第6話 カチコミのお見送り

「それで? 結局私に何をさせる気なんです?」


「殿様暗殺しようかなって」


「帰ります」

「報酬受け取ったでしょ」


 クソ、出口側に座られてるから番長さんを抜いて逃げるのは困難だ。私は特に敏捷性AGI振っているわけではないからな。


「全く、後輩に暗殺の片棒を担がせようとは酷い先輩ですね」

「報酬持ち逃げしようとするのは酷い後輩じゃない?」

「全く……ああ言えばこう言いますね」

「おまいう???」


 私が逃げ出してもすぐに追いかけられるよう腰かける位置を浅くしながら、番長さんは声を潜めて言った。


「この国の殿様さ、クソ野郎なんだよ」

「と、言うと?」

「独裁だのなんだのやりたい放題やっててね。貧富の差も解決しないし、むしろ広がる一方って感じ」

「その情報はどこから?」

「和国に知り合いがいてね。その子から相談された」


 鎖国中に交流してるやつ多すぎないか???


「まくらとつれごに連れられたって言ってたよね」

「はい、神殺しに行きます」

「すごいことやってんね……。まぁ、ともかく、あの二人は多分直接貧しい人とか困ってる人を助けに行くと思うんだよ」

「そうでしょうね、“救済と慈愛”の女神になったとか言ってましたし」

「俺も炊き出しとかやってみたんだけど性に合わなくてさぁ……なら、俺の性に合うことと言えば、やっぱ殿様ぶっ飛ばしてやろうってね」


 そういえばこの人、弱いものいじめとか大嫌いだったな。そして、地雷を踏み抜かれて黙ってるような人でもない。


「大元を絶ってやろうってわけ。どう? 一枚噛まない?」


 その勝ち気な表情は正しく番長。


「分かりました。報酬分は助力しますよ」


 つれごさんとの約束が先だ。私自身は行けない(事情を話せば行っていいとは言われそうだが)。そのため私は“大量のアンデッドを貸し出す”ことにした。協力ならこれで十分だろう。


「レイス出せたら一番良いんだけどなぁ……」

「それ、八宝菜さんが出てくるのでやるなとそふかさんから言われてます」

「そういや言ってたね。キョンシー召喚出来るようになったら俺も喚ばれんのかな……まぁ、いいや、暗殺は諦めよ。スケルトンとかない?」

「ありますよ」


 スケルトンを喚んでいると、ふと思いついた。


「そうだ。ついでと言ってはなんですが」

「え、なに。怖い」

「おや、戦力を追加して差し上げようと思ったのに。要らないんですか?」

「ごめん要る要るめっちゃ要る!!!」

「素直な先輩は好きですよ。召喚:夜鬼ナイトゴーント


 先程買い与えた刀を携えたナトが現れる。……何か最初よりも背筋が伸びてるような? 気のせいか? まぁ、いいか。


「こちらをお貸しします。こっちは貴重な召喚獣なので、死なせたら殺しますからね」

「やっぱ怖いじゃん! いやまぁ、ありがとう。うん、怖いけど」


 今回の神殺しにナトは力不足っぽいからな。ただお留守番させるだけってのも味気ないし、そっちで経験値積んでもらおう。


「色々ありがとう!いってきまーす!」

「いってらっしゃい」


 そうして、百鬼夜行のようにぞろぞろとアンデッドたちとナトを引き連れた番長さんは城に向かっていった。隠密を捨てたにしても目立ちすぎでは???

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