第三十二話「第一試合」

 Aブロック


 第一試合 


 レイ・シュナイダー


 VS


 大宮 優



 Side 悪の組織部三人娘 実況、解説:島田、木下


『どうも実況席から島田です! 今大会の優書候補であるレイ・シュナイダー選手と無名のルーキー、大宮 優選手との対決です』


『大宮 優選手は予選では目立った活躍はなく、またヒーロー活動も目立った物はなく、本当に何者なんでしょうか?』

 

『個人的には優選手がどこまでレイ選手に食い下がれるのか見物なんですが・・・・・・』


『ともかく試合開始ですね!』



 Side レイ・シュナイダー


(何が無名だ・・・・・・何もんだこいつ・・・・・・)


 レイは眼前に相対する安っぽい戦隊レッドのコスチュームを着込んだ相手の力を探っていた。

 探れば探るほどその底知れ無さに焦りを感じる。


(レイ、分かっていると思うが)


(ああ、油断しているとやられるな)


 意思を持つ鎧、今身に纏っているシャイン・ブレードにそう返す。


 シャイン・ブレードを持ちだしてやり過ぎかなと思っていたがそれ自体が甘い考えだったと痛感する。


『それでは試合開始!! ルールは場外、10カウントKO、ギブアップ、殺しは御法度、金的、目潰し、噛みつきなども禁止です! 観客席はバリアフィールドで守られていますが故意に狙った攻撃なども禁止です!』


『解説ありがとうございました木下さん! 両者睨み合ってますね』


『ええ――レイ選手も大宮選手も相手の動きを探っているような感じですね』


『内心では速攻で決着がつくかと思いましたがまさかまさかの展開ですね』


『ッ!? ここで大宮選手が動いた!?』


 先に動いたのは大宮 優。

 常人では目にも止まらぬ早さで地上を滑走して殴りかかってくる。


(一撃一撃がとんでもなく重い!? 一体何がどうなってるんだ!?)


 レイは内心焦りながら激しいラッシュを繰り出す。

 相手もそれに応じてギアを挙げている。

 

 まさかまさかの想定外の展開に観客も黙り込んでいた。


(距離を離した!?)


 ラッシュに押し巻けたワケでもなく、距離を離す。

 同時に腰を落として両手を構えて――


(光線技か!?)


 両腕から光線技が飛んでくる。

 慌てて上空に飛び逃げた。

 そこを相手の鋭い跳び蹴りが飛んできたがそれを防ぐ。


『波動百烈拳!!』


 百の気の拳が大宮 優に遅い掛かるが――


『でやあああああああああああああああ!!』


 と自らの拳で掻き消していく。 

 百発の中でも直撃弾のみ。

 逃げ道を断つ拳やフェイントなどはスルーだ。


 その隙にレイは大宮 優を思いっきり殴り倒す。

 場外狙いの一発だったが舞台の中央から少し離れたところでストップされる。

 

『だ、第一戦目から凄い熱戦です!!』


 と、島田が興奮気味に語り、


『吉井さんは舞台外へと退避してください!』


 木下は審判役の吉井に注意を呼びかける。


『大宮 優選手! とんでもないルーキーでした! 新たなスターの誕生です!』


『島田さんの言う通りそれぐらいの逸材ですね大宮選手は!』


『観客の応援もレイ選手と大宮選手へと二分されている状況です!』


『初っ端から素晴らしい戦いですもんね!』


 実況の島田と木下の言う通り観客は大盛り上がりだ。


『凄いね。流石レイ君だ・・・・・・』


『なんだ? 俺のこと知っているのか』


『まあね』


 突然話し掛けられて驚きつつも相手の事を知りたかったのでレイは応じる。


『まだまだ本調子じゃないけど、この試合ならより調子を戻せると思うんだ』


『気にくわない奴だ・・・・・・本調子だったら倒せるとでも言いたそうだな』


『うん、百パーセント倒せてたね。だけど闇乃 影司を救うためにも必要なんだ』


『・・・・・・ムカツク物言いだが厄介事を抱えているようだな』


『まあね』


 まさかこのタイミングで闇乃 影司の話が出て来るとは思わなかった。

 話を纏めると強くならないと闇乃 影司を助け出せないと言う感じだった。


『だけど今は全力でいくよ。レイ君もまだまだ強くなれるから』


『変な奴だな・・・・・・』


 そして両者は再び激突する。

 言わんとしている事はムカツクし、信じられない事だが拳を重ね合わせているウチに真実なのだろうと思った。



『凄まじい――凄まじい激闘でした!!』


 と、島田がこの試合を纏める。

 凄まじい。

 そうとしか言えない程の戦いだった。


『勝者はレイ選手!! スタミナ切れでしょうか!? 大宮 優選手が突然動きが悪くなったみたいですね――』


『ともかくこの素晴らしい戦いを演じたお二人に惜しみない拍手を!!』

 

 島田の一言で観客は再び熱狂に包まれた。

 特に大宮 優と言う無名選手へのコールが凄まじい。


 レイは変身を解いて場外に倒れ込んだ優に近付く。 


「どうしたんだ急に?」


「今の僕の限界だよ・・・・・・また挑戦してもいい?」


「ああ・・・・・・俺も腕を磨いて待ってる」


 レイは優の問いかけにそう答えた。

 正直言えば危なかったとレイは思っている。

 

 同時に自分の浅はかさを知った。


 まだまだ世の中には上がいるんだと。



 Side 大宮 優


 会場の控え室。


 大宮 優はJOKER学園長と二人きりで会話していた。


「ごめんね、突然押しかけたりして」


「ああ、構わんさ。それにしても君に何が起きている?」


「僕が目覚めるのはまだ先だったんだけど何か前世で不具合みたいな物が生じて――この世界を滅ぼす抹殺プロトコルが起動できなくなったんだよね。原因は闇乃 影司・・・・・・前世のと言う言葉がつくけど」

  

「まあ、正直俺達からすればありがたい話だがな」

   

「だから今度は僕が助ける番だ」


 と、大宮 優は決意の眼差しで語る。 


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ヒーローロードG(未完結) MrR @mrr

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