第12話


先に仕掛けてきたのは盗賊の方だった。


四人のうちの二人が、手に持ったナイフを投擲してくる。


「ほいっと」


彼らに取っては不意をついたつもりだったんだろうが、レベル差があるためか、容易に避けられた。


「〜〜〜!」


「〜〜〜〜!!!」


俺が簡単にナイフを避けたことで、盗賊たちの顔つきが変わった。


侮れない敵といて俺を認識したようだ。


彼らの背後では、襲われていた女性が不安げな瞳でこちらの様子を見ている。


よくみると、なかなかの美人だ。


俄然、やる気が湧いてくる。


「ウォオオオオ!!!」

「アアアアアア!!!」


今度は二人の盗賊が同時に突っ込んできた。

接近戦をするつもりのようだ。


俺はミスリルの剣で応戦する。


パリン!!


「「!?」」


盗賊たちの振った長剣を、ミスリルの剣で受け止めると、なんと盗賊たちの長剣が粉々に砕け散った。


「おお、すげぇ。流石ミスリル」


どうやら武器の性能にかなりの差があったようだ。


俺は武器を破壊されて唖然としている盗賊たちに、剣の腹による攻撃をお見舞いしている。


「「ぐあああああ!!」」


攻撃を受けた盗賊たちは、地面に這いつくばる。


致命傷は与えていないが、骨ぐらいは折れたはずだ。


しばらくは動けまい。


「さあ、お次はあんたたちだ」


俺は残った二人の盗賊に向かって剣を構える。


「〜〜〜!?」

「〜〜〜!!」


「ありゃ?」


こちらは戦う気満々だったのだが、盗賊たちは恐れをなしたのか、仲間を見捨てて踵を返して逃げ出してしまった。


「ま、いいか」


弓で追撃することも考えたが、俺としては女性が助かればそれでいい。


わざわざ無駄に攻撃を加える必要もないだろう。


「大丈夫ですか?」


俺は尻餅をついている女性に手を差し伸べる。


「〜〜〜!!」


女性は俺の手を握って立ち上がり、真摯な瞳で何かを言っているが、異世界語なので理解できない。


なんとなくお礼っぽいものを言ってるんだろうなぁ、というのは伝わった。


そんな時だ。


パンパカパーン!!


スキル<翻訳>を取得しました!!


「ふぁ!?」


頭の中で毎度のファンファーレが鳴り響いた。


途端に、俺は目の前の女性の言葉が理解できるようになってしまう。


「助けていただいて本当にありがとうございました!!この御恩は一生忘れません!!私、近くの村に住んでいるニーナと申します。よろしければ名前をお伺いしてもいいでしょうか?」


「おぉ、すげぇ。理解できる」


どうやら俺は、異世界語を理解できるスキルを習得したようだった。


少女の口から出る言葉は、相変わらず馴染みのないものだったのだが、俺には不思議と意味が理解できた。


「俺は西野壮平だ。よろしくな、ニーナ」


「はい、よろしくお願いします」


俺の挨拶にニーナが応える。


どうやらスキルのおかげで、こちらの言葉もニーナに理解できるように翻訳されているようだった。


ありがたいことこの上ない。


俺は<鑑定>のスキルを使ってニーナのステータスを確認する。


名前:ニーナ

種族:ヒューマン

職業:村人


レベル:3


攻撃:30

体力:50

防御:10

敏捷:10


スキル:なし


ニーナの職業は村人となっている。


ステータスはあまり高くないようだった。


スキルも特になし。


レベル19の俺からしたら、かなり弱いように見えるのだが、これがこの世界の一般的なレベルなのだろうか。


「ニシノ・ソーヘイ様、というのですね。変わったお名前です」


「呼びにくかったら西野か、壮平だけでいいぞ」 


「ありがとうございます。では、ニシノ様、でよろしいでしょうか?」


「ああ、それでいい」


「あの…ニシノ様。助けていただいたお礼をするために、私の村へ来ていただけないでしょうか?」


「村?」


「はい。ここからそう遠くないところにあります。大したお礼は出来ないのですが、私、何かこの恩に報いたくて」


「うーん…」


別に打算があって助けたわけではないのでお礼はいらない。


そう言おうとしたが、しかし、この世界の村というのには興味があった。


俺は少し迷った挙句、ニーナに村まで案内してもらうことにした。


「よし、じゃあ、ニーナの村へ行こう」


「はい!では、こちらです」


ニーナが先導して歩き始める。


俺はワクワクしながら、その後ろをついていくのだった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る