第8話:戴冠
「ソフィア女王陛下、どうぞこちらに」
ひどい、酷過ぎるではありませんか、ランスロット。
貴男が国王の役目を引き受けると言ってくれたではありませんか。
それなのに、いざ国に戻ったら女王に戴冠しろだなんて、酷過ぎます。
それも、ランスロットが戴冠すると聞いて登城したら、本当は私の戴冠式だったなんて、あまりにも卑怯だと思うのですよ。
「何が言いたいか分かるよ、ごめんねソフィア。
だけど大丈夫、王の役目はほとんど全部俺がやるから。
王配として摂政になって全部やるから」
「全部やるならなぜ王になってくださらないの」
「残念ながら俺には皇族の血が流れていないんだよ。
この国はこれからアストリア帝国の属国になるからね。
ソフィアに女王になってもらうしかなかったんだよ」
「でも、全部やると言ってくれていても、女王としてやらなければいけない儀式があるのではないの?」
「大丈夫、それも全部俺がやるか、父上にやってもらうことになっているから」
「でもそれでは失礼だと怒りだす貴族がいるのではなくて?
特に帝国直属の貴族が怒ったりしないの」
「ああ、それは守護神様が通達を出してくれるから大丈夫。
アレグザンドラが皇太孫の正妃になると守護神様が通達したから、誰も逆らったりはしないよ」
「でも、本当に大丈夫かしら。
私はほんの二年前まで皇族である事も知られていなかった傍流も傍流ですよ。
アレグザンドラはまだ生まれたばかりなのよ」
「ああ、だいじょうぶ、大丈夫。
アレグザンドラはソフィアと同じ聖女になるんだよ。
それに皇太孫とアレグザンドラの間に生まれた娘が、真聖女になると守護神様が言っているから、それでも反対する奴は守護神様がぶち殺されるから」
それなら安心ですね。
守護神様に逆らった帝国貴族がどのような目にあうかは、帝都にいる間に嫌というほど目にしましたからね。
私ならアレを見た後で守護神様に逆らう気にはなれません。
それでも逆らうようなバカは滅ぼされても仕方がないですね。
「分かりました、だったらもう何も言いません。
ですがそう言った限りは本当に何もしませんからね。
私は一切表にでませんよ。
奥に籠ってヴィンセントとアレグザンドラのお世話に専念しますからね。
後でアレをしてくれコレをしてくれと言われても一切しませんよ」
ヴィンセントもアレグザンドラもお腹を痛めて生んだ私の大切な子供です。
特にアレグザンドラは帝国の皇太孫妃になり、いずれは皇后になります。
多くの有象無象が利を得ようとアレグザンドラの周りに集まってくるでしょう。
そんな者達からアレグザンドラを護るとともに、アレグザンドラが愚かにならないようにしなければいけません!
異母妹に婚約者を奪われ、義母に帝国方伯家に売られましたが、若き方伯閣下に溺愛されました。しかも帝国守護神の聖女にまで選ばれました。 克全 @dokatu
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