或る、春の日の追憶

七葉

或る、春の日の追憶

 吹き抜ける暖かな風に、はらはらと舞う桜の花びらたち。

嗚呼、今年もまた春が巡ってきたのか ——

母校への通学路だった桜並木の道で、感傷に浸りそうになる。


 桜と共に視界に入った母校の中学には、青春の全てがギュッと詰まっている。

私にもちゃんとあったのだ、“普通の青春”が ——


 “普通”のレールから大きく外れている私は、まだ“普通”に近かった時代のことを思い出すだけで、涙がこぼれそうになる。


 きのうのことのように思い出せるリアルな青春の日々は、私の心を支えてくれているのだろうか、それとも、かえって弱らせているのだろうか。


 あの頃は、無鉄砲な夢と希望を抱いていた。

仲のいい友人や、付き合っていた彼と過ごすかけがえのない日々の中、いつだってそれ以上に未来への期待が大きかった。

早く大人になりたかったし、未来が楽しみだった。

そんなもの、何処にもないのに。


 今となっては、あの青春の日々こそが、夢のようなものかもしれない。

自分自身が確かに体験したことでありながら、あまりにも眩しすぎるのだ。



 涙でにじむ母校を見つめているうちに、桜吹雪はより一層激しく舞い出した。

私もその中の一枚となって、人知れずどこかへ飛んでいく——

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