第3章 出逢った仔犬
その日もいつも通り。
昼間の仕事が終わり、寝る暇もなく
バーへの支度をし送迎を待ち。
夜の蝶になった。
華の金曜日というだけあり、オープン後すぐ
カウンターはお客さんでいっぱいになった。
歌を歌い、お酒を飲み。
ほろ酔い気分の私は常連のお客様の、先へと向かう。
あ、今日は1人じゃないんだねー♪
という何気ないフレーズから接客という名のお芝居が始まった。
彼は、普段はあんまりお酒も飲めない。
ガヤガヤするタイプではない。
静かにお話をするというのがこのお客様の特徴である。
でも、その日は少し違う雰囲気がその周りを包んでいた。そう彼の連れ。
彼は、前の職場の後輩くんだそうだ。
それと、もう一つ。今日は、話題を自分から持ってきたらしい。
"今日2人は、失恋をした"
そんな話題はどんどん逸れて、
話は盛り上がっていき。
周りのカウンターに、空席ができ始めた頃私ともう1人のスタッフの悪ふざけが始まった。
そして、彼への悪戯をした。
ちょっとお酒は弱いけど、普段よりも飲んでいる。たくさんすすめた。
そして彼は、潰れてしまった。
後輩くんは、潰れた彼を抱いてお会計をし、
またね!という言葉でお店を後にした。
彼らがお店を後にしても、お店の営業は続いている。
私はねむい目を擦りながら、バーのムードメーカーを全うしていた。
そんな時、後輩くんが戻ってきて手招きをされた。
忘れ物か?さっき、連絡先を交換したのだから連絡してくれば良いのに。
私は後輩くんに駆け寄った。
"ご迷惑おかけしてすみませんでした"
かなり大きな声で後輩くんは言った。
まるで私が怒っているかのように。
正直、焦った。
後輩くんの印象は、さっきまでのふざけていた様子を覆すほど律儀でありそんな後輩くんの姿を見た私は
後輩くんがしっぽを巻いた仔犬にしか見えなくなっていた。
見えないリング @kurage_bana
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