あたたかく
@rurinara
第1話
母
私は何度も母に捨てられた。
生後10日からそれは始まり、私が高校生で両親が離婚するまで母は私の存在など気にせず実家へと逃げていた。
田舎町での暮らしが嫌で堪らなかったという。
父と見合い後、勝手に結婚が決まり私が生まれた。
初孫で可愛がられる私をいつしか母は「あちら側の人間」と思い始めたのかもしれない。
あれは何歳だったろうか?
確か小学校低学年のとき、母は私に馬乗りになり首を絞めた。「お前が生まれなければ私は出ていけたのに!」
私はその時から母を恋しがるのをやめた。
高校生のある日、母が何度目かの家出をし、そのまま離婚が決まった。
最後に子供に会いたい という思いは起こらなかったらしい。
驚いたのは、母方の祖母が私に対し態度が急変した事。
それまでは可愛がられていたはずだったが、離婚後、残っていた母の荷物を届けに行くと、今まで見たこともない怖い顔で「もう2度と会いに来るな」と言われてしまう。
この拒絶により母とも母の実家とも縁を絶たれた。
それでも不思議なもので、自分が結婚し子供を持ったとき、母に見せてあげたいと思ってしまった。
住む場所を探し、訪ねると 母は、「私もおばあちゃんになったのか」と喜んでくれた。
2人目を出産した時も私は母に報告しようと連絡したが、もう母は引っ越していた。
引っ越す時に娘である私に転居先を知らせるという事も浮かばないのか。
やはり私は母にとってはさほど大切ではない存在という事なのだろう。
私は歳をとり、今では孫がいる。
こんなにも何度も母にガッカリさせられても、母に愛されることを諦めていても、それでも時々ふと、母を思い出してはまた悲しく寂しい気持ちになってしまう。
母が母親であることを忘れても子供は子である事を忘れられないものなのかもしれない。
全ての子は愛されたいと願っている。
いくつになっても。
あたたかく @rurinara
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