第3話 ミントとシウ
「ねえ、シウ。シウの名前にはどうして紫ってはいっているの?」
「...いきなりだな。さあ、なんでだろうな。母さんが何となく付けたんだよ。俺の名前。」
「ふぅん、」
「......。聞いてきた割には興味なさげだな!?」
「ふふ、ごめんよ。だってさ、あまりにも愛されていると思って。」
「....え?.....いまの話からそうは思わなくないか!?」
「俺の名前は、俺のものじゃないんだ。俺が奪っちゃったんだよ。」
「........名前に奪うも何もないだろ。お前の名前はさ、お前のものだよ。」
ミントというやつと出逢って2週間程。俺は、もう一度ミントに会いたくて、珍しく大学へ通いまくっていた。
「...........シュウ、どこか悪いのか...........?」
とアキに心配されるほどに。
「...........アキ。どつくぞ。」
「はは、ごめんごめん。ってシュウ、お前寝てないだろ?くまが酷い。毎日学校へは来るし、朝早くいるし。俺よりも早くいることなんて絶対なかったろ。」
「まあ。毎日大学朝からいるからな。」
「履修してない授業にも出てたって他のやつから聞いた。どうしてだ?」
「ミント.....」
「ミント?あぁ、ミントがどうした?」
「うん、ミントにもっかい会わなきゃ。って、何故か思ってしまうんだよ。あんな変なやつに。」
「...なるほどな。でもシュウ、お前はまず家に帰って寝ろ。」
「ダメだ!それは出来ない!」
「......倒れるぞ。毎日寝ないで仕事もして、大学も朝からって。」
「でも、俺が居ない間にミントは学校に来ているかもしれない。現にアキが教えてくれたインシュタのアカウントにはmisaってやつがミントの写真を更新している。」
「珍しいな、シュウがここまで他人に興味を持つなんて。ミントには何かあるのか?」
「分からない。でも、なんかあの日、ハッカ飴をもらった日、俺はミントに初めて会った気がしなかったんだよ。」
「仕事一緒にしてたりしてな。」
「はぁ〜?そんな訳ないだろ。あんなハッカ飴をペパーミントキャンディーなんて言うやつ、俺の仕事関係者には居ないっての!」
そう言ってアキを小突いた。アキは笑っていたが、寝ていない俺を心配して結局その後、俺の家まで俺を送ってくれた。
「そうだ!アキ!」
家に入る前に俺は顔の広いアキにミントとかいうやつを探してくれと頼んだ。いつもなんだかんだ頼みを聞いてくれるアキはいつものように期待はするなよとだけ言った。期待しかない。
その後俺は死んだように寝ていた。あと一歩で寝室!というところで。......寝室の目の前で。
「....ん、んんん、眩しい......朝?......あさ!?」
気づいたら朝になっていた。そのまま急いでシャワーを浴び、服を着、毎朝、、仕事の確認を欠かさずにしている俺は今日、確認を忘れた。もちろん、今日もミントを探す為に直ぐに家を飛び出した。あぁ、朝食を食べるのも忘れてしまった。
大学へ着くなり俺は講義に出た。窓際の程よくあたたかい光の入る席に座った。心地よい光が俺を刺す。これは......ねむい。
「!?」
心地よい光に誘われ俺はすっかり寝てしまっていた。まだ講義中にホッと胸を撫で下ろす。
「ふふ、おはよう、クマが酷いじゃないか。これあげる、スッキリするよ。」
あの日と同じ声が聴こえてきた。
「ミント。」
「はい、どうぞ。」
そこにはここ最近ずっと探していたミントがいた。大量のハッカ飴を持って。相変わらず、目をひく綺麗な顔をしている。ここが窓際だからかな。
「あ、ありがとうな。たべる。」
ミントがくれたら飴のひとつを俺は口に運んだ。
「う....スースーする。」
口の中に広がるスースーとする味。相変わらず苦手な味だ。でもせっかくだから。
「ふふ、スッキリしていて甘いでしょ。イツキくん。」
「えっ」
ミントの声に、びくっとした。え?
「??君、斎宮紫宇くんだよね?」
ああ、なんだ、そうだよな。うん、そっか。バレたのかと思った。
「....ってなんで知ってんだ、俺の名前。」
「ん〜?ひ・み・つ!」
屈託なく笑う顔にイラッときた。ああ、寝不足だからかな。俺はミントの頬を捻っていた。
「いで!痛いよ、イツキくん!!!」
「あっ、ごめん。つい。」
「無意識!?」
「ふふっ」
講義中ってこともあってもちろん小声だが、コロコロと表情の変わるミントがおもしろくて笑ってしまった。
「もう!...えっとイツキくんのことはね、ミサから聞いたの。」
「え?」
「あ!これ出しといてくれる?」
「は?」
「僕、これから用事あってさ!」
「ちょ、まっ!」
「あ、ねえ、イツキくんのことシウって呼んでいい?呼ぶね!会えて良かった、シウ。またね。」
そう言ってミントはあっという間に俺の前から消えていった。一枚の出席カードを残して。聞きたいことがたくさんあったのに。もしや、夢?????????
「くり..はな..おち、みしお?」
残された出席カードには「栗花落 美潮」と書かれていた。なんて読むんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます