第18話
「目立たないためにも、これからは力の加減を覚えよう」
帰路を歩きながら、俺は今日の体力測定で不用意に目立ってしまったことを反省していた。
レベルアップで強くなった現在の俺は多分、肉体的には人間の限界を超えている。
今までの感覚で力を振るえば、必ず周囲から浮いてしまうだろう。
自重せねば。
「よし、早速行きますか」
帰宅した俺は、手早く準備を済ませて、異世界へと赴く。
洞窟からいつもの小屋へ。
栄養ドリンクを五つほど飲んでレベルを27まで引き上げた。
名前:西野壮平
種族:ヒューマン
職業:なし
レベル:27
攻撃:600
体力:580
防御:550
敏捷:690
栄養ドリンクによるレベルアップを完了させた俺は、今度は小屋からニーナとアルドラの村へと向かって歩き出した。
道中、ゴブリンを5匹ほど倒した。
レベルアップはなかったものの、魔石をすべて換金したら、2000円になった。
両親を幼い頃に亡くしており、扶養者がいない俺にとっては、重要な収入だ。
村へは、特に迷うことなくたどり着けた。
「見て…この間ニーナと歩いてた…」
「まぁ…」
「お名前はなんていうのでしょう?」
ニーナの家へと向かう道中、村の若い女性に噂をされる。
そういえば、この世界では俺の容姿はイケメンの部類に入るんだっけか。
試しに女性たちに手を振ってみると「きゃーっ」という黄色い声援が起こった。
うん、悪くない。
「まぁ、ニシノ様!こんなに早く再開できるなんて!!」
ニーナの家の前にたどり着くと、ちょうど野菜の詰め込まれたバスケットを持って中から出てきたニーナと鉢合わせた。
俺の顔をみると、嬉しげに駆け寄ってくる。
「よお、ニーナ。早速来たぞ」
「はい!お待ちしておりました!」
「今日はお土産を持ってきた」
「お土産、ですか…?」
「ああ」
俺は<亜空間>に収納していた『お土産』をニーナに渡す。
「これは…?」
「お菓子だ」
「…!!」
ニーナが目を見開く。
「お、おおお、お菓子!?」
「珍しいのか?」
「勿論ですっ!!辺境の村の住人には、背伸びしたって手の届かない高級品ですよ!!」
「そうなのか」
石鹸だけでなく、お菓子も高級品か。
現実世界では、当たり前にあるものが、この世界では特権階級しか手の届かない高級品。
俺はちょっと得意な気分になった。
「ほ、本当にもらってもいいのでしょうか…?」
「ああ、勿論だ」
「ありがとうございます…では、早速いただいても?」
「ああ」
頷くと、ニーナは待ち切れないと言った風に、俺の持ってきたお菓子を梱包ごと口に入れた。
「あっ、ちょ、ニーナ!!」
「…?」
「まだ食べてはダメだ!袋から出さないと」
「ふぇ?」
首を傾げるニーナの前で、俺はお菓子の袋を破った。
「わぁ…すごいです。どういう仕組みになっているのですか?」
袋とお菓子本体を見比べて、驚いているニーナ。
「ほら、こっちを食べるんだ」
俺はニーナの口へ、お菓子を持っていく。
「…ぱくっ。もぐもぐ………!!」
「どうだ?」
「おいひいですっ!!」
ニーナがほっぺたを抑えながら言った。
「甘いです!!美味しいです!!こんなもの食べたこともありません!!」
咀嚼して飲み込んだ後も、信じられないと言った感じで口元に手を当てている。
「そんなに美味しかったのか?」
「はい!生まれてから食べたものの中で間違いなく一番です!」
「そうか。なら、もっと食べるか?」
俺は12個入り、と書かれたお菓子の袋を亜空間から取り出す。
「…っ」
ニーナの喉がごくりと動いた。
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