やっぱり逃げちゃダメだ

上本利猿

やっぱり逃げちゃダメだ

「逃げても良いんだよ。でも逃げ方を考えなくちゃあいけない。」


「お前が自転車から逃げているとしよう、そしてお前が今しようとしてる行動は、その自転車からダッシュで逃げてんだよ。」


「そんなの追いつかれるに決まってるだろ?」


「どうやったら逃げ切れるか。自分も自転車に乗って逃げれば良いんだよ」


「自転車を買う金がないならその金を貯めれば良い。」


「問題はその間どうするかだ。」


「自転車に轢かれたら痛い。痛いじゃ済まないかもな。」


「ならそれをごまかす“何か”が必要だし、轢かれ方も考えなくちゃあならない」


「痛みを上回るほどの快楽とかな。セックスとか」


「おっと、考えるだけじゃダメだ。面倒だが考え方も変えなくちゃ。」


「もしお前が奇跡的に自転車から逃げ切れたとしよう。どこかの路地裏とかな。」


「だがその結果はもっと酷い結果の呼び水にしかならない。」


「世界は残酷だ。そうやって逃げ切れても、突然その自転車は自動車に変身して襲ってくる。」


「逃げ込んだ路地裏は行き止まり。お前はその自動車に何百㎞の速度で轢かれ死ぬか、じわじわと何百kgの重さで潰れ死ぬかだ。」


「だが、今お前は幸い自転車に轢かれて痛みを耐えているだけだ。

今どうすれば良いと思う?」


「答えは簡単、俺とセックスする事だ。」


「俺は近場のホテルが何処か探してるけど、君はどうする?」


「近場の交番に行きます」

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