第13話
「で、一体なんの用なんだよ?って言うか、ガルムはどうした?ガルムは」
とりあえず話の方向を修正しよう。
と言うか店の中にはガルムの姿も見当たらないので気になって問いかけると、ルカはあっけらかんと返してくる。
「あーそれだったら、久しぶりに旧友にあったから飲みにいくそうよ?私がきた時にちょうど出ていく所だったから、中で待たせて貰うことにしたのよ」
「不用心な」
「失礼ね、せっかく馴染みの酒場で一人だから、軽く露出プレイを楽しんで映像魔法でその光景を保存したりする位しかしてないわ!」
「十分過ぎる程やらかしてるじゃねぇか!!」
「あっ、現像したやつ居る?」
「いらねーよ!!」
ああ、いちいちコイツはペースを崩してきやがる。
そう頭を抑えつつ、いい加減話をすすめたい。俺は懇願するように「で、いい加減要件を話せよ、要件を」と話を促す。
「もう、せっかちねえ。別にいーでしょ?面倒見てた子達がクランの立ち上げをするって言うんだから、お祝いに来るぐらい普通じゃない?」
「だったら、その記念すべきクランメンバー1号に変な誤解を植え付ける様な真似はよしてくれ」
「あう、私はそんな!私なんか別に気にしなくて大丈夫ですよ!」
「あらん、エリオちゃんの所には勿体ないくらい、良い子じゃない?ねーねー、リーシャちゃん、私の所にこない?おねーさんがエリオちゃんなんかより良い事いっぱいしてあげるわよ?」
「ふぇ!?ひゃっ、どっ何処をさわって……!」
ルカはニマニマとした笑顔でリーシャに近づくと艶めかしい手つきでリーシャの太ももをなで上げる。
ソレにつられ、リーシャの少し危うげな声をだす。
「だから、俺のクランメンバーに手を出すな」
「ひゃん」
ガンとルカの頭にゲンコツを振り落とす。
レベル差が圧倒的なため、むしろゲンコツを食らわせた俺の方がダメージを受けてしまうくらいだが、それでも男にはやらねばならない時があるのだ。
「もう、いけずね。まっ、それじゃあ本題に入るとしましょうか」
ようやく俺を弄る事にも満足したのか、ルカは適当な椅子へと腰掛ける。
ちなみにその動きは隙だらけの様にも見えるがイチ曰く、一切の隙がないらしい。正直俺にはなんの事だかさっぱりだが、リーシャには感じ入る部分もあったようだ。
その所作をみて、ある種の羨望のような眼差しを向けていた。とはいえ、リーシャの教育上、あまり……というか、まったく見習わせたくない人物ではあるのだが。
まあ、何はともあれ、やっとこさ話を進めてくれる気にもなったのだ。
俺は「最初からそうしろと」悪態をつきつつも対面の椅子へと腰を降ろす。リーシャは座るべきか立っているべきか迷っていたようなので、気にすることなく隣に腰掛けるよう目配せをする。
それを受けてリーシャはおずおずと、やっとこさ腰を降ろした。
「あはは、ごめんなさい。久しぶりにあったものだならついつい弄りたくなっちゃって」
そしてルカは悪びれもせずそんな言葉を漏らす。
とは言え、それでも本当の意味でこいつに頭が上がらないのは、それ以上の便宜を色々と払ってもらって来たからだ。
連盟の仕事は多岐にわたるのだが、主な役割は民間人と冒険者の橋渡し、そして冒険者同士の諍いへの抑止力である。
前者は文字通り、国や一般人からの依頼をまとめて各パーティやクラン、個人の冒険者に斡旋したり、冒険者が仕入れた素材を一旦保管、もしくは買い取り必要とする者に販売したりする。
大手クランだと、クラン本部に直接の依頼窓口を持っていパターンも多いが、手軽に依頼を探したい時は連盟を活用していくのがベタだ。
血盟は高レベルのダンジョンを攻略していく過程で貴重ではあるが、なかなか買い手のつかないような高級素材を入手する事も多いのだが、その時だいぶ便宜を測ってくれた。
現在、血盟が金銭的に余裕が多少あるのもルカのお陰であるといえるし、何より世話になったと言えるのは後者……つまり、冒険者同士の諍いのほうだ。
と言うのも、以前軽く触れたように、イチは俺を軽くみて嵌めようとしてきたパーティを壊滅近くにまで追い込んでいるし、セレナは酔っ払いにケツを触られたり、体型の事をいじられて相手を血祭りにあげてしまった様な事も多々ある。
そんな折に俺は各所に頭を下げに行くことになったのだが、それをルカが取り持ってくれたのだ。
ゼノンに至ってはもう少しで借金奴隷になる所を引き止めてもらったりと、世話になった案件を数えれば枚挙に暇がない。
まあ、後者に至っては俺も被害者とは言いきれない迄も加害者と呼ばれるには少し微妙な立ち位置であるため、何とも言えないが、今の血盟があるのは間違いなくルカのお陰でもある。
「で……今回は何の頼みなんだ?」
「あら、察しがいいわね?」
ルカはこう見えて律儀な奴だ。
通すべき義理はキチンと通してくる。クランを設立した事の祝いを延にくるなら、何らかの方法で先ずは連絡を入れてから来るだろう。
それもせず、いつ帰ってくるとも知らない俺をこうして待っていたとすれば、何らかの用事……頼み事でもあるのかと疑うのが通りだ。
「あたりまえだろ?」
「ふふん、頼もしい限りでなによりよ。それでお願いなんだけど、とあるダンジョンの調査をしてほしいのよ」
そう切り出すルカに俺は迷わず告げる。
「引き受けた」
「ん、ありがとう♡」
そしてルカもそれが当然かのようにしなの効いた声で返す。それに驚きの声をあげたのはリーシャだった。
「えっ!?えええ!?良いんですか!?まだ内容も聞いてませんよ!?」
それにルカはキョトンとし、「あら、血盟にも、初めてちゃんと常識ある子が来たのね」とこぼした。
失礼な。
常識人代表のような奴がココにいるだろう。
俺の【倉庫】のスキルが覚醒し、どんな聖遺物でも無限に取り出す事が出来る神スキル【神代の宝物庫】に進化したが、まず俺自身が弱過ぎて使い物にならない。-だから俺がじゃなくて!お前達が俺を追放するんだよ!- 名無那 奈々 @rirukari
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