第5話


ブラック・ウルフを倒した瞬間に、脳内に怒涛のように情報が流れ込んできた。


一瞬混乱したが、俺はウィンドウの右上にログのようなものが流れているのを発見する。


「何が起きたのか一つ一つ確認していくか…」


俺はログの文字を眺めながら、自身のステータスに何が起きたのかを把握していくことにした。


まず、最初に、なんと言ってもレベルアップだ。


名前:西野壮平

種族:ヒューマン

職業:なし


レベル:10


攻撃:200

体力:240

防御:180

敏捷:350


スキル:<鑑定><剣術><亜空間>



「レベル10…一気に9も上がったのか…」


レベル30という格上のモンスターを倒したからか、レベルが一気に二桁へと上がっていた。


各種数値も、飛躍的に上昇している。


「次は…この【換金】システムってのを確認してみるか…」


レベルアップの次に気になったのが、【換金】システムだった。


【換金】というからには、素材か何かをお金に変えることが出来るのだろう。


ひょっとすると、手元のブラック・ウルフの魔石も換金出来たりするのだろうか。


「これを【換金】!!」


俺は手元の魔石を見ながら言った。


すると目の前に新たなウィンドウが出現した。



ブラック・ウルフの魔石×1 →1000円


交換を実行しますか?


YES or NO


「は!?1000円!?」


まさかの日本円への換金だった。


てっきり異世界内の通貨かと思ったが違うらしい。


YES or NOの選択肢が突きつけられている。


俺はとりあえずYESを選択した。


ひら〜。


「うお!?」


唐突に宙から千円札が出現した。


ひらひらと舞っているのをパシッと摘む。


「本物、だよな…?」



俺は恐る恐る確認してみる。


それはどこからどう見ても、本物の千円札だった。


透かしの技術なども、完璧である。


模倣品には見えない。


「まじかよ…」


俺は信じられない思いで、千円札をポケットにしまった。


一応、後で本物の千円札と見比べてみよう。


そんなことを思いながら、次のログの確認を行う。


「次は…やっぱり<亜空間>スキルだよなぁ…」


名前からどんなスキルなのかだいたい予想がつく。


多分これは、アイテムボックス的なサムシング、要するに収納スキルだ。


「<亜空間>スキル!」


そう声に出すと目の前に、黒い虚空が出現した。


俺は試しにミスリルの剣を亜空間の中へ入れてみる。


「おぉ…」


剣は吸い込まれるようにして消えていった。


今度は手を突っ込んで引き抜くと、手にはミスリルの剣が握られている。


「まぁ、便利だな」


これなら、常に身軽な状態でたくさんの荷物を運ぶことが出来る。


便利だと言わざるを得ない。


収納スキルはもはや異世界譚に欠かせない必須スキルだ。


おそらくこれからも重宝することだろう。


「最後は…この【狩人】の称号だけど…多分、意味はないんだろうなぁ…」


なんとなく、この称号は単なる言葉だけのもので特に用途はないだろうと思われた。


ゲームでもある特定のモンスターを倒したり、クエストをクリアすると貰えたりする名前のみの称号がある。


これもおそらく同種のものだろう。


「さて、ログも確認したことだし、一旦帰るか…」


ここでぐずぐずしていると、いつ何時モンスターに襲われるとも限らない。


今回はたまたま格上のモンスターを倒せたが、次も同じようにいく保証はどこにもないのだ。


俺は小走りに、元きた洞窟へと向かって走るのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る