第55話


徐にこちらへ向けられた神崎の腕。


その手のひらから、紅蓮の火球が飛んできた。


「うおおっ!?」


かなりのスピードで飛んできたそれを…俺は間一髪で避ける。


神崎がにやりと笑った。


「へぇ、今のを避けるのね」


「…っ、危ねぇっ、だろっ…何しやがるっ!!」


あと少し反応が遅れていたらモロに食らっていた。


この女は俺を殺す気か。


「さっさと認めないあなたが悪いんでしょう?ほら、まだまだこんなもんじゃないわ。ぼんやりしてると当たっちゃうわよ」


そう言った神崎の周りに、数十の火球が浮かび上がった。


「じょ、冗談だろ…?」


「ふふ…本気よ」


俺はバッと後方へ飛び去る。


直後、神崎の周りの火球が一斉にこちらへ向かって飛んできた。


直線で迫ってくるのではなく、ぐにゃぐにゃと軌道を変え、様々な方向から俺を狙う。


「うおっ!?うおおおっ!?」


俺はしゃがみ、ジャンプし、様々に体制をかえながら、なんとか全てを避けようと奮闘する。


だが、あまりにも数が多すぎた。


最後の方にきた一発を右肩の辺りに食らってしまう。


「ぐあっ!?」


体が吹き飛ぶ。


ガシャン!!


宙をまった俺の体はフェンスに叩きつけられた。


「くぅ…痛…くはないな」


衝撃によるダメージは大したものではなかった。


だがもっと深刻な問題が。


「うあちちち!!!」


炎が燃え移り、俺の制服を燃やす。


俺は慌てて制服を叩くが、なかなか炎は消えない。


…と。


「ウォーター!」


バシャア!!


「冷たっ!?」


突如水球が飛んできて、俺の肩に命中した。


炎を完全にかき消すと共に、俺は全身ずぶ濡れになる。


「あぁ…俺の制服が…」


焼け焦げ、損失した自分の肩口を見て俺が悲痛な声を漏らす中、神崎がこちらへ近づいてくる。


「さて、そろそろ認める気になったかしら?それともまだやる?」


「ギブギブ!!わかったから!もう魔法を使うのはやめてくれ!!」


「それは異世界への行き方をあなたも知っていると言うことかしら?」


「そうだ!!俺は異世界への入り口を知っている!この身体能力もそのおかげだ!!お、お前もそうなんだろう…?」


これ以上攻撃されるとたまらないため、俺は早口で捲し立てる。


すると、神崎はようやく腕を下ろしてくれた。


それからこちらへ向けてにっこりと笑う。


「ようやく認めたわね。最初からそれでいいのよ」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る