第19話


「えーっと、それで…今日はどうしてこの村へいらしたのですか、ニシノ様」


お菓子を頬張りながら、ニーナがそんなことを聞いている。


現在、俺は家の中に入れてもらい、ニーナとテーブルに向かい合って座って話していた。


アルドラは現在、狩猟に出ていていないらしい。


帰ってくるのは数時間後になるそうだった。


「ああ、実は大都市に関して情報が欲しくてな」


俺は早速本題に切り出す。


昨日、ニーナとアルドラと食卓を囲んだ時に、アルドラが大都市の話題を口にした。


ここから歩いて数日のところに、人口数百万の大都市があると。


俺はその大都市が気になっていた。


「大都市というと…アストリオのことでしょうか?」


「確かそんな名前だったか」


「ニシノ様、大都市アストリオに行きたいのですか?」


「いずれはな」


「なるほど…それなら、少しお役にたつ情報を提供できるかもしれません。アストリオへはたまに、品物を売りにいくものですから」


「そうなのか」


聞けば、数ヶ月に一回ほどの頻度で、この村の住人もアストリオへ野菜や毛皮などを売りにいくということだった。


「アストリオについて教えてくるか?」


「わかりました。知ってる限りのことをお教えしますね」


ニーナはアストリオについて、知っていることをしゃべってくれる。


その話の中に、気になるワードが出てきた。

『ダンジョン』と『冒険者』である。



「冒険者…やはりこの世界にも存在したか…」


どうやら予想した通り、この世界にも冒険者という職業があるらしい。


異世界に転移もしくは転生した際には、一度はなってみたいと思っていた職業だ。


妄想で終わるかとも思っていたが、アストリオに行けば、もしかしたら俺でも冒険者になることが出来るかもしれない。


「…と、私が知っているのはこのぐらいでしょうか」


ニーナが喋り終わる。


「ありがとう、ニーナ。ところで、冒険者には俺でもなることが出来るか?」


「冒険者、ですか。詳しいことはわからないですが、冒険者は高い戦闘力が要求されますし、死亡率も他の職業に比べて桁違いですから、敷居が高く、常に人不足だと聞いたことがあります。ニシノ様であれば、きっと簡単に冒険者になれると思います」


「なるほど、ありがとう」


俺は貴重な情報を提供してくれたニーナにお礼を言う。


「あ、あの、ニシノ様…?」


「ん、なんだ?」


「その…ええと、非常に言いづらいのですが…お父様は多分あと数時間は帰ってこないものと思います。いいえ、絶対に帰ってこないと断言します」


「おう…それが…?」


「ですので…その…」


「…?」


ニーナが急にもじもじしながら、意味不明なことを言い出した。


頬が赤い。


チラチラとこちらの表情を伺うような仕草を見せる。


俺には彼女が何を伝えたいのか理解できず、首を傾げる…


…と、そんな時だ。



「うわああああああ!!!誰かぁああ!!」


家の外から、村全体に響き渡るような大きな悲鳴が聞こえてきたのだった。


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