第54話
「…」
「…」
辺りに静寂が舞い降りる。
俺は神崎の言葉を理解するのに、たっぷり10秒はかかった。
「い、今なんて…?」
やがて、その内容があまりに突飛だったために聞き違いではないかと、再度確認する。
「聞こえなかったかしら?じゃあ、もう一度言うわね。西野くん、あなた異世界への入り口を知っているでしょう?」
「…っ」
聞き違いなんかじゃなかった。
今度こそ確かに聞こえた。
異世界、と。
「な、なんのことだ…?」
なんとなく無駄だと思いつつも、俺は震え声ですっとぼける。
コツコツと、神崎がこちらへ近づいてくる。
「誤魔化したって無駄よ。あの動き、常人のそれじゃないわ。おそらくレベルアップによる身体強化とかでしょう。出なければスキルか、あるいは能力ね。違うかしら」
「…」
正解。
図星。
神崎に完璧に言い当てられ、俺は固まってしまう。
頭の中は、すっかり混乱状態に陥っていた。
どうすればいい?
なんと答える?
馬鹿正直に、全てその通りですと認めるか?
いやいや、流石にそれは早計すぎる。
じゃあ、誤魔化すか?
しかし、神崎はほとんど確信に近いレベルで俺が異世界への入り口を知っていると思っている。
惚けるのは無理がある。
というか…やはりこの場合、神崎も異世界への生き方を知っていると言うことか。
異世界への入り口は、俺の家だけじゃなくてもっと他にたくさんあるのか…?
そんなことを考えていると、随分と長い間黙ってしまったようだ。
「そう…答えたくはない、か。まぁ、妥当判断よね。素直に認めると何があるかわからない。けれど今更惚けるのも無理があるかもしれない。大方そんなことを考えているのでしょう?」
「…」
この人はエスパーか何かなの?
「けれど、答えてもらわないとこっちも困るのよね。と言うわけで…」
徐に神崎が腕を上げた。
そして、開いた手のひらをこちらに向ける。
「…?」
突然のことに、俺は首を傾げる。
直後。
「力尽くで聞き出させて貰うわ」
「…っ!!!」
ボッ!と音を立てて、紅蓮の火球がこちらへ飛んできた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます