恐ろしいことは起こらない。けれども本作はホラーである。見つけなければ、それは恐ろしいものではなかった。けれども見つけてしまったことによって生まれる怖さ。そして、もしもその意図が分かっていたなら、そのときはきっと怖くなかったはず……「見えていて、分からない」その薄暗がりに潜む怖さ。つくづく、人は宙ぶらりんの状態に耐えることが難しい生き物なのだな、と思える短編です。