【KAC20214】沈黙の狩猟者《ハンター》
海星めりい
沈黙の狩猟者《ハンター》
俺は目の前の
(やってしまった……いや、違う……ここまでやるつもりは無かったんだ)
軽く。そう、ほんの軽くだ。
撫でるように触れたと言っても過言じゃない。
だが、どんなに言い訳したってこの状況は変わらない。
何度揺さぶっても、声をかけても、あいつは当たり所が悪かったのかピクリとも動かない。
何かの間違いであってくれ……、と望む俺の願望とは裏腹に現実は容赦なく事実を突きつけてくる。
マズい、マズい、マズい、マズい!?
冷静になって状況を理解すれば理解するほど、ヤバい。
このままでは俺の運命は――……。
未来を想像すると思わず背筋が震えてしまった。
そんな未来を回避するために俺が取った行動は、
(とりあえず、隠すか……)
隠蔽することだった。
いったん、どこか隠せそうな場所はないか? と周囲を見渡した俺は良い感じの場所をみつけた。
そこまで歩いて行って、隠し場所としてふさわしいか確かめてみる。
うん、悪くない。程よい薄暗さと雑多な感じは隠すのにうってつけだろう。
動かなくなったコイツの元に戻った俺はズリズリと引き摺って、先ほど見つけた場所に放り込んでおく。
一先ずはここでいいだろう。
本当なら何処かに埋めてしまいたいのだが、そこまでは時間が許してくれそうにない。
ここに隠してもまだ不安だが、いつまでもこの場にいては俺が疑われる。
足早に立ち去った俺は、なるべく普段と変わらないように装う。
不審な素振りを見せればそれだけでバレてしまいかねないからだ。
しばらく平静に過ごしていれば、埋めに行くことも出来るだろう。
時間は俺の敵じゃない、味方だ。
そう思いながら過ごしていたのだが、何やら慌ただしい気配を感じ取る。
まさか、もう気付かれたというのか!?
俺は不審な動きは一切していないはず……そうなると別ルートからバレたのか?
いや、落ち着け。まだバレたと確定したわけじゃない。
バレたのならば真っ先に俺の元にやって来ているはずだ。それがないということは、確証まではいっていないはずだ。
ここで慌てる方が、リスクがでかい。
そう考える俺だったが、何かを探しているような声まで聞こえてきた。
しかも、方向的に俺が隠した場所からほど近い。
気になった俺は相手にバレないように様子を伺ってみると、手当たり次第に捜索しているという感じだった。
まだ見つかっていないことに安堵する俺だったが、ホッとしたのもつかの間、捜索の手は俺が隠した場所にも伸びようとしていた。
内心で神にも祈るような気持ちで叫ぶ。
まて!? やめろ!? そこを開けるんじゃない!? ああー!?
******************************
「あったー!? お母さーん! やっぱりペロが隠してたー!! クローゼットの中にー!?」
少女はクローゼットの中に無造作に置かれていた人型を取り出すと、母親に見つかったことを報告しつつ、手元でいじっていたのだが、
「ん? あれ……動かない? これもしかして……壊れてるー!?」
理由に思い当たった少女は怒りの感情を隠さずに壊した原因へと向かっていく。
「ペロ! 私のアリス壊したでしょー!!」
少女は壊れた
「キャウン…………」
隠蔽に失敗した
【KAC20214】沈黙の狩猟者《ハンター》 海星めりい @raiki
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