて・・・彼氏を監視するためだけに企業を買収するのか?その企業の従業員もかわいそうにな!」

「え~?いいじゃない。ウィン―ウィンってやつよ?きっと」

「はあ・・・それで、相談って?」

「そうそう!それでね、T社とQ社のどっちを買収したほうが良いかなあ・・って」


「それならQ社にしておけよ」

「どうして?」

「T社は、もう俺が買収したから」

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幼馴染のストーカーに呼び出されて相談された話 三枝 優 @7487sakuya

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